英語教育 各国の学校教育

英語教育

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 04:33 UTC 版)

各国の学校教育

韓国の学校教育

韓国では1981年から小学4年生以上の「特別活動」の授業で各学校の裁量で英語教育が実施された[4]。1994年にWTOに加盟したことを契機に、1995年に校長の裁量で選択教科として英語を開設できるようになった[4]。1997年には小学3年生以上に対して必修教科として英語を段階的に導入した[4]

台湾の学校教育

台湾では1945年には中等教育で英語が必修科目とされていた[4]。2001年には小学5年生以上での英語教育が必修化され、さらに2005年には小学3年生から英語教育が必修化された[4]

中国の学校教育

1949年の中華人民共和国の建国当初の教育制度はソ連をモデルとしていたため外国語教育はロシア語が主流で、英語は選択的に学習する外国語にすぎなかった[4]。その後、中国とソ連が距離を置くようになると1963年の「全日制中学英語教学大綱(草案)」や1964年の「外国語教育7年計画綱要」で外国語教育における第1外国語は英語とされロシア語の授業は縮減された[4]。しかし、1966年からの文化大革命により学校教育の英語課程もほぼ停止状態となり7年計画も頓挫した[4]

外国語教育は1978年の改革開放政策により再開し、1978年に「全日制十年制中小学教学計画(試行草案)」が発布された[4]

デンマークの学校教育

デンマークでは教育費が無料だが、大学ではデンマーク語ではなく、英語の授業ばかりになっている。デンマーク国内でさえデンマーク語の重要性の低下していること、デンマーク国民の税金で無償教育した子供達が国外へどんどん出ていってデンマーク国内に残らないことが問題になっている。2018年にデンマーク教育担当相は、「他の国のために国民へ教育を行うことはできない」と大学側に英語での授業を減らすように求めた。8つの内6つは要求を受け入れた[5]

日本の学校教育

日本においては、中学校高等学校の6年間、さらに、大学短期大学専門学校などにおいても英語の授業が課されることが多いため、一義的にはこうした公教育機関における英語の教授を指す。しかし、この他に、小学校やそれ以前の段階における早期教育としての英語(児童英語)、高校受験大学受験などを対象とする受験英語英検TOEICTOEFLなどの英語検定対策、さらには年代を問わず趣味から各種専門分野にまで及ぶ英会話、など関連する分野は多彩であり、日本国内において広範なマーケットを形成している。

英語教育に関する研究分野は「英語教育学」と呼ばれ、教育学教科教育学)の一分野として位置づけられる。また、多言語の外国語教育とまとめて「外国語教育学」と呼ばれることもある。

歴史

大阪の適塾[注 7]で確立されたオランダ語教授法は、その後の英語学習教育のメソッドとして継承されたという指摘もある[6]<ref佐藤義隆「日本の外国語学習及び教育の歴史を振り返る:日本の英語学習及び教育目的論再考」(PDF)『岐阜女子大学紀要』第31号、岐阜女子大学、2002年、43-52頁、ISSN 02868644NAID 110000146261国立国会図書館書誌ID:6294084 </ref>。

開国に伴い、学者の研究対象も「蘭学」から、英学などを含む幅広い「洋学」へシフトして行った。江戸幕府洋学教育研究機関として「洋書調所」、その後継となる「開成所」が設置され、後述の森有礼らが学んだ。

アメリカ人ラナルド・マクドナルド(1824年 - 1894年)は、日本初の母語話者英語教師といわれる。

1873年には、官立外国語学校の一番手として旧東京外国語学校(現・東京外国語大学)が設立された。同年には長崎に、漢学と英語の両方を学べる私学「瓊林学館」も開設された[7]

1886年の第一次「小学校令」期(文政期)には、英語教育が推進された。森有礼は、国語外国語化論も唱えた[注 8]。このような極端な欧化主義は右派の反感を買い、のちに森は暗殺されることになる。森の死後は急進的な英語教育は縮小され、小学校における外国語教育は高等小学校(現在の小学校高学年~中学校にあたる)のみに限定されることになったという[8]

一方、皇族や上流階級の子弟が通う学習院では初等科より英語教育が行われていたが、乃木院長時代の1912年(明治45年)に一度廃止。1922年(大正11年)に英国婦人教師の手により復活するも、1938年(昭和13年)に再度廃止するなど[9]時局に振り回されていた。

1924年の排日移民法施行にともない、反米感情も含め、英語存廃論が世論に出た[10]

1950年9月には、日本英語教育協会(2009年に日本英語検定協会と合併して解散)が設立された。

2011年度から小学5・6年生で英語が必修化した。文部科学省は小4以下での必修化も検討している[11]

英語教育議論に関する課題

小学校での英語学習の導入、高等学校で英語による授業を原則とする学習指導要領の記述など、英語教育に関する議論は他の教科以上に話題となりやすい。これには、英語教育が教育産業の分野で大きなマーケットを形成するほどの関心の高さが関係していると思われる。学校教育における英語の学習時間の拡張や、会話重視・文法軽視の学習内容など、学習指導要領に影響を及ぼすものもあるが、英語教育の専門家から批判を受ける場合も多い。また、こうした事態を「英語教育熱」とよび、冷静な議論を呼びかける専門家もいる[12]

教員養成に関する課題

原則的に、日本の学校で英語教育を行う場合、小学校・中学校「外国語 (英語)」・高等学校「外国語 (英語)」の免許が必要となる。

小学校

小学校の教員免許状取得のための単位を修得する必要がある。小学校教員を参照。

他の小学校の教科のように、免許取得条件に専門科目としての英語の履修は記載されていないが、一般教養科目における英語の単位修得が義務付けられている。また、教員免許取得の条件に一種免許は大学卒業、二種免許は短期大学卒業(もしくは大学に2年以上在学して62単位以上修得し、かつ必要単位を修得)が含まれており、そのためには第二外国語の履修が必須というケースが非常に多いので、免許取得時点で何らかの英語以外の語学についても履修する必要がある場合がほとんどである。

中学校・高等学校

日本で中学校および高等学校「外国語 (英語)」の教職免許を取得する際には、教育職員免許法施行規則第四条および第五条に基づき、次の内容を含む科目について規定数以上の単位を修得する必要がある[13]。中学校・高等学校「外国語 (英語)」の教員免許は教員養成系や文学・語学系の多くの大学(通信教育を含む)で取得可能である[14]

このほかに、第六条第四欄に規定されている「各教科の指導法」として、「英語」の指導法(英語科教育法などと呼ばれる。基本的には、英語教育学を含む)の単位を修得する必要がある。

なお、2007年度(平成19年度)の文部科学省の調査によると、英検準1級以上、TOEIC730点以上、TOEFL550点以上を取得している英語教員の割合は、中学では全体のわずか26.6%、高校でも50.6%だった。また中学3年生で英検3級以上の英語力があるのは全体の33.7%、高校3年生で英検準2級以上なのは27.8%だった[15]


注釈

  1. ^ : mimicry-memorization
  2. ^ : substitution
  3. ^ : army specialized training program
  4. ^ 1959年にチョムスキーがスキナーの「言語行動」の再検討を行ったのが有名である。
  5. ^ : communicative language teaching
  6. ^ : notional-functional syllabus
  7. ^ 福澤諭吉らが学んだ蘭学塾。
  8. ^ 終戦直後には、「憲政の神様」尾崎行雄も同様に唱えた。

出典

  1. ^ Nunan, David (1991). “Communicative tasks and the language curriculum”. TESOL quarterly (Wiley Online Library) 25 (2): 279-295. doi:10.2307/3587464. https://doi.org/10.2307/3587464. 
  2. ^ Thompson, Christopher G.; von Gillern, Sam (2020-06). “Video-game based instruction for vocabulary acquisition with English language learners: A Bayesian meta-analysis” (英語). Educational Research Review 30: 100332. doi:10.1016/j.edurev.2020.100332. https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S1747938X19302155. 
  3. ^ “Life in Japan: This country wastes a lot of money teaching English” (英語). Mainichi Daily News. (2022年3月14日). https://mainichi.jp/english/articles/20220314/p2a/00m/0op/008000c 2022年6月26日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g h i 小学校英語教育に関する調査研究報告書”. 国立教育政策研究所. 2019年5月4日閲覧。
  5. ^ “Denmark to cut places on English-language university programmes” (英語). (2018年8月23日). https://www.thelocal.dk/20180823/denmark-to-make-cuts-to-english-language-university-programmes/ 2018年8月24日閲覧。 
  6. ^ 清水稔「外来文化の受容の歴史から見た日本の外国語学習と教育について」『文学部論集』第94巻、佛教大学文学部、2010年3月、1-14頁、ISSN 0918-9416NAID 110007974768国立国会図書館書誌ID:10614069 
  7. ^ 「ナガジン」発見!長崎の歩き方
  8. ^ 日本における小学校英語教育の変遷(1)-明治時代- 共立女子大学 西村史子※ログインが必要(要登録)
  9. ^ 初等科の英語を全廃し修身教育を充実『東京日日新聞』(昭和13年3月28日)『昭和ニュース辞典第6巻 昭和12年-昭和13年』p71 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  10. ^ 英語の国際化と日本の英語教育に関する一考察
  11. ^ 小4以下も英語必修、文科省検討 指導法を研究 日本経済新聞 2012/9/9
  12. ^ 金谷憲『英語教育熱 加熱心理を常識で冷ます』、研究社、2008年
  13. ^ 教育職員免許法施行規則”. e-Gov. 2020年1月26日閲覧。
  14. ^ 文部科学省「中学校・高等学校教員(英語)の免許資格を取得することのできる大学」および私立大学通信教育協会「取得できる教員免許状一覧」
  15. ^ 平成19年度小学校英語活動実施状況調査及び英語教育改善実施状況調査(中学校・高等学校)について


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