ハクビシン 日本におけるハクビシン

ハクビシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/08 02:02 UTC 版)

日本におけるハクビシン

日本では本州から九州にかけて断続的に分布しており、日本での初めての確実な記録は1943年静岡県浜名郡での狩猟記録で、1952年以降は国の狩猟統計にも登場している[12]。静岡県では1965 - 1966年に急増したとされ[3]、1972年時点での分布に関するアンケート調査がある[13]関東地方では1958年の神奈川県山北町での記録が初めてとなる[8]東京都では1980年に八王子市で初めて報告され、現在でも山手線の線路沿い等で、夜間に目撃されることがある[8]。北海道の奥尻島では1985年に捕獲記録があり、2002年になって再び生息が確認されている[14]長野県では1976年に県の天然記念物に指定されたことがある(1995年に解除)[8]

これら日本のハクビシンが在来種なのか外来種なのかは確定していない[15][16]江戸時代に記録された「雷獣」とされる動物の特徴がハクビシンに似ているため、江戸時代には既に少数が日本に生息していたとする説や[17][7][18]、明治時代に毛皮用として中国などから持ち込まれた一部が野生化したとの説が有力である[19]。根拠としては、国内においてジャコウネコ科の化石記録が存在しないこと[5]中国地方九州に連続的に分布していないこと[19]が挙げられる。ただし、導入個体群の原産地や詳細な導入時期に関しては不明である[5]

日本産と東南アジア産の個体のミトコンドリアDNAシトクロムbの分子系統解析では、日本産の個体はそのいずれもが東南アジア集団のものとは一致しないが、2つが台湾集団に見いだされる6つの遺伝子型のうちの2つと同一であること、西日本で優占する遺伝子型が台湾東部に、東日本で優占する遺伝子型が台湾西部に由来することが示されている[16]

環境省は、「移入時期がはっきりとしない」として、明治以降に移入した動植物を対象とする外来生物法に基づく特定外来生物に指定していない。このため、アライグマと異なりハクビシンは駆除対象とはならないが、鳥獣保護法により、狩猟獣に指定されている。

住宅被害などのために、神奈川県川崎市では2009年(平成21年)度に市民からの相談を受け46頭を捕獲するなどの例はあるものの、捕獲には民家に巣を作ったり果樹園を荒らすなどの実害を理由とした、鳥獣保護法に基づく都道府県知事などの許可(「有害鳥獣」認定)が必要で、「住宅街をうろついている」など民間人の予防的捕獲は許されていない[20]


  1. ^ a b c d e Duckworth, J.W., Timmins, R.J., Chutipong, W., Choudhury, A., Mathai, J., Willcox, D.H.A., Ghimirey, Y., Chan, B. & Ross, J. 2016. Paguma larvata. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T41692A45217601. doi:10.2305/IUCN.UK.2016-1.RLTS.T41692A45217601.en. Downloaded on 20 May 2017.
  2. ^ a b c d W. Christopher Wozencraft, "genus Paguma," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Page 540.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 祖谷勝紀・伊東員義 「ハクビシン属」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、96-97頁。
  4. ^ a b c d 米田政明 「ハクビシン」『日本の哺乳類 改訂2版』阿部永監修、東海大学出版会、2008年、90頁
  5. ^ a b c d S. D. Ohdachi, Y. Ishibashi, M. A. Iwasa, and T. Saitoh (2009-07). The Wild Mammals of Japan. SHOUKADOH. ISBN 978-4-87974-626-9 
  6. ^ 出典(電線) : 電線をわたるハクビシン
  7. ^ a b c d e f g h 出典 : ハクビシンの基礎知識 (PDF) - 農林水産省
  8. ^ a b c d e 鈴木欣司『日本外来哺乳類フィールド図鑑』旺文社、2005年7月20日。ISBN 4-01-071867-6 
  9. ^ “ハクビシン駆除に有効な6つの方法” (日本語). タスクル | 暮らしのお悩み解決サイト. https://taskle.jp/media/articles/225 2018年10月3日閲覧。 
  10. ^ 種生物学会『外来生物の生態学 進化する脅威とその対策』文一総合出版、2010年3月31日。ISBN 978-4-8299-1080-1 
  11. ^ コロナウイルスとは”. 国立感染症研究所 (2020年1月10日). 2020年2月2日閲覧。
  12. ^ 田口洋美「狩猟・市場経済・国家―帝国戦時体制下における軍部の毛皮市場介入」赤坂憲雄編『現代民俗学の地平2 権力』朝倉書店、2004年
  13. ^ 古屋義男静岡県のハクビシン 1.県内の分布、哺乳動物学雑誌,1973年 5巻 6号 p.199-205, doi:10.11238/jmammsocjapan1952.5.199
  14. ^ 北海道ブルーリスト A3 ハクビシン
  15. ^ 平成25年度 第2回狩猟鳥獣のモニタリングのあり方検討会(哺乳類)議事概要
  16. ^ a b 増田隆一ハクビシンの多様性科学」(PDF)『哺乳類科学』第51巻第1号、2011年、188-191頁、2011年10月2日閲覧 
  17. ^ 千石正一千石正一 十二支動物を食べる 世界の生態文化誌 〜「寅」を食べる〜食う虎 食わぬ虎ダイヤモンド・オンライン、2008年2月15日、宮本拓海Vol. 367(2007/7/1)〔今日の動物探偵!〕 本所七不思議の謎を解く! その2 いきもの通信
  18. ^ 宮本拓海は、ハクビシンが江戸時代には日本にいたことを示す例として、民話『分福茶釜』に登場する「綱渡り芸をするタヌキ」が、ハクビシンではないかと指摘している(タヌキには綱渡りは不可能なため)『ハクビシンに出会ったならば』(東京タヌキ探検隊!)
  19. ^ a b 村上興正・鷲谷いづみ(監修) 日本生態学会(編著)『外来種ハンドブック』地人書館、2002年9月30日。ISBN 4-8052-0706-X 
  20. ^ 日本経済新聞 2010年4月30日 夕刊3版17面


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