東急バス弦巻営業所 沿革

東急バス弦巻営業所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 14:56 UTC 版)

沿革

営業所の開設は1959年(昭和34年)3月3日で、新生・東京急行電鉄になってから2番目の増設営業所、世田谷区内3番目の拠点として立ち上げられた。終戦からかなりの時間が経ち、戦時休止路線がすべて復旧した後の開設であるが、ここでは現在の所管路線の基礎として戦前に営業した玉川電鉄バス世田谷営業所の系譜まで遡って解説する。

世田谷通りのバスの始まり

1925年(大正14年)、東急世田谷線の前身となる玉川電気鉄道支線、三軒茶屋 - 下高井戸間が開通した。この路線は、上町まで世田谷通りと並行し、渋谷までの直通電車もあったが、その先は京王電気軌道線を目指して北上するルートとなったため、上町以遠の世田谷通りは公共交通をバスに依存することになってしまった。

そこに新規参入したのは玉川電気鉄道(玉電)ではなく、バス事業に実績のあった八木哲[注釈 1]率いる世田谷乗合自動車だった[注釈 2]。昭和初期の世田谷乗合自動車は、まず三軒茶屋から世田谷通りをひたすら西に向かい、陸軍自動車学校、東京第二衛戍病院を経由して調布町(現・調布市)の国領に至る路線を立ち上げていた。これが後の調布線の基礎となる。

一方、玉電は路面電車の培養と防衛のため、1927年(昭和2年)にバス事業に参入。1930年(昭和5年)渋谷駅と園芸学校(現・都立園芸高校)を結ぶ路線の運行を始める。

この頃、八木哲は神奈川県の方面へも事業を拡大し、二子玉川から大山街道を市ヶ尾まで行き、北は柿生、南は川和町から中山まで路線を延ばしていた。また、新丸子から中原街道を勝田までも運行していた。

八木は玉電のバス事業参入を見届ける形で翌1931年(昭和6年)10月19日に世田谷乗合自動車を、翌1932年10月21日神奈川県下の路線を玉電に売却して撤退する。玉電は、八木から引き継いだ事業のうち世田谷乗合自動車の路線と自社で開設した路線を運営するため世田ヶ谷町桜の農大前停留所近傍に世田谷営業所を設けた。

1932年(昭和7年)、沿線の砧村ピー・シー・エル映画製作所(現:東宝スタジオ)が開設される。玉電では、同社に出入りする映画関係者の需要を担うために調布線の途中折り返し便を設ける。後の成城線の基礎となる東宝線の誕生であった。

東横電鉄・そして大東急へ

1938年(昭和13年)、玉川電気鉄道は東京横浜電鉄と合併する。これにより、玉電が持っていた世田谷営業所と淡島営業所の2つのバス営業所も東京横浜電鉄の手に渡った。

両営業所は東京横浜電鉄、そして東京急行電鉄大東急)になってからもそのまま維持されるが、終戦前後に国領線と東宝線が休止となり、所管路線を失った世田谷営業所は廃止の上、淡島営業所に統合された。このため、八木哲や玉電以来の歴史を持っていた世田谷営業所時代の系譜は淡島営業所に引き継がれており、従って現在の弦巻営業所は、まったくゼロからのスタートということができる。

淡島営業所時代

1946年(昭和21年)、陸軍自動車学校跡地に東京農業大学が移転。東京第二陸軍病院は厚生省の手に渡り、国立世田谷病院(現:国立成育医療研究センター)として生まれ変わる。この両機関へのアクセスを確保するため、世田谷通りを走破する幹線だった東宝線と国領線は世田谷営業所を引き継いだ淡島営業所の手で再開される。その際に東宝撮影所と至近だった小田急線成城学園前駅に乗り入れ、現在の成城線の形が出来上がった(後述)。

1950年(昭和25年)、小田急電鉄は武蔵野乗合自動車を買収して小田急バスを誕生させた。小田急バスは当初、三鷹市にあった三鷹営業所(現:吉祥寺営業所)1か所だけで営業していたが、東京都区部への本格的な進出をめざし、東京急行と交渉。同年11月に若林営業所(現:小田急ハイウェイバス)を立ち上げ、国領線の共同運行を始めると、1951年(昭和26年)、成城線でも共同運行を始めた。

弦巻営業所の立ち上げ

弦巻営業所入口脇に掲出されている、2022/4/1現在の弦巻営業所所管路線の一覧

一方で、世田谷区の市街化が進むにつれて区内を通る路線の新設が相次いだことを受け、淡島営業所1か所だけでは需要を満たせなくなっていった。隣の目黒区内には既に目黒、不動前の2つの営業所があったが、そちらも路線の増加で規模が追いつかなくなっていく。こうして東急は世田谷区内に新たなバスの拠点を作る必要に迫られた。

1956年(昭和31年)、瀬田営業所が先に立ち上げられる。これに続く戦後2番目の増設営業所を開設すべく、東急は世田谷区弦巻の現在地を取得。1959年(昭和34年)3月3日、弦巻営業所が営業を開始した。なお開設と同時に、1957年(昭和32年)に開通していた弦巻循環線(現:弦巻線)の「松ヶ丘小学校」停留所を「弦巻営業所」に改称している。

開設にあたり、淡島営業所から成城線・国領線、それに東京都交通局都営バス)と共管の経堂線、瀬田営業所から戦後新設された学校線・弦巻循環線を、そして不動前営業所からはやはり都営共管の駒沢線を移管され、営業を開始した。その後、上町線や千歳線などを新たに開通し、近隣営業所との路線調整を図りながら世田谷区内を中心に路線拡充を進めた。

1970年代から1980年代にかけては、調布線の廃止、上町線の分割など長距離路線の整理縮小を進める一方、1984年(昭和59年)3月16日に廃止となった駒沢営業所から東急コーチ自由が丘線、祖師谷線を引き継いだ。

東急トランセ管理委託へ

1999年(平成11年)から2002年にかけて、東急トランセへの管理委託路線化や大橋営業所の廃止に伴う路線調整が行われた。

1999年10月16日、成城線がいったん大橋営業所に移管された後、弦巻営業所のトランセ全面委託に向けた準備が始まる。

最初にトランセ委託化されたのは祖師谷線で、2000年(平成12年)3月1日付で委託路線となった。同年3月16日に弦巻線、5月1日に千歳線(現・松陰線)が委託化。6月16日の学校線委託の際は、直営のまま残ることになった目黒駅乗り入れ系統が独立して深沢線となり、目黒営業所へ移管されている(後述)。さらに8月1日に上町線が委託化、11月16日、成城線が大橋から再移管され弦巻へ戻るのと同時に委託化され、当営業所のトランセ委託移行は一応の完成をみた。

その後、大橋営業所の廃止を控えた2002年(平成14年)には、3月16日に松陰線(渋21)が移管の上で委託化。同年5月16日に小山線が目黒から、渋谷空港線が大橋からの移管時に委託化された。

また、最後まで直営で残った深沢線も、2007年(平成19年)に当営業所へ再移管され、トランセ委託路線となった。

2022年令和4年)4月1日 恵32が瀬田から移管された。

2024年(令和6年)3月31日 この日の運行をもって東急トランセが東急バスへ吸収合併された。[1]これに伴い約24年にわたり行われてきたトランセ委託が終了、翌4月1日以降すべての路線の運行が東急バス直営となった。


注釈

  1. ^ 世田ヶ谷乗合自動車のほかにも芝浦乗合自動車(目蒲電鉄バス・東横電鉄バスを経て現在の東京都営バス)や八木乗合自動車(玉川乗合・東横電鉄バスを経て現在の東急バス)を経営し、一時は八王子市街自動車(京王電気軌道・東京急行電鉄・京王帝都電鉄を経て現在の京王電鉄バス)にも関与していた。また、八木自動車学校を芝区白金三光町に開設し、運転者育成にも注力していた。
  2. ^ 八木がいつこの路線を開設したかの記録は、『東京市統計年表 第27回』(東京市 1931年)の1,112ページ「東京都市計畫區域内ニ於ケル乘合自動車運輸狀況」によると1928年(昭和3年)8月となっている。また、『大日本人物史 昭和5年度版』帝国時事通信社 1929年 34ページ「八木哲君」の項にも「昭和三年世田ヶ谷及び芝浦乗合自動車商会を設立」と記されている。
    一方、『世田谷 近・現代史 本編』(世田谷区 1976) 612ページの「世田谷地区内交通網沿革一覧(2)バス」には1923年(大正12年)1月より「仲田乗合自動車(?)」が渋谷 - 喜多見間を運行し、1925年(大正14年)1月玉電下高井戸線の開業により上町以東を廃止。1929年(昭和4年)10月玉川乗合が買収したとの記述がある。ただし、東急側の文献(『東京横浜電鉄沿革史』『東京急行電鉄50年史』『東急100年史』)には一切そのような記述は無い。
  3. ^ 停留所標識は東急バスが設置・管理。
  4. ^ 旧制東京獣医畜産学校→東京獣医畜産大学日本大学農獣医学部→生物資源科学部
  5. ^ トランセ管理委託営業所のいすゞ車は、このほか神奈川県内の高津営業所に在籍する。

出典

  1. ^ 東急バス株式会社と株式会社東急トランセの合併に関するお知らせ”. 東急バス. 2024年4月9日閲覧。
  2. ^ a b 渋谷駅から道玄坂上までの運行経路変更について
  3. ^ a b c 運行経路変更およびバス停新設のお知らせ
  4. ^ 【渋24系統】渋谷駅〜成城学園前駅(西口)の運行について”. 東急バス株式会社 (2023年3月10日). 2023年3月18日閲覧。
  5. ^ 東98系統ダイヤ改正に伴う「ICカード乗継割引」の実施について 2021年11月1日(月)実施”. 東急バス (2021年9月28日). 2021年10月6日閲覧。
  6. ^ 鎌倉淳 (2021年9月29日). “東急バス最長路線「東京駅~等々力」、運行区間短縮へ。乗継割引を新設”. タビリス. 2021年11月8日閲覧。
  7. ^ 新設系統(実験運行)実施のお知らせ 2015年8月3日(月)~2016年1月29日(金)までの平日のみ運行 等13 等々力操車所~駒沢~世田谷区民会館~梅ヶ丘駅”. 2015年7月29日閲覧。
  8. ^ 東急バス 【等13】梅丘一丁目バス停新設のお知らせ
  9. ^ 【等11・13】経路変更およびダイヤ改正のお知らせ
  10. ^ ボロ市開催に伴う迂回運行のお知らせ
  11. ^ 世田谷ボロ市開催に伴う迂回運行のお知らせ
  12. ^ ダイヤ改正のお知らせ 2019年12月1日(日)実施【反11・12、森91】”. 東急バス (2019年11月21日). 2020年11月9日閲覧。
  13. ^ 東急バス創立10周年記念誌 p.109
  14. ^ 【恵32】所管営業所変更のお知らせ”. 東急バス. 2022年5月17日閲覧。
  15. ^ 【園02】ダイヤ改正のお知らせ 2017年5月1日(月) 実施 - 東急バス公式サイト、2017年4月17日、同5月19日閲覧。
  16. ^ 世田谷区内におけるバス路線再編成の実施について 2018年4月1日(日)実施 - 東急バス公式サイト、2017年11月22日、同11月25日閲覧。
  17. ^ 世田谷区内(桜新町・岡本地区)におけるバス路線の再編成実施について 2021年4月1日(木)実施”. 東急バス (2020年11月9日). 2020年11月9日閲覧。
  18. ^ 都立01系統廃止に伴う定期券の払いもどしおよび玉31系統・黒07系統の運行内容について 2021年4月1日(木)実施”. 東急バス (2021年2月19日). 2021年3月2日閲覧。
  19. ^ “東京近郊と羽田直結 バス路線開設相次ぐ”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 1. (2000年7月10日) 





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