九段線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/01 06:52 UTC 版)
九段線の位置
「九段線」が引かれる位置は、時計回りに以下の通り。
- バシー海峡
- 北ルソン島トラフ
- マニラ海溝
- スプラトリー諸島(中国側呼称:南沙群島)とフィリピンの間
- パラワントラフ
- スプラトリー諸島とマレーシアの間
- スプラトリー諸島とインドネシア領ナトゥナ諸島の間
- スプラトリー諸島とベトナムの間
- パラセル諸島(中国側呼称:西沙群島)とベトナムの間
歴史
中華民国の「"十一段線"」
第二次世界大戦の後、中華民国海軍は南シナ海海域の島嶼を使用し始め、水文学調査を行った[6]。1947年12月1日、中華民国の内政省地域局が作成し、国民政府が議決・公布した『南シナ海諸島新旧名称対照表』及び『南シナ海諸島位置図』には、11段のU字線が中華民国の領海として取り囲まれるように描かれていた。
中華人民共和国成立(1949年)前の1947年に中華民国が同様の目的で、地図上に引いた11本の線(十一段線)から2線を除去し、1953年に新たに書き直されたものである[7]。中華民国、つまり現代の台湾では、馬英九の国民党政権は2014年まで十一段線の主張を継続していたが[8]、2015年以降の民主進歩党政権からは一転し、「十一段線」について主張していない。
中華人民共和国の「九段線」
1953年以降、中華人民共和国がベトナム戦争当時支援していた北ベトナム軍のトンキン湾内にある島でのレーダー建設などの活動を妨げないよう、自国の安全保障政策と整合させるべく前述の十一段線のうちからトンキン湾付近の点線2つを除去し、新たに九段線へと書き直された[9]。
意義
九段線に対する法的解釈は大体以下の4つがある[10]。
- 島嶼帰属の線:線内の島嶼、東沙群島、南沙群島、中沙群島と西沙群島を含み、及び周辺海域は中国に属しており、中国がこれを管轄し、統制する。
- 歴史的な権利の範囲:線内の島、礁、浅瀬、砂洲は中国領土であり、内水以外の海域は排他的経済水域と大陸棚となる。
- 歴史的な水域線:中国は線内の島、礁、浅瀬、砂洲及び周辺海域の歴史的権利を有するのみならず、線内の全ての海域が中国の歴史的な水域とされる。
- 伝統疆界線(国境線):線内の島、礁、浅瀬、砂洲及び周辺海域は中国に属しており、線外の区域は公海または他国に属する。
- ^ a b 福島香織 (2012年12月5日). “中国の「俺様地図」にビザスタンプを押していいか”. 日経ビジネス (日経BP) 2017年8月5日閲覧。
- ^ a b “中国の南シナ海支配を否定 仲裁裁判所「歴史的権利なし」と判断”. 『読売新聞』 2016年7月13日閲覧。
- ^ a b “中国の主張「九段線」認めず 仲裁裁判所判決”. 『毎日新聞』 (毎日新聞社) 2016年7月13日閲覧。
- ^ “中国主張の南シナ海境界線「根拠無い」 仲裁裁判所判決”. 『朝日新聞』 (朝日新聞社) 2016年7月13日閲覧。
- ^ a b c “南シナ海 国際仲裁裁判 中国に厳しい内容に”. NHKニュースWEB (日本放送協会) 2016年7月13日閲覧。
- ^ 専門家:南中国海に公海は存在せず 人民日報 人民網日本語版 2011年11月23日
- ^ “「南沙諸島」の領有権を中国が主張する理由”. Foresight. 新潮社 (2015年6月4日). 2015年7月13日閲覧。
- ^ 竹内孝之. “南シナ海と尖閣諸島をめぐる馬英九政権の動き”. JETRO. 2015年9月15日閲覧。 “台湾に移転したのちの「中華民国」も、今日に至るまで「十一段線」の主張を堅持している。”
- ^ 南シナ海の安全保障と戦略環境
- ^ 中国と周辺国家の海上国境問題
- ^ ベトナム語のHoàngは「黄」の語義を持つことに留意。
- ^ ベトナム語のTrườngは「長」の語義を持つことに留意。
- ^ 南シナ海問題をめぐるASEAN諸国の対立
- ^ アジアに回帰する米国
- ^ ベトナム過熱「中国提訴を」南シナ海領有権めぐり、フィリピンに同調 MSN Archived 2013年4月11日, at the Wayback Machine.
- ^ “フィリピン、領有権問題で中国に立ち向かう すご腕の米法律家雇い国際機関に提訴” (2013年10月17日). 2016年7月14日閲覧。
- ^ a b "all of the high-tide features in the Spratly Islands (including, for example, Itu Aba, Thitu, West York Island, Spratly Island, North-East Cay, South-West Cay) are legally “rocks” that do not generate an exclusive economic zone or continental shelf." “THE SOUTH CHINA SEA ARBITRATION(中比南シナ海仲裁)p.10”. 常設仲裁裁判所 (2016年7月12日). 2016年7月14日閲覧。
- ^ “【緊迫・南シナ海】蔡総統「裁定は台湾の権利傷つけた」 南シナ海に軍艦を派遣 ”. 『産経新聞』. (2016年7月13日) 2016年7月17日閲覧。
- ^ “台湾、南シナ海に軍艦派遣”. AFP. (2016年7月13日) 2016年7月17日閲覧。
- ^ “仲裁裁判決、「一切認めない」立法院が抗議声明/台湾”. 中央通訊社. (2016年7月16日) 2016年7月17日閲覧。
- ^ “台湾側が日台海洋協力対話を延期、島めぐり対話紛糾避けたか”. 『産経新聞』. (2016年7月26日) 2016年7月26日閲覧。
- ^ “ドゥテルテ氏「誇示しない」=比新政権、仲裁判決の対応協議”. 時事通信 (2016年6月30日). 2016年7月17日閲覧。
- ^ “【緊迫・南シナ海】フィリピン、特使任命も 中国と2国間協議に意欲”. 『産経新聞』 (2016年7月15日). 2016年7月17日閲覧。
- ^ “比大統領、ラモス氏に訪中依頼=南シナ海問題対話へ特使”. AFP (2016年7月14日). 2016年7月17日閲覧。
- ^ “対話へ比特使「歓迎」=判決前提とせず-中国”. AFP (2016年7月15日). 2016年7月17日閲覧。
- ^ “88歳のラモス元比大統領、南シナ海特使に”. 産経新聞 (2016年7月24日). 2016年7月26日閲覧。
- ^ “【緊迫・南シナ海】ドゥテルテ大統領が仲裁裁定を支持 中国への刺激避け、言及はわずか30秒”. 『産経新聞]』 (2016年7月26日). 2016年7月26日閲覧。
- ^ “仲裁判決棚上げ合意 南シナ海、対話再開 ”. 毎日新聞 (2016年10月20日). 2016年11月1日閲覧。
- ^ “比漁民に「適切な措置」=スカボロー礁で操業容認-中国 ”. 時事通信 (2016年10月31日). 2016年11月1日閲覧。
- ^ “中国が、南シナ海にフィリピン領の人工島を造成 ”. ParsToday (2016年10月27日). 2016年11月1日閲覧。
- ^ “南シナ海領有権巡る判決は「ただの紙切れ」…ドゥテルテ氏、中国との緊張緩和狙いか”. 読売新聞. (2021年5月6日). オリジナルの2021年5月7日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「軍艦、兵士、戦闘機を派遣 ナトゥナ諸島付近 インドネシア、中国船に対抗」『じゃかるた新聞』2020年1月8日(2020年7月15日閲覧)
- ^ 南シナ海巡る中国主張、米が公式に否定 「完全に違法」日本経済新聞ニュースサイト(2020年7月14日)2020年7月15日閲覧
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