ポリプロピレン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 09:23 UTC 版)
改質
化学的変性
- 無水マレイン酸変性ポリプロピレン - 無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン。接着性などの改良用途。
- 塩素化ポリプロピレン - バンパー用プライマー(下地塗り用の塗料)や印刷インキのバインダーの用途。
コンパウンド
既存のポリマーや充填材をブレンドすることで改質された新しい組成物を得る。
- エラストマー変性 - EPDM、EPR、SEBS(スチレン-ブタジエンブロック共重合体)などのエラストマーにより耐衝撃性を改良する。
- フィラー(充填材)入り - ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウムなどで強化する。
- TPV (ThermoPlastic Vulcanizate) - 架橋されたエラストマーとの熱可塑性ブレンド。エラストマーと動的架橋することで得られる。
用途
ポリプロピレンは、建築・建設資材や家庭用品として容器、おもちゃ、スポーツ用品、電気器具、カーペット、包装材料、繊維、文具、プラスチック部品、実験器具、スピーカーのコーン(振動板)、コンデンサの誘電体、自動車部品、紙幣など、様々な用途に用いられる。
繊維
素材形態としては吸水性が無い上に、染色性も悪く、光にもやや不安定であるために、衣料繊維として用いられることは少なかった。ただ、ウィッキング 性に優れているため、汗などを速く蒸発させる速乾性素材として使用されるようになってきた。例えば、以下のような用途に用いられる。
- カーペット - ニードル・パンチ
- 延伸テープ - カーペットの裏打材、ターポリン、土嚢の袋、肥料・飼料などの袋、フレキシブルコンテナバッグ、人工芝、包装用のひも(通称:PPバンド)
- 不織布 - 使い捨ておむつ、生理用品、医療用衣料、エアーフィルター
- ロープ - ポリプロピレンに吸湿性がなく、比重も軽いため、水に沈まない性質を利用して、主に海洋で使用される。
- ネット - 漁網、ジオグリッド、防虫ネット
- 速乾性の衣料用 - ポリプロピレンは紫外線で劣化し易いこともあり、主に下着として用いられる。例えば、アンダーシャツ、Tシャツ、靴下など。
射出成形品
ポリプロピレンは熱可塑性が高く、成型も容易なため家電製品、自動車、電子製品、家庭用品など広く用いられている。
- 家電製品 - 食器洗い機、洗濯機、コーヒーメーカー、ミキサー
- 一般日用品 - 食品容器(特に密閉容器。例:タッパーウェア®)、屋外家具、スーツケース、アイスクーラー、プランター、衣装ケース、ごみ箱やバケツなどの雑貨品、CDやDVDなどのケース
- 工業用途 - パレット、コンテナ
- 医療用途 - 注射器シリンジ
- 包装容器 - 食品用容器、飲料容器のキャップ、ヒンジキャップ
- 自動車内装 - ドアパネル、インストルメントパネル、ピラー、トリム部品など
- 自動車外装 - バンパー、サイドモール、エアスポイラー
- 自動車エンジンルーム - バッテリーケース、ウオッシャー液タンク、ワイヤーハーネス
フィルム・シート
- シート、または、シートからの2次加工品 - 食品用トレイ、飲料容器、プラスチック段ボール、養生用シート、防水屋根シート、文具立て、PTP包装のプラスティック部分
- 二軸延伸フィルム(BOPP: Biaxially Oriented PolyPropylene) - 煙草容器包装、スナック食品包装、パン包装、菓子包装、野菜包装、コンデンサの誘電体
- 無延伸フィルム - レトルトパウチ、輸液用のバッグ
その他
- コルゲートパイプ
- 電線ケーブルの被膜
- 光ファイバーの被覆
- 発泡ビーズ
- ポリプロピレンフォーム
- ポリマー紙幣 - オーストラリア・ドル札、イスラエル・NIS札
規制
食品接触
日本国は、食品衛生法により、「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着して人の健康を損なうおそれがある器具若しくは容器包装又は食品若しくは添加物に接触してこれらに有害な影響を与えることにより人の健康を損なうおそれがある器具若しくは容器包装は、これを販売し、販売の用に供するために製造し、若しくは輸入し、又は営業上使用してはならない」と定めている。 この法律をもとに、食品包装用プラスチックの安全性を確保するための具体的な規格として「食品添加物等の規格基準」が定められている[14]。
ポリオレフィン等衛生協議会(JHOSPA)は、自主規制を設け、これに適合したポリオレフィン樹脂に対して登録番号を付与し「碓認証明書」を発行している。
日本国外で使用される場合も、それぞれの国の法規制に合致する必要がある。ただ、一般にアメリカ食品医薬品局(FDA)の基準(21 CFR Sec. 177.1520 - Olefin polymer[15])が要求されることが多い。
消防
日本においては、難燃化されていないほとんどのポリプロピレン樹脂は、消防法において、指定可燃物(合成樹脂類)[16] (指定数量:3000 kg) に該当する。貯蔵及び取り扱いには、市町村の条例の定める技術上の基準に従う必要がある。
注釈
- ^ 耐薬品性に優れている点を活かしている。特に実験器具では、この性質が遺憾なく発揮される。
- ^ 強度がある上に、比重が軽いことを活かしている。スピーカーのコーン(振動板)は、なるべく軽い方が音の放射に有利である。しかし、強度が低いと壊れてしまう。
- ^ エチレンを重合させることで、ポリエチレンが合成される。
出典
- ^ 世界の石油化学製品の今後の需給動向(2013年4月30日)
- ^ 石油化学工業会, 統計資料
- ^ Polymer Pioneers p. 76
- ^ Innovene PP
- ^ エクソン・モービルのプロセス
- ^ 住友化学の気相プロセス
- ^ UNIPOL PP
- ^ Horizone PP
- ^ Borstar PP
- ^ Hypol
- ^ Spheripol
- ^ Spherizone
- ^ Novolene
- ^ 厚生省告示370号(昭和34年厚生省告示370号)
- ^ Code of Federal Regulations Title 21 Sec. 177.1520 Olefin polymers
- ^ 危険物の規制に関する政令 - e-Gov法令検索
- ^ 関税定率法 - e-Gov法令検索別表(関税率表)第39類注4
- ^ “輸入統計品目表(実行関税率表”. 税関. 2020年1月15日閲覧。
- ^ 日本プラスチック工業連盟『樹脂ペレット流出防止マニュアル』1993年2月
- ^ 一般社団法人プラスチック循環利用協会『2018年 プラスチック製品の 生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況』2019年12月
- ^ コークス炉化学原料化
- ^ ポリオレフィンフィルムのリサイクル事例
- ^ 一般社団法人プラスチック循環利用協会 『プラスチック製容器包装の処理に関するエコ効率分析』 2006年9月
- ^ CO2換算量共通原単位データベース
- ^ Waste Online Archived 2010年7月22日, at the Wayback Machine.
- ^ 経済産業省,3R政策
- ^ COMMON CHEMISTRY®
- ^ 化学物質総合情報提供システム(CHRIP)
ポリプロピレンと同じ種類の言葉
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