東武9000系電車 副都心線直通に伴う改造

東武9000系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 15:35 UTC 版)

副都心線直通に伴う改造

2006年平成18年)10月から、2008年(平成20年)6月14日に開業する東京メトロ副都心線への直通運転に対応するための改造工事が開始された。

最初に施工されたのは9102Fで、2007年3月28日付けで竣工。同日より試運転の後、6月11日の有楽町線直通運用から営業運転を再開した。同年度の東武の事業計画で7本を改造するとの発表があり、翌2008年6月7日付けで竣工した9152Fをもって完了。また、この改造と同時に客室内のリニューアル工事も行われた。改造は森林公園検修区において日立製作所日本電装が共同で実施し[注 5]、車内にはそれぞれの会社名が明記されたプレートが取り付けられている。

  • 2006年(平成18年)度
    • 9102F
  • 2007年(平成19年)度
    • 9103F(6月 - 8月)・9106F(8月 - 10月)・9107F(9月 - 11月)・9104F(11月 - 12月)・9108F(12月 - 2008年2月)・9151F(1月 - 3月)
  • 2008年(平成20年)度
    • 9105F(3月 - 4月)・9152F(4月 - 6月)

主な改造内容は以下の通り。

  • 外観
    • 前照灯のHID化。
    • 前面下部にスカートを設置。
    • 車外幕板部にスピーカー(乗車促進ブザー)を設置(新製時に設置済みの9050型を除く)。
    • 行先表示器のフルカラーLED化(英字併記付き明朝体表示、前面運行番号表示は黄緑色のゴシック体。地下鉄線内でも西武6000系と同様の種別表示が出来るようになり「副都心線直通 地下鉄線内急行」といった表示も行うようになった)。下画像のように、2013年(平成25年)3月16日に直通運転が開始された東急東横線みなとみらい線の行き先表示も用意されている。
    • パンタグラフをシングルアーム式に換装。
    • 基本的な機器類に大きな変更点はないが、先頭車床下では副都心線乗り入れに必要な機器が追設されている。先頭車床下には新たにATO装置と戸閉制御切換装置[注 6]、クハ9000形・クハ9050形にはATO送受信装置(トランスポンダ)とATO車上子を搭載。
  • 車内内装
    • 室内の内張りを50070型同様の白色の高硬度アートテック基板としたものへ全面的に交換(9050系を除く)。
    • 床敷物をグレーの難燃性ゴム材に、出入口部では黄色柄のものへ交換。
    • 側窓のカーテンを森林をイメージしたものに交換。
    • 客用ドアの交換(9050型を除く)。ドアガラスを複層ガラス化。
    • ドア脇の手すりを黄色に着色。
    • 座席モケットを緑系(9050型は茶系)から青系の「キュービックブルー柄」(優先席は青緑色の「コンフォートグリーン」)に交換の上バケットシート化。
    • 7人掛け座席に3+4人で区切るスタンションポールを設置。
    • 座席横の仕切りをパイプ式から大型板(30000系後期車と同一品)に交換。
    • 2号車の1号車側と、9号車の10号車側の車端部には車椅子スペース(他の副都心線車両とは反対の位置)を新設したほか、非常通報器を乗務員と相互通話可能な対話式に変更(9050型は新製時より設置済み)。
    • 連結面においては貫通扉を50000系列と同一品に交換し、ドアクローザ機構を取り付け、ドアストッパーは撤去。
    • 旅客案内用にLED1段表示の車内旅客案内表示器を客用ドア上部に左右交互に配置(千鳥配置)で新設し、合わせてドアチャイム・自動放送装置の新設も行われた[注 7]
    • 網棚は従来のものを再用。
    • ドア付近のつり革の先に黄色いテープを貼り付け、車両番号、禁煙のプレートを新式に交換(9050型は未交換)。
  • 乗務員室は、ワンマン運転対応用にほとんどの機器を更新。
    • 室内の配色をグリーンからダークグレーに変更。
    • 運転台計器盤周辺は50070型とほぼ同じ設計のデスクタイプに変更し、主幹制御器をワンハンドル化。マスコンテーブル周囲には各ワンマン運転用機器を、運転台左端にノッチ位置表示灯などを設置。また、上部にはホーム監視用の車上CCTVとミリ波画像受信機を新設。
    • 従来からのモニタ装置更新に合わせて運転台のモニタ表示盤はタッチパネル式の液晶モニター化し、車両状態の表示機能にサービス機器の制御機能を追加。この表示器は東芝製の「モニタ装置」であり、表示内容は50070型のATIモニターと類似したものとなっている。
    • 乗務員室背面にあった行先表示設定器を撤去(行先設定機能はモニタ表示器に内蔵)し、副都心線対応スイッチ(ATC切換スイッチ・ATO運転モード〈平常 - 回復〉・ワンマン - ツーマン切換・仕切開戸操作器〈電磁鎖錠用〉)などを新設。
    • ワイパーを空気式から電動式化のうえアーム形状変更。
    • フロントガラスの日除け(遮光パネル)を巻き上げカーテン式に変更。
    • 乗務員室仕切開戸を電磁鎖錠に対応させるために交換し、扉上部には通行表示灯を新設。

なお、副都心線への直通対応工事は9102F以降の量産車のみの施工となっている。試作車の9101Fは量産車とドア位置が異なるため、副都心線のホームドアには対応出来ないことから乗り入れは不可能となり、同線乗り入れ対応改造対象外となっている[13]。そのため、2008年6月のダイヤ改正を控えた6月8日からは「Y」マーク(有楽町線のみ入線可の車両を示すステッカー)を貼付し、原則として東上線の地上運用のみに就いていた[13]。その後、有楽町線各駅へのホームドア設置を前にした2010年5月22日より有楽町線でATOの使用が開始されたため[14]、9101Fは「Y」マークを取り外して有楽町線直通運用からも外れた[13]

ただし、リニューアル車の床敷物は本来はアルミ材を敷いた上でゴム製の床敷物を貼り付けるが[15][16]、現車ではアルミ材が敷かれておらず、鉄道車両の火災対策基準を満たさないことから、国土交通省より改善指示が出された[15][16]。これに対し、東武鉄道は他系列を含めて2014年(平成26年)度上期までの予定で取り替えると回答している[15][16]


注釈

  1. ^ a b 東武では同一系列内の区分に関して「型」の表記を使用しており、本系列においてはそれぞれ9000型・9050型と表記される。
  2. ^ いずれも地下鉄直通用であった当時は本線系統に所属。
  3. ^ 東武全体で見ても1800系以来12年ぶりの新形式。
  4. ^ 2013年3月の種別追加及び種別色変更に伴う方向幕交換時に、東上線普通も種別ありに変更されている。
  5. ^ 日本電装とデンソーは別会社。
  6. ^ ATO装置は東芝としては初めて採用され、同じ副都心線用の50070型と共通品。
  7. ^ 9050系は更新され、東上本線内では50000系列と同一の女性の声(水谷ケイコ)となった。

出典

  1. ^ a b c 交通新聞社『鉄道ダイヤ情報』2006年3月号特集「東武鉄道車両カタログ(通勤車篇)p.27。
  2. ^ a b c d e f g h 交友社「鉄道ファン」1982年2月号新車ガイド「東武東上線に9000系登場」46-47頁記事。
  3. ^ a b c 交友社「鉄道ファン」1993年4月号連載「ある車両技術者の回想10:軽量ステンレス車両開発の苦心談」pp.102 - 103。
  4. ^ a b c 交友社「鉄道ファン」1982年2月号新車ガイド「東武東上線に9000系登場」48-50頁記事。
  5. ^ a b 東洋電機製造『東洋電機技報』第51号(1982年4月)「東武鉄道株式会社納9000形新造通勤車用電機品」pp.2 - 12。
  6. ^ a b c d e f g h i 交友社「鉄道ファン」1982年2月号新車ガイド「東武東上線に9000系登場」50-52頁記事。
  7. ^ a b c d e 鉄道ジャーナル』第21巻第11号、鉄道ジャーナル社、1987年9月、123頁。 
  8. ^ 東洋電機製造『東洋電機技報』第70号(1988年3月)「東武鉄道(株)納9000形車用チョッパ制御装置」pp.16 - 20。
  9. ^ a b 東洋電機製造『東洋電機技報』第71号(1988年7月)「62年総集編」pp.4 - 5。
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 日本鉄道運転協会「運転協会誌」1995年3月号新型車両プロフィールガイド「東武鉄道9050系」記事。
  11. ^ a b c d e f g 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」1995年10月臨時増刊号新車年鑑1995年版「東武鉄道9050系」記事。
  12. ^ 東洋電機製造『東洋電機技報』第92号(1995年7月)「'94総集編」p.5。
  13. ^ a b c 「ホームドア時代」に取り残された車両の運命 ほかの路線で元気に活躍する車両もあるが… - 東洋経済オンライン(2020年11月10日)、2023年5月5日閲覧
  14. ^ 東京メトロニュースリリース 有楽町線にホームドアを設置します - 東京地下鉄株式会社(2010年4月27日)、2023年5月5日閲覧
  15. ^ a b c 鉄道車両の床材料の交換指示について(国土交通省報道発表資料・インターネットアーカイブ)。
  16. ^ a b c 鉄道車両の床材料の改良計画について(国土交通省報道発表資料)。
  17. ^ 2月12日(月)から「すぐ、そこ。KAWAGOE!トレイン」を運行します!”. 東武鉄道. 2024年2月4日閲覧。
  18. ^ 東武 KAWAGOEラッピングトレイン 運転”. 鉄道コム. 2024年2月4日閲覧。
  19. ^ NFT発売記念】東上線9101編成廃車回送 前面展望(森林公園~寄居・羽生~渡瀬北留置)”. 東武鉄道公式YouTubeチャンネル「【公式】東武鉄道チャンネル / TOBU Railway」. 2024年3月9日閲覧。
  20. ^ 東上線に新型車両導入へ 東武、2024年度の鉄道事業設備投資計画を発表”. 鉄道コム (2024年4月30日). 2024年4月30日閲覧。
  21. ^ 東武9050形9152Fが南栗橋へ railf.jp 鉄道ニュース 2020年9月18日
  22. ^ 東武9050形が夜間試運転で渡瀬へ railf.jp 鉄道ニュース 2020年9月21日
  23. ^ 東武インターテック株式会社の公式サイトより
  24. ^ 東武9000系9108編成が南栗橋へ railf.jp 鉄道ニュース 2020年11月14日
  25. ^ 東武線に車体広告電車が登場!(東武鉄道ニュースリリース・インターネットアーカイブ・2002年時点の版)。


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