命名権 命名権の概要

命名権

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 12:04 UTC 版)

2003年日本公共施設として初めて本格導入した東京スタジアム味の素スタジアム)

狭義としては単体で命名権を購入して行使したものを「命名権」と呼び、不動産などと共に購入した命名権は含まない。

人の命名権

世界の多くの地域では、または親から委託を受けた者が新生児命名している。

日本の人名

中世以降、日本ではその人の成長や変化に従い改名襲名する慣習があり、命名権について本人固有のものとする一般観念があった[1]。その後、明治維新を経て、居住移転の自由職業選択の自由に伴う社会の流動化と戸籍制度の確立と共に、個人の特定のための氏名の固定化が進み、同時に子に対する命名権が親固有の専権のような理解となっていった[2]

命名に関する現行制度として、戸籍法第50条第1項の「子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。」等の規定はあるが、民法家族法)には関連する明文規定がなく、命名権が誰にあるか、その法的根拠はどこにあるかは明確ではない[3]

命名権が誰にあるかの学説判例については、次のように体系化される[4]

命名権親権者固有説
子(命名される者)の命名権は親権者の親権の1つ(身上監護権)とする立場[5][6]。多くの学説と判例はこの立場を取る[5]
命名権子固有説(事務管理的代行説)
子の命名権は子本人の人格権の1つであるが、子は出生時に権利行使できないので、親権者がその子のために事務管理的に代行するという立場[7]
命名権子固有説(親権者代行説)
子の命名権は子本人の人格権の1つであるが、子は出生時に権利行使できないので、親権に基づき親権者が代行するという立場[7]

ただし、上記のいずれの立場を取るとしても、社会通念に照らして明らかに不適切な名や、名の持つ本来の機能を著しく損なう名を命名することは命名権の濫用として、戸籍事務管掌者(市町村長)は出生届の受理を許否することが許されるとされる[8]

また、棄児については、戸籍法第57条第2項において、市町村長がその棄児に対し氏名を付けなければならないとされている[9]

科学分野での命名権

元素については、名称が未確定な新元素はIUPACの命名法による元素の系統名で呼ばれる。IUPAC及びIUPAPによって発見が認定されると、発見者に命名権が発生し、IUPACによる承認を経て最終的に名称が確定する(未発見元素の一覧#発見の定義参照)。

天体については、小惑星についてのみ発見者に命名提案権が与えられており、IAUの小天体命名委員会による審査を経て命名される(小惑星#命名規則参照)。準惑星については命名規則は定められていないが、エリスの場合には発見者グループが提案した名称が採用されている。

生物学名は、記載者が命名権を持つ(学名#命名参照)。


注釈

  1. ^ 命名権を導入していない両国国技館福岡国際センターと扱いを統一する目的もある。
  2. ^ 球団運営法人自体は、広島相互銀行→広島総合銀行→もみじ銀行をメインバンクとしている。

出典

  1. ^ 田中 1964, p. 13.
  2. ^ 田中 1964, pp. 13–14.
  3. ^ 大村 2010, p. 107.
  4. ^ 井戸田 2003, p. 150.
  5. ^ a b 井戸田 2003, p. 151.
  6. ^ 前田, 本山 & 浦野 2017, p. 176.
  7. ^ a b 井戸田 2003, p. 152.
  8. ^ 井戸田 2003, pp. 155–156.
  9. ^ 田中 1964, p. 15.
  10. ^ 水野由多加「ネーミングは広告である : ネーミングライツの意義と公共性」『都市問題』第114巻第1号、2023年1月1日、54–63頁、doi:10.32286/00027809 
  11. ^ 京都会館命名権、ロームに 公募せず売却、市会委紛糾 2011年2月8日 京都新聞
  12. ^ NHK放送ガイドライン2015 (PDF) . 日本放送協会, pp.21-23, 2018年7月24日閲覧。
  13. ^ https://ci.nii.ac.jp/naid/120006368708/ 水野由多加(2017)「ネーミングライツ(命名権)についての断章」『関西大学社会学部紀要』49(1), 205-217. https://ci.nii.ac.jp/naid/120006624697  同(2018)「ネーミングライツ(命名権)についての断章(続)」『関西大学社会学部紀要』50(1), 61-74.
  14. ^ 正平調 - 神戸新聞2011年2月28日
  15. ^ 京都市美術館 命名権募集 19年度リニューアル開館 50年で50億円 /京都[リンク切れ] 毎日新聞 2016年9月6日
  16. ^ 京都市美術館 京都市○○○美術館? 命名権売却先を募集 市、50年50億円希望/「公共の文化財」異論も 毎日新聞 2016年9月30日
  17. ^ 命名権を売却、「京都市京セラ美術館」に 総額50億円 - 朝日新聞、2016年10月7日
  18. ^ 八王子市:命名権売却「オリンパスホール」好調だが… - 毎日新聞2011年11月17日
  19. ^ a b c 徹底研究 札幌ドーム<6> - 読売新聞北海道発2011年12月22日
  20. ^ 「鳩サブレー海岸」にはしません 豊島屋、命名権購入も名前はそのままに - ハフィントンポスト・2014年5月15日
  21. ^ 呉市に「鶴岡一人記念球場」 呉二河球場の愛称に名将の名 - スポニチアネックス、2019年4月26日、19時16分配信。
  22. ^ 鈴鹿のシケインがネーミングライツで名称変更,オートスポーツ,2014年3月1日
  23. ^ 鈴鹿サーキット、武蔵精密工業と二輪用シケインのネーミングライツ契約を締結,オートスポーツ,2018年4月12日
  24. ^ 「明治神宮野球場 ヒップバーシート」名称変更のお知らせ - 東京ヤクルトスワローズ
  25. ^ 2022-23シーズンオフィシャルスポンサー新規契約締結のお知らせ レバンガ北海道 2022年10月25日
  26. ^ 中国、政権交代で列車名も変更 「和諧」が「聯通」に
  27. ^ [1]
  28. ^ Bリーグ初!レバンガ北海道ホームゲームにおける「タイムアウトネーミングライツ」契約のお知らせ レバンガ北海道 2022年10月13日
  29. ^ BCリーグ命名権(ネーミングライツ)について - BCリーグニュース(2014年2月25日)
  30. ^ ターキッシュ エアラインズとネーミングライツパートナー契約』(プレスリリース)日本プロバスケットボールリーグ、2014年9月25日http://bjleague.livedoor.biz/archives/51961110.html 
  31. ^ 明治安田生命保険相互会社とJリーグタイトルパートナー契約を締結』(プレスリリース)日本プロサッカーリーグ、2014年12月16日http://www.jleague.jp/release/article-00006256/2016年2月11日閲覧 
  32. ^ リーグ名変更について - 関西独立リーグ(2020年5月1日)
  33. ^ 【一般財団法人さわかみ財団様とネーミングライツ契約締結(継続)】 - 関西独立リーグ(2021年4月1日)2021年4月1日閲覧。
  34. ^ 九州アジアリーグ公式サイト(2021年9月13日閲覧)
  35. ^ (短信)BC新潟、新球団名発表 オイシックスが命名権日本経済新聞2023年10月27日 2:00
  36. ^ 2軍参入ハヤテの球団略称は「くふうハヤテ」命名権取得した会社代表の穐田誉輝氏の妻は菊川怜日刊スポーツ2024年1月16日19時2分
  37. ^ 『よみがえれ!ライオンズ 第一部 揺れる球団⑦ 【幻影】“市民球団”カープが証明 船頭多くして崩壊』 - 西日本スポーツ・1978年10月3日。
  38. ^ 富山GRNサンダーバーズ命名権発表のお知らせ 富山GRNサンダーバーズ公式サイト 2015年2月26日配信
  39. ^ 株式会社滋賀ユナイテッドのネーミングライツパートナー契約締結のお知らせ”. ベースボール・チャレンジ・リーグ (2019年1月15日). 2019年11月2日閲覧。
  40. ^ 「ごまたまご歩道橋」…!? 名古屋に“愛称付き”の歩道橋が一番多い理由とは? - BIGLOBEニュース2021年6月21日
  41. ^ 歩道橋ネーミングライツパートナー事業について”. 名古屋市緑政土木局. 2021年3月17日閲覧。
  42. ^ 各種機能のネーミングライツ - KinagaCMS8”. KinagaCMS8. 2022年6月1日閲覧。
  43. ^ (日本語) 【衝撃の名前】革命的新ビジネス!!命名権オークション開廷!!!, https://www.youtube.com/watch?v=8zI9491VMY0 2022年9月15日閲覧。 
  44. ^ (日本語) このチャンネルの命名権オークションを開催します。, https://www.youtube.com/watch?v=2ndzcwXWEoM 2022年9月15日閲覧。 
  45. ^ (日本語) このチャンネルの名前が決定しました。, https://www.youtube.com/watch?v=-fu9WpkYdws 2022年10月25日閲覧。 
  46. ^ “経営苦境の札幌ドーム 年間2億5000万円で命名権募集”. 北海道新聞社. (2024年1月9日). https://www.doshinsports.com/article_detail/id=13417 2024年2月26日閲覧。 
  47. ^ a b 市有施設の命名権者(ネーミングライツスポンサー)を募集について - 伊那市(2017年9月1日)






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