呪術 呪術と医療

呪術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/21 15:24 UTC 版)

呪術と医療

呪術が医療として機能していたことは民間医療などにもその痕跡がみられる。温泉冷泉治療なども経験的な医療効果が信じられヨーロッパや日本などでも利用され、特定の信仰と結びつき呪術的要素を持っているものもある。特に日本においては、「詣で」と宿場温泉地が結びつき、湯治はもちろん宿泊や入湯も払いであった。沖縄には蕁麻疹、かさ(皮膚病)、魚骨が喉にささったときの、ハブ除けの、悪霊が付いた時の、くしゃみの時の呪術があった。くしゃみをすると霊魂が外に出るという考えがあった。

アフリカの一部の国では、(植物にかぎらない)の生成と薬草の使用は生活の上で重要な位置を占め、それに伴いその知識を独占的に持つシャーマンが存在する。シャーマンは、現在、呪術医として分業するものも多く、薬草においては、"呪術"に使用されていた物品を科学的に検討してみたところ薬理効果があることが、実証されているという事例もあり、その知識と薬草の提供に対し、提携し契約している製薬会社も存在し実際に新薬の開発に貢献している。

東洋医学における漢方薬なども近代科学とは別の由来を持つという意味では同様の事例である。東洋医学においては歴史的に蓄積されてきた薬草の知識や陰陽五行などの思想体系が背景にある[4]

また、心理学的な作用が結果として効果を発揮していると見られるケースや、行為者が意識的に心理効果を狙っているケースもある。暗示や催眠によるものなどである。このような心理効果の活用例には「プラセボ」と呼ばれる薬を用いた治療方法が挙げられる[5]

占いと祈祷

呪術は基本的に神霊が祈祷師に憑依し、神託としての予言預言啓示、託宣を垂れることをいい、これは、ユダヤ教キリスト教イスラム教などでも同様に観察される。ヘブライ語で預言を垂れる、という意味のヒッティーフは、元「(涎を)垂らす」の意であり、サムエル記では忘我状態で神の言葉を述べる聖者を指して使われるが、日本の神社神道(かんなぎ)といわれる神主巫女が、神の憑依体(依り代)となって神の御言を述べる。同様に神託を伝える儀式として亀甲占い年始神事、その簡易としての「おみくじ」等の占いがある。なお柳田國男は、年始に行う花札百人一首のようなカードゲームを、「占術の零落した物」とする。同様にサムエル記上14章41節では、預言者サウルが胸ポケットに入れたウリムとトンミムと呼ばれる物を無作為に取り出して、神意を問うシーンがある。結局は原始宗教、宗教または、それによって律せられる土着の習俗において、神霊を信じ、その神霊に祈る(祈祷)ことで神頼みをし、その啓示を人生の指針として身をゆだねるというのは、占いと変わらないともいえる。このように現在の宗教の多くは原始宗教からの「機会」を神の啓示とする呪術的要素を備え継承している。

呪術と社会

その発祥の原因として、集団としての人々の暮らしの中で、諍いや一年をどう過ごすかまたは、どうなるのかといった社会や個人の不満や不安であり、その緩衝としてシャーマンが存在する。具体的には寺社が地域社会の中心であったように、現在のヨーロッパの集落のほとんどが、教会を中心とした街づくりになっており、これは呪術を行うシャーマンが集落の中心にあった名残と考えられる[要出典]

個人間や家族間の諍いとして処罰や依頼によりのろい(呪い)をかけたとしても実害はなく心理的な抑制効果でしかなく、また成人通過儀礼などの呪術も子供から大人への決意を促す効果をもたらすものである。このように呪術は、裁判制度がない時代や地域の人治としての権威であり脅威としての力であったと考えられる。また個人の不安や不幸を取り除く、静めることも集団社会には必要であり、そのままにすれば、妬みや嫉みなど、反社会行為に発展しかねない、実際には効果がなくとも、祓いを行い不安を取り除けば、相互扶助の関係の中で、不利益より益になると考えられる。

狩りや漁りや農耕の願いは豊饒であり、その土地が豊かになって実りの多いことが、その社会集団の願いである。それに対し集団の社会不安とならないようにするための、指針の提示が必要になり、それがその集団においての祈祷による祈願祈念になり、占いによる大概が1年の禍福の予想をしていたと思われる。このことはどの世界でも呪術の延長である年単位の中での時節季節による行事の繰り返しから見て取れる。

呪術と地域文化

  • 沖縄地方では、魔除けとまじないは盛んであり、フーフダ(符札、まじないを書いた木札や紙札をはる)、ハブよけのまじない、悪霊がついた時のまじないなどが行われている。例えば、沖縄ではくしゃみをするとが出てしまうと考えられており、それを取り戻すためのまじないがある。また、白くて固い物には魔除けの力があると信じられており、シャコガイスイジガイ、珊瑚や塩などを置いて魔を遠ざけようとする。石敢当シーサーなども魔除けである[6]
  • 香港では、現在も「打小人」(ダーシウヤン)と呼ばれる、紙で作った人型を靴で叩いて行う黒呪術を代行することによって、報酬を得ている人たちがいる。
  • 古くから中国人華僑華人を中心に信奉され、日本にも古くから伝わる陰陽五行思想としての「風水」においても、占い・呪術的な思考様式と精緻な理論的な思考様式とが混在している。

これらは地域の文化思想と密接に結びついており、場合によってはタブーのような行為にも関連する。タブーを敢えて犯すことで災いを発生させられるという思想や、あるいはタブーによる祟り呪い(まじない)の効果で無効化しようとする行為が挙げられる。




  1. ^ 吉田禎吾「呪術」『文化人類学辞典』弘文堂、1987年
  2. ^ 前掲辞典
  3. ^ 『野生の思考』(1962年
  4. ^ これら東洋医学の知識体系は、カイロプラクティックなど西欧化されたものもある。
  5. ^ 現代の西洋医学の医師が患者にプラセボを処方した時は、それは医師の"技術"のひとつと呼ばれ、医師の"呪術"と呼んでは不適切なように、発展途上国のヒーラーが医薬品が無い中で善意からプラセボを住民に処方しているのを"呪術"と決め付けることもまたあまり適切ではないであろう[要出典]
  6. ^ 山里純一『沖縄の魔除けとまじない』第一書房、1997年


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