金庸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/22 08:02 UTC 版)
文学以外の活動
金庸は、香港を代表する名士の1人であり、小説の執筆は多彩な活動の一部に過ぎない。
1959年5月20日に創刊した『明報』は中国語圏のみならず、世界的にも影響力を持つ新聞で、金庸は創刊以来、武俠小説の連載と共に社説の執筆も手がけてきた。中国で文化大革命が行われていた時期、金庸は共産党の施策に反対する態度を明らかにし、左派の論客たちと紙上で激しい論戦を繰り広げた。一時は身の危険を感じ、香港を離れたこともあったほどである。
香港の中国返還が決まるや、返還後の香港の政治体制を決める香港基本法起草委員会に、中国側の推薦で選ばれた。一貫して共産党を批判してきた金庸が中国の推薦を得たのは、香港内外でのその影響力が考慮されたことに加え、中国の政治指導者層内部にも、金庸の武俠小説の愛読者が少なくなかったからと言われる。金庸の提出した香港の政治体制についての法案は、現実を直視して香港の政治的安定を優先し、中国の許容範囲内での民主主義と自由を認めるというものだったために、香港では不評で、特に民主派からは総攻撃を浴び、香港の初代行政長官を狙う野心家との非難も出た。だが、1989年に天安門事件が発生すると、即座に中国への抗議声明を発して委員を辞したことで、世間を驚かせた。法案自体は、その後紆余曲折を経たものの基本的には金庸の草案に沿ったものとなっている。
その後、『明報』を辞して引退したものの、各方面での活発な活動を続けており、中華圏において、大きな影響力を持っている人物の1人である。
主な栄誉、勲章
金庸の業績に対して、相当な数の栄誉、勲章が授与されている。
- イギリス政府より「O.B.E.」(官佐勲章)授与(1981年)
- フランス政府よりレジオンドヌール勲章授与(1992年)、フランス文化省より「フランス芸術文化勲章」授与(2004年)
- イギリス・オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、シンガポール国立政治大学東亜研究所 栄誉アカデミー会員
- 香港大学、香港理工大学、香港公開大学、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)、台湾・国立政治大学名誉博士
- 北京大学、香港大学、南開大学、浙江大学、広州中山大学、四川大学、華東師範大学、杭州大学、蘇州大学、国立清華大学、吉林大学(2008年10月)等 名誉教授
- 浙江大学人文学院院長(実務を主とした非名誉職)
- 浙江大学人文学院教授(終身、実務を主とした非名誉職)、大学院博士課程教授
- 香港市政局より「文学創作終身成就賞」授与、香港文学芸術協会より「当代文豪金竜賞」授与(1998年)
- 香港政府より「大紫荊勲章」(最高勲章)授与(2000年)
- 国際天文学会、北京天文台が発見した小惑星(10930)に「金庸 (Jinyong)」と命名(2001年)
- マカオ・文化会館に「金庸図書館」開設(中・英・日・韓・タイ・インドネシア版金庸小説を収蔵)(2003年3月)
- ケンブリッジ大学栄誉文学博士授与(2005年)
作品一覧
- 武俠小説
- 書剣恩仇録(1955年) 紅花会と乾隆帝の間の秘密とは…
- 碧血剣(1956年)
- 雪山飛狐(1957年) 雪山にいる謎の俠客雪山飛狐とは…
- 射鵰英雄伝(1957年)蒙古で育った素朴な郭靖と、東邪の娘・黄蓉の冒険
- 神鵰俠侶(1959年、邦題:神鵰剣俠)武俠世界で最も有名な恋人・楊過と小龍女の物語
- 飛狐外伝(1960年)雪山飛狐の少年時代を描く。紅花会の面々もゲスト出演
- 倚天屠龍記(1961年) 手に入れた者は武林を制すと言われる「倚天剣」と「屠龍刀」に隠された謎とは…
- 鴛鴦刀(1961年)
- 白馬嘯西風(1961年、邦題:白馬は西風にいななく)
- 連城訣(1963年)主人公・狄雲に次々とふりかかる不運と悪意
- 天龍八部(1963年)喬峰・段誉・虚竹・慕容復の4人の若者が、親の代からの因縁に翻弄される
- 俠客行(1965年)ある少年が偶然に玄鉄令を手にしたことで武林の世界に巻き込まれる
- 笑傲江湖(1967年、邦題:秘曲 笑傲江湖)金庸キャラの中でも最も好漢である令狐冲が大活躍
- 鹿鼎記(1969年)康熙帝時代の清朝で主人公・韋小宝が機転と運で出世していく物語
- 越女剣(1970年)
これら武俠小説作品の題名の頭文字を組み合わせると、次のような対聯になる。
- 飛雪連天射白鹿 笑書神俠倚碧鴛
これは金庸が『鹿鼎記』の後書きで披露したものである。『越女剣』はその後に書かれた短編であるために含まれない。
- 随筆集
- 『三剣楼随筆』(金庸、梁羽生、百剣堂主の3人による随筆集)
- 伝記
- 『袁崇煥評伝』(袁崇煥の伝記)伝記作品でありながら、『碧血剣』の関係作品でもある。
- 対談集
- 『旭日の世紀を求めて―探求一個燦爛的世紀』(池田大作との対談集)
- ^ “武俠小說泰斗金庸逝世 享年94歲”. Apple Daily 蘋果日報. 2018年10月30日閲覧。
- ^ “金庸度過92歲生日:身體硬朗思維敏捷”. 中國新聞網 (2016年3月11日). 2018年10月5日閲覧。
- ^ 金庸故居在鄉村,在田園/霍無非 大公網 2023年3月22日閲覧。
- ^ “著名作家の金庸氏が死去 94歳”. 新華社通信社. (2018年10月30日) 2018年10月30日閲覧。
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