天橋立 天橋立の概要

天橋立

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/14 02:06 UTC 版)

北側(傘松公園)からの眺望 - 斜め一文字
天橋立
京都府内における天橋立の位置
雪舟筆『天橋立図』(京都国立博物館蔵、国宝) 東側より - 雪舟観

2017年(平成29年)4月、文化庁により、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリー「日本遺産」の「丹後ちりめん回廊」を構成する文化財のひとつに認定された[6][7]

名称

一般的に「天橋立」と表記されるが、砂州を走る府道の名称は天の橋立線である[8]。「橋立」と略される場合もあり、例えば対岸の与謝野町には橋立中学校がある。

読み方は「あまのはしだて」であるが、立の字を濁らせずに「たて」と読むことがある。2003年から2004年にかけて、宮津市と与謝郡4町の合併協議において新市の名称を公募したところ、上位10点に入った「天橋立」「天の橋立」「橋立」にはそれぞれ、濁らせた読みと濁らせない読みの両方が含まれる。なお、合併自体は断念された[9]

運歩色葉集』には天橋立を意味する1文字の漢字(国字)が記載されている。之繞に「日」を九つ、読みは「はしだて」である[10][11]。『詞林三知抄』にも、雁垂れに「有」を六つの一文字で「あまのはしたて」と読ませる文字が紹介されている[12]

地理

天橋立公園の大きさ[13]
区域 延長(m 最大幅(m) 最小幅(m) 面積(ha
大天橋 2410 170 40 18.8
小天橋 0830 105 20 04.9
第2小天橋 0410 025 07 00.9
小計 3650 24.6
傘松 0120 060 15 00.5
合計 25.1

天橋立の北部、およそ南西方向へ延びている部分を大天橋または北砂州という。切戸を隔てて南部、およそ南東方向へ延びている部分を小天橋[注釈 1]または南砂州という。これら2か所が宮津湾と阿蘇海を分断し、切戸と文殊水道(天橋立運河)によって両水域がかろうじて繋がっている。切戸には大天橋というが架かる。また文殊水道には小天橋という橋が架かり「廻旋橋」として知られる[14]。さらに文殊水道を隔てて南側にある部分を第2小天橋という。これら3か所で天橋立の砂州部分をなし、全幅は20-170メートル、全長は大天橋と小天橋を合わせて約3.2キロメートル、第2小天橋を合わせると約3.6キロメートルである。北方にある傘松地区からは3地区を眺めることができ、これら4地区を合わせて都市公園法に基づく都市公園「京都府立天橋立公園」をなす[13][15]。文殊堂・智恩寺とその門前町のある天橋立南方を文殊地区という[16]

全体が外洋に面さない湾内の砂州としては日本で唯一のものであり、白砂青松を具現するかのごとく一帯には林が生え、東側には白い砂浜が広がる。この松は、人の手により植林されたものではなく、大部分が自然発生的に生えたものである[1]。1994年(平成6年)、「天橋立の松に愛称を付ける実行委員会」は、天橋立に生える老松、奇松12本の愛称を公募し「九世戸の松」「知恵の松」などが命名された。天橋立には「日本の道100選」に選定された京都府道607号天の橋立線が走っている。当路線は延長約3.2キロメートル、幅員3.5-12.1メートルであり、近畿自然歩道に指定されている[17]

成相寺のパノラマ展望所から見た宮津湾と天橋立

注釈

  1. ^ 京都府京丹後市久美浜町にある砂州(小天橋)とは別。
  2. ^ 砂嘴は、湾に面した海岸や岬の先端などから細長く突き出るように伸びている砂礫質の州である。一方砂州は、砂嘴が伸びて対岸にほとんど結びつくようになったものをいう。「5.海の作用による地形」(国土地理院)より。
  3. ^ 日本国事跡考京都大学)を参考に訓読したもの。
  4. ^ 地理Bの第5問の問3に天橋立の眺望の撮影地点を問う問題が出題。
  5. ^ 東方の雪舟観から北方の天上大パノラマ観まで、およそ時計回りに列挙してある。
  6. ^ 天橋立の中心部にある夫婦松までの距離。
  7. ^ 雪舟が『天橋立図』を描いた視点とは異なる。
  8. ^ 分かりやすくするために、オリジナル画像より回転(画像上方が西)、拡大及びトリミングを施す。

出典

  1. ^ a b c d e 浅井建爾 2001, pp. 130–131.
  2. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『日本三景』 - コトバンク(2015年4月12日閲覧。)
  3. ^ 日本三景 公式サイト”. 日本三景観光連絡協議会. 2015年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月12日閲覧。
  4. ^ 日本三景天橋立”. 京都府ホームページ. 丹後広域振興局建設部丹後土木事務所. 2015年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月12日閲覧。
  5. ^ 平成25年観光入込客数及び観光消費額調査結果概要”. 『統計京都』2014年9月号. 府観光課地域観光担当 (2014年9月). 2015年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月12日閲覧。
  6. ^ 文化庁. “日本遺産認定ストーリー一覧”. 「日本遺産(Japan Heritage)」について. 2020年11月11日閲覧。
  7. ^ 文化庁. “300年を紡ぐ絹が織り成す丹後ちりめん回廊”. 日本遺産ポータルサイト. 2020年11月11日閲覧。
  8. ^ 路線名一覧”. 丹後広域振興局. 2018年10月31日閲覧。
  9. ^ 新市の名称募集結果(国立国会図書館インターネット資料収集保存事業)” (PDF). 宮津市・加悦町・岩滝町・伊根町・野田川町合併協議会. 2018年10月31日閲覧。
  10. ^ a b ことばの溜め池”. 駒澤大学. 2018年10月31日閲覧。
  11. ^ 運歩色葉集』 - 国立国会図書館デジタルコレクション
  12. ^ 『詞林三知抄』(早稲田大学図書館 伊地知鉄男文庫). https://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/bunko20/bunko20_00222/bunko20_00222_p0037.jpg 2021年9月11日閲覧。 
  13. ^ a b 天橋立の概要”. 丹後広域振興局. 2018年10月31日閲覧。
  14. ^ 廻旋橋”. 一般社団法人 プレスマンユニオン. 2018年11月3日閲覧。
  15. ^ a b 天橋立を知って守ろう!”. 丹後広域振興局. 2018年11月4日閲覧。
  16. ^ 2 地域の現況地形等” (PDF). 京都府. 2018年11月2日閲覧。
  17. ^ a b c d e 京都府丹後土木事務所 (2008年7月). “天橋立を未来に引き継ぐために” (PDF). 京都府. 2018年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年11月4日閲覧。
  18. ^ 磤馭慮島(おのころ-じま)”. 『世界大百科事典』第2版. 2018年11月1日閲覧。
  19. ^ a b c 歴史と文化”. 天橋立観光協会. 2018年11月1日閲覧。
  20. ^ 吉井良隆 編『第二巻 えびす信仰事典』戎光祥出版、1999年。 
  21. ^ a b c d e f g 天橋立の形成過程について(京都府埋蔵文化財論集 第6集)” (PDF). 有井弘之. 2018年10月31日閲覧。
  22. ^ 神話と天橋立”. 大阪大学. 2018年11月2日閲覧。
  23. ^ 天と地を結ぶ伝説の架け橋”. 丹後一宮 元伊勢籠神社. 2018年11月2日閲覧。
  24. ^ 柳田國男『地名の研究』古今書院、1937年、45頁。 
  25. ^ a b c 陳活雄、岩垣 雄一「砂階の形成と侵食に関する研究 天橋立海岸について」『海岸工学論文集』1992年 39巻 p.371-375, doi:10.2208/proce1989.39.371, 土木学会。注記:論文タイトル中の「砂階」は「砂嘴」の誤りであるが、著作権者の表記をそのまま採用している。
  26. ^ a b 小谷聖史『天の橋立の生い立ち』自費出版、2005年、45頁。 
  27. ^ 天橋立|観光スポット”. 天橋立観光協会. 2018年11月6日閲覧。
  28. ^ 特別名勝 天橋立松並木を散策”. WILLER TRAINS(京都丹後鉄道). 2018年11月6日閲覧。
  29. ^ 日本三景「天橋立」幻想的に”. 京都新聞. 2020年10月25日閲覧。
  30. ^ 2 地域の現況地形等” (PDF). 京都府. 2018年11月3日閲覧。
  31. ^ みやづ歴史紀行(第14回)”. 宮津市. 2018年11月6日閲覧。
  32. ^ 日本国事跡考(京都大学貴重資料デジタルアーカイブ)”. 京都大学. 2018年11月5日閲覧。
  33. ^ 宮津天橋立の文化的景観”. 全国文化的景観地区連絡協議会. 2018年11月6日閲覧。
  34. ^ 天橋立世界遺産登録に係る取り組みについて”. 京都府. 2018年11月6日閲覧。
  35. ^ 【関西の議論】「天橋立」×「宇治茶」、世界文化遺産登録へ“京対決”つばぜり合い”. 産経新聞. 2018年11月6日閲覧。
  36. ^ a b c 深町加津枝、奥敬一「天橋立における歴史的景観の変遷と地域住民の景観評価に関する研究」『ランドスケープ研究』2004年 67巻 5号 p.813-818, doi:10.5632/jila.67.813
  37. ^ 『京の百景絵画集』京都府、1973年、108頁。 
  38. ^ “大学共通テストに天橋立や丹後ちりめん出題 地理Aと地理B”. 京都新聞. (2021年1月16日). https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/472238 2021年1月16日閲覧。 
  39. ^ 2021年度 大学入学共通テスト 地理B”. 毎日新聞. 2021年1月17日閲覧。
  40. ^ “天橋立 景観台無し 台風18号禍 流木、撤去めど立たず”. 京都新聞 (京都新聞社). (2013年9月24日). http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20130924000161 
  41. ^ 西垣友和 et al. 2011.
  42. ^ “天橋立に「カキ殻島」…大量繁殖で景観損なう”. 読売新聞. (2015年7月10日). オリジナルの2015年7月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150712144424/http://www.yomiuri.co.jp/eco/20150710-OYT1T50081.html 2015年7月11日閲覧。 
  43. ^ a b 天橋立の保全対策について”. 京都府. 2018年11月29日閲覧。
  44. ^ 日本三景をめぐる” (PDF). 参議院. 2018年11月5日閲覧。
  45. ^ 「白砂青松」広葉樹生えすぎて台無し!? 天橋立、3月に50本試験伐採”. 『産経新聞』. 2018年11月29日閲覧。
  46. ^ 天橋立の広葉樹伐採へ 京都府、増加で松の景観損なう”. 『京都新聞』. 2018年11月29日閲覧。
  47. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 海の京都 日本三景 天橋立 散策マップ”. 天橋立文珠繁栄会、天橋立府中観光会. 2022年9月21日閲覧。
  48. ^ 磯清水 Archived 2011年6月12日, at the Wayback Machine. - 名水百選 Archived 2011年9月26日, at the Wayback Machine. - 環境庁
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  50. ^ a b 同僚の悪ふざけで転落 天橋立「股のぞき」で50代男性が15メートル落下 落下事故での救助要請は初”. 関西テレビNEWS (2024年2月19日). 2024年3月9日閲覧。
  51. ^ 日本三景・天橋立『股のぞき』に大きく黄色の注意書き 同僚の悪ふざけで50代男性転落する事故発生 観光客は微妙な反応”. 関西テレビNEWS (2024年3月4日). 2024年3月9日閲覧。
  52. ^ 天橋立傘松公園”. 天橋立に行こう!. 丹後陸海交通. 2023年12月4日閲覧。
  53. ^ 天橋立ケーブルカー”. 天橋立に行こう!. 丹後陸海交通. 2023年12月4日閲覧。
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  55. ^ 京都から天橋立”. 天橋立に行こう!. 丹後陸海交通. 2023年12月4日閲覧。
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  65. ^ 天橋立レンタサイクル”. 天橋立に行こう!. 丹後陸海交通. 2023年12月4日閲覧。
  66. ^ 天橋立電動キックボード”. 天橋立に行こう!. 丹後陸海交通. 2023年12月4日閲覧。


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