「日本海軍最高武勲艦」の虚構
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「磯風 (陽炎型駆逐艦)」の記事における「「日本海軍最高武勲艦」の虚構」の解説
「戦史研究家の志摩達雄が磯風を太平洋戦争における日本海軍の最高武勲艦と評した」と言う説がある。これは元磯風の乗組員であった井上理二(昭19年1月、磯風に配属)の1999年の著書『駆逐艦磯風と三人の特年兵』を出典としている。 同著で井上は「艦艇研究家の志摩達雄が主要文献をもとに最高武勲艦と認定した」と述べており、志摩が用いた主要文献とは『第十七駆逐隊戦闘詳報』、『戦時日誌(第十七駆逐隊)』、『駆逐艦磯風作戦行動概要(防衛庁防衛研修所、戦史室編)』、『駆逐艦行動調査・磯風(防衛庁戦史室編)』、『戦史叢書(沖縄方面海軍作戦、防衛庁戦史室著)』の5件だと記した。 志摩達雄が磯風を日本海軍の最高武勲艦だと評価したと言うのは事実ではない。志摩が上記5件の文献をもとに執筆した記事が雑誌『丸』の1997年5月号に掲載されたが、そこに書かれた志摩の実際の評価は次に示すものである。 今回の編集部から与えられたテーマは、戦没した駆逐艦一三三隻の中から武勲駆逐艦一隻を選べと言うものであるが、その選択が実に難しい。これら一三三隻の駆逐艦はそれぞれの与えられた任務を遂行中、不運にも敵の攻撃により倒れたものであり、全ての艦を武勲艦としたいところであるが、それでは編集部の主旨に添わない結果となるため、いろいろ調査した結果、陽炎型駆逐艦の一艦、磯風を武勲駆逐艦として紹介したい。 — 志摩達雄「『大和特攻』に殉じた駆逐艦「磯風」の奮闘」『丸』1997年5月号掲載 『丸』同号では『特集 武勲艦の最期 名鑑の栄光と悲劇』と題し、戦没した艦船にスポットを当てた特集が組まれた。志摩の評価はこのテーマの中で戦没した駆逐艦に対象を絞ったもので、駆逐艦以外の艦や戦没しなかった駆逐艦は対象に含まないものだった。また、志摩は「戦没した全ての駆逐艦を武勲艦としたかった」と言う考えであり、記事の中で「最高武勲艦」と言う表現は使われていない。
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