ω の冪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/15 10:26 UTC 版)
超現実数の無限大および無限小の「度合」(order) の分類(アルキメデス類とも呼ばれる)のために、コンウェイは各 x に対して超現実数 ω x := { 0 , r ω x L ∣ s ω x R } {\displaystyle \omega ^{x}:=\{0,r\omega ^{x_{L}}\mid s\omega ^{x_{R}}\}} を対応させた。ただし、r, s は何れも正の実数すべてに亙るものとする。x < y ならば ωy は(どのような r に対する r⋅ωx よりも大きいという意味で)ωx よりも「無限に大きい」。この「ω の冪」は以下の指数法則 ωx⋅ωy = ωx+y, ω−x = 1⁄ωx を満足するから、これは冪として期待される性質のもとで振る舞っていると言ってよい。 ω の個々の冪は、そのアルキメデス類における「もっとも単純な」超現実数となるべきものとしての補完性質も持つ。逆に、各アルキメデス類は超現実数の中にもっとも単純な数を一意に含む。すなわち、任意の正超現実数 x に対し、常に適当な正実数 r と超現実数 y が存在して、x − r⋅ωy が x よりも「無限に小さい」ようにすることができる。このときの冪指数 y は「x の ω を底とする対数 logω(x)」であり、この対数函数は正の超現実数全体で定義される。logω が正の超現実数の全体を超現実数全体の上へ写すこと、および対数法則 logω(xy) = logω(x) + logω(y) の成立などを確かめることができる。 これを超限帰納法によって拡張することにより、任意の超現実数に対し(順序数に対するカントール標準形(英語版)の類似対応物となる)「標準形」を持つことがわかる。すなわち、任意の超現実数は x =: r 0 ω y 0 + r 1 ω y 1 + ⋯ {\displaystyle x=:r_{0}\omega ^{y_{0}}+r_{1}\omega ^{y_{1}}+\dotsb } なる形に一意的に書くことができる。ここに、各 rα は非零実数で yα は超現実数の狭義単調減少列である。しかし、この右辺の「和」は無限個の項(その長さは一般には任意の順序数となる)を持ち得る(もちろん 0 はこの係数列が空集合となる場合に相当し、最高次の冪を持たない唯一の超現実数である)。 さてこのような標準形に書いてしまえば、超現実数の全体はある種の冪級数体と見ることができる(通常の形式冪級数では冪の無限減少列は適当な順序数で長さが抑えられなければならず、順序数全体の成すクラスと同じ長さになることが許されない、という点には目をつぶることになるが)。これは超現実数をハーン級数として定式化するための基礎となる。
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