「所有」の詭弁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 08:26 UTC 版)
「エウテュデモス (対話篇)」の記事における「「所有」の詭弁」の解説
ディオニュソドロスがソクラテスに、さらなる詭弁を披露する。 ディオニュソドロスは再度ソクラテスの言葉尻を捉え、ソクラテスはもしその知恵が「自分のもの」となったら「自分のもの」と認め知ることができるか問う。ソクラテスは同意する。続いてディオニュソドロスは、例えば牛や羊のように、「支配」して「好むままに使用」することができるものなら、「自分のもの」と考えるか問う。ソクラテスは同意する。 次にディオニュソドロスは、「魂」を持っているものが「生物」であり、「生物」の内で「自分のもの」であるのは、先の条件を満たしたものだけであるか問う。ソクラテスも同意する。 続いてディオニュソドロスは、ソクラテスが「祖先神ゼウス」を「持っている」か問う。ソクラテスは問答の終焉が近いことを感じ取り、抵抗しようとわざと「持たない」と答える。するとディオニュソドロスは、ソクラテスが祖先神も社も持たないとすれば、惨めな人間で、アテナイ人でもないと指摘する。ソクラテスは、祭壇も、家の神も、祖先神の社も持っており、「持たない」と答えたのは、イオニア人はイオンの血統であり、祖先神はアポロンなので、「祖先神としてのゼウス」は持っていないという意味であり、ゼウスは我々のところでは家の守神や氏神と呼ばれ、アテナは氏の女神と呼ばれると弁明する。 ディオニュソドロスは改めて、ソクラテスが「アポロン・ゼウス・アテナ」等を「持っている」ことを確認する。ソクラテスはそれらは「祖先」であり「主人」であると、意味を限定しようと抵抗するが、押されてそれらの神が「自分のもの」であることに同意する。続いてディオニュソドロスは、「神々」にも「魂」があるのだから「生物」であると指摘し、ソクラテスも同意する。 するとディオニュソドロスは、ソクラテスは「ゼウスや他の神々」が「自分のもの」だと同意しているのであり、他の「生物」と同じように「神々」を売ったり、あずかったり、好むままに使用できると指摘し、ソクラテスはショックで打ちのめされる。
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