「早期」と「晩期」という用語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 05:41 UTC 版)
「スペクトル分類」の記事における「「早期」と「晩期」という用語」の解説
恒星はしばしば「早期」 (early) もしくは「晩期」 (late) という表現で形容される場合がある。この場合、「早期」はより高温であることを意味し、「晩期」はより低温であることを意味する。 文脈に依存し、「早期」と「晩期」は絶対的・相対的な意味の双方で用いられる。絶対的な用法としての「早期」の場合はO型星やB型星を指し、場合によってはA型星を含む。相対的な用法の場合は同じ分類の中でも高温な恒星を指して使われ、例えば「早期K型星」とした場合はK0型やK1型、あるいはK3型程度までを指す。「晩期」も同様であり、K型星やM型星を指して「晩期型星」と呼ぶ絶対的な用法と、より低温なG7型、G8型、G9型を指して「晩期G型星」と呼ぶような相対的な用法がある。 相対的な意味で用いられる場合は、「早期」はスペクトル型の文字に続くアラビア数字が小さいものを意味し、「晩期」は大きいものを意味する。さらに、数字が中程度のものに対しては「中期」 (mid) が用いられる場合もある。 このあいまいな用語は、20世紀前半の恒星進化モデルを受け継いだものである。当時のモデルでは、恒星はケルビン・ヘルムホルツ機構を介して重力収縮でエネルギーを生み出していると考えられていたが、これは現在では主系列星に対しては適用できないことが知られている。もしこのモデルが正しかったとした場合、恒星は非常に高温な「早期型」の恒星としてその一生を開始し、その後徐々に冷却して「晩期型」の恒星になる。すなわち、「早期」や「晩期」という表現は、当時の理論における恒星の一生の早期か晩期かを表現したものである。このメカニズムに基づいて太陽の年齢を推定すると、地球の地質記録から推定される年齢よりずっと小さいものになってしまい、恒星が核融合反応によってエネルギーを生み出していることが分かるとかつての恒星進化モデルは廃れていった。しかし、スペクトル型に対する「早期」や「晩期」という呼び方は、これらが基づいていた理論モデルが否定された後も受け継がれた。
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