自由で開かれたインド太平洋戦略
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2010年代の日本の外交・安全保障政策
名称 | 閣議決定日 | 概要[13] |
---|---|---|
国家安全保障戦略 | 平成25年(2013年) 12月17日 |
外交政策及び防衛政策を中心とした国家安全保障の基本方針(概ね10年程度の期間を念頭) |
平成31年度以降に係る防衛計画の大綱 | 平成30年(2018年) 12月18日 |
防衛力のあり方と保有すべき防衛力の水準を決定(概ね10年程度の期間を念頭) |
中期防衛力整備計画 (平成31年度~平成35年度) |
平成30年(2018年) 12月18日 |
5年間の経費の総額の限度と主要装備の整備数量を明示 |
年度予算 | - | 各年度ごとの必要な経費 |
全般
日本は、第1次安倍政権以来、7年連続で総理大臣が交代した。この間、2010年(平成22年)に防衛計画の大綱(22大綱)を閣議決定した。第2次安倍政権下の2013年(平成25年)12月17日に国家安全保障戦略と防衛計画の大綱(25大綱)を閣議決定し、さらに2018年(平成30年)に防衛計画の大綱(30大綱)を再度閣議決定している(現行)。
国家安全保障戦略[14]では、「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している」「パワーバランスの変化の担い手は中国、インド等の新興国」という現状認識の下、日本の国益の確保のために「アジア太平洋地域」における「自由貿易体制の強化」「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護すること」を掲げている。
その上で、日本がとるべき戦略的アプローチの一つとして「安定した国際環境創出のための外交の強化」や「海洋安全保障の確保」を挙げている。後者ではさらに、ペルシャ湾から、インド洋、南シナ海を経て日本近海に至るシーレーンに言及している。
安倍外交の方向性
第2次安倍内閣の外交方針でも従来のアジア太平洋地域とインド洋を結びつけ、アフリカにまで達する地域への外交・安全保障上の関与を強化するとした[6]。安倍は首相就任翌日の2012年(平成24年)12月27日に発表した英文論文「Asia's Democratic Security Diamond(アジアの民主的な安全保障ダイヤモンド)」において、中国の南シナ海での挑戦により「太平洋とインド洋にわたる航行の自由」が脅かされつつあるが、日本とハワイ(米国)、オーストラリア、インドを結ぶダイヤモンド形の集団安全保障として、セキュリティダイヤモンド構想を提唱した[15][6]。
2013年(平成25年)1月18日にジャカルタで予定[注釈 3]されていた「開かれた、海の恵み――日本外交の新たな5原則」演説では次のように述べる予定だった[16]。
わが日本は、まさしくこの目的を達するため、20世紀の後半から今日まで、一貫して2つのことに力をそそいでまいりました。(中略)2つのうち1つは、米国との同盟です。世界最大の海洋勢力であり、経済大国である米国と、アジア最大の海洋民主主義であって、自由資本主義国として米国に次ぐ経済を擁する日本とは、パートナーをなすのが理の当然であります。
いま米国自身が、インド洋から太平洋へかけ2つの海が交わるところ、まさしく、われわれがいま立つこの場所へ重心を移しつつあるとき、日米同盟は、かつてにも増して、重要な意義を帯びてまいります。
わたくしは、2つの大洋を、おだやかなる結合として、世の人すべてに、幸いをもたらす場と成すために、いまこそ日米同盟にいっそうの力と役割を与えなくてはならない、そのためわが国として、これまで以上の努力と、新たな工夫、創意をそそがねばならないと考えています。
これからは日米同盟に、安全と、繁栄をともに担保する、2つの海にまたがるネットワークとしての広がりを与えなくてはなりません。米国がもつ同盟・パートナー諸国と日本との結び合いは、わが国にとって、かつてない大切さを帯びることになります。
同年2月23日のワシントン戦略国際問題研究所での演説で安倍は「インド太平洋」という語を明確に用いた[6]。2月28日の施政方針演説では日米豪印の4カ国にASEAN諸国などの海洋アジア諸国[注釈 4]との連携を深めていくと述べた[6]
安倍首相による提唱
2016年(平成28年)8月27日、第6回アフリカ開発会議 (TICAD VI) に、内閣総理大臣安倍晋三は共同議長として参加した[17]。
開会セッションの基調演説で、安倍首相は次のように述べ[18]、「自由で開かれたインド太平洋戦略(Free and Open Indo-Pacific Strategy)」を対外発表した[1]。
注釈
出典
- ^ a b “2017年外交青書:特集「自由で開かれたインド太平洋戦略」”. 外務省 (2017年). 2021年2月4日閲覧。
- ^ a b 日本放送協会. “自由で開かれたインド太平洋 誕生秘話”. NHK政治マガジン. 2023年9月9日閲覧。
- ^ “A FREE AND OPEN INDO-PACIFIC”. アメリカ合衆国国務省. 2023年9月9日閲覧。
- ^ a b 岡本 2019 p.1
- ^ 河合 2019 p.106
- ^ a b c d e f g h 神谷 2019[要ページ番号]
- ^ 「二つの海の交わり」
- ^ 「中国GDP、世界2位確実に 日本、42年ぶり転落」『日本経済新聞』、2011年1月20日。2021年2月4日閲覧。
- ^ 河合 2019 p.105
- ^ 河合 2019 p.107
- ^ 野嶋剛「台湾を変えた男 李登輝よ、さらば」『ニューズウィーク日本版』第35巻第31号、CCCメディアハウス、2020年8月18日、44-45頁。
- ^ 第196回国会外交演説
- ^ a b 令和2年版 防衛白書 p.214 図表II-3-1-1
- ^ 「国家安全保障戦略」
- ^ Shinzo Abe, "Asia's Democratic Security Diamond," Project Syndicate, December 27, 2012.
- ^ 「開かれた、海の恵み」
- ^ “第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)”. 日本外務省 (2016年8月28日). 2021年2月4日閲覧。
- ^ TICAD VI基調演説
- ^ 「インド太平洋地域の大使に局長経験者 政府が重点配置」『日本経済新聞』、2020年11月17日。2021年2月4日閲覧。
- 1 自由で開かれたインド太平洋戦略とは
- 2 自由で開かれたインド太平洋戦略の概要
- 3 2010年代の日本の外交・安全保障政策
- 4 2020年代の日本の外交・安全保障政策
- 5 各国の動き
- 6 外部リンク
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