天橋立
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2017年(平成29年)4月、文化庁により、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリー「日本遺産」の「丹後ちりめん回廊」を構成する文化財のひとつに認定された[6][7]。
名称
一般的に「天橋立」と表記されるが、砂州を走る府道の名称は天の橋立線である[8]。「橋立」と略される場合もあり、例えば対岸の与謝野町には橋立中学校がある。
読み方は「あまのはしだて」であるが、立の字を濁らせずに「たて」と読むことがある。2003年から2004年にかけて、宮津市と与謝郡4町の合併協議において新市の名称を公募したところ、上位10点に入った「天橋立」「天の橋立」「橋立」にはそれぞれ、濁らせた読みと濁らせない読みの両方が含まれる。なお、合併自体は断念された[9]。
『運歩色葉集』には天橋立を意味する1文字の漢字(国字)が記載されている。之繞に「日」を九つ、読みは「はしだて」である[10][11]。『詞林三知抄』にも、雁垂れに「有」を六つの一文字で「あまのはしたて」と読ませる文字が紹介されている[12]。
地理
区域 | 延長(m) | 最大幅(m) | 最小幅(m) | 面積(ha) |
---|---|---|---|---|
大天橋 | 2410 | 170 | 40 | 18.8 |
小天橋 | 830 | 105 | 20 | 4.9 |
第2小天橋 | 410 | 25 | 7 | 0.9 |
小計 | 3650 | 24.6 | ||
傘松 | 120 | 60 | 15 | 0.5 |
合計 | 25.1 |
天橋立の北部、およそ南西方向へ延びている部分を大天橋または北砂州という。切戸を隔てて南部、およそ南東方向へ延びている部分を小天橋[注釈 1]または南砂州という。これら2か所が宮津湾と阿蘇海を分断し、切戸と文殊水道(天橋立運河)によって両水域がかろうじて繋がっている。切戸には大天橋という橋が架かる。また文殊水道には小天橋という橋が架かり「廻旋橋」として知られる[14]。さらに文殊水道を隔てて南側にある部分を第2小天橋という。これら3か所で天橋立の砂州部分をなし、全幅は20-170メートル、全長は大天橋と小天橋を合わせて約3.2キロメートル、第2小天橋を合わせると約3.6キロメートルである。北方にある傘松地区からは3地区を眺めることができ、これら4地区を合わせて都市公園法に基づく都市公園「京都府立天橋立公園」をなす[13][15]。文殊堂・智恩寺とその門前町のある天橋立南方を文殊地区という[16]。
全体が外洋に面さない湾内の砂州としては日本で唯一のものであり、白砂青松を具現するかのごとく一帯には松林が生え、東側には白い砂浜が広がる。この松は、人の手により植林されたものではなく、大部分が自然発生的に生えたものである[1]。1994年(平成6年)、「天橋立の松に愛称を付ける実行委員会」は、天橋立に生える老松、奇松12本の愛称を公募し「九世戸の松」「知恵の松」などが命名された。天橋立には「日本の道100選」に選定された京都府道607号天の橋立線が走っている。当路線は延長約3.2キロメートル、幅員3.5-12.1メートルであり、近畿自然歩道に指定されている[17]。
注釈
- ^ 京都府京丹後市久美浜町にある砂州(小天橋)とは別。
- ^ 砂嘴は、湾に面した海岸や岬の先端などから細長く突き出るように伸びている砂礫質の州である。一方砂州は、砂嘴が伸びて対岸にほとんど結びつくようになったものをいう。「5.海の作用による地形」(国土地理院)より。
- ^ 日本国事跡考(京都大学)を参考に訓読したもの。
- ^ 地理Bの第5問の問3に天橋立の眺望の撮影地点を問う問題が出題。
- ^ 東方の雪舟観から北方の天上大パノラマ観まで、およそ時計回りに列挙してある。
- ^ 天橋立の中心部にある夫婦松までの距離。
- ^ 雪舟が『天橋立図』を描いた視点とは異なる。
- ^ 分かりやすくするために、オリジナル画像より回転(画像上方が西)、拡大及びトリミングを施す。
出典
- ^ a b c d e 浅井建爾 2001, pp. 130–131.
- ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『日本三景』 - コトバンク(2015年4月12日閲覧。)
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天橋立と同じ種類の言葉
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