スパム (メール)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 14:19 UTC 版)
内容など
宣伝
有料ないし無料の会員制出会い系サイト、アダルトサイト、ネズミ講(英: Make Money Fast)、マルチ商法、株取引[注 1]、商品の販売、ディプロマ・ミル(学士号・修士号・博士号など学位の販売)、オンラインカジノ(日本からの利用は違法)、ダイエット・アダルト関連の医薬品類の販売など。出会い系サイトの宣伝がきっかけで、青少年が性犯罪に巻き込まれるケースもある。海外発とみられるものも多い。広告宣伝メールでは、オプトアウトすることは逆効果である。
また、社会問題に関する訴えや、思想宣伝的な意図をもって流布される内容のスパムもある。
詐欺
2003年頃から、有料成人向け番組、ツーショットダイヤル、ダイヤルQ2、有料出会い系サイト等、実際には利用していない有料情報サービスの利用料金を請求する、悪質な架空請求詐欺メール、ワンクリック詐欺メール、フィッシング詐欺メールといったものが増加し、社会問題になっている。
アドレスの収集と有効性確認
送信するアドレスについては、ウェブページや電子掲示板などに掲出されているアドレスを収集ロボットで大量収集したものが用いられることが多い。あるいは、懸賞応募などでユーザーが自ら登録したものや、何らかの契約業務に関連して収集された個人情報の外部流出によるケース、無線の識別信号を取り入れた物やニフティのIDのように単純な英数字且つ書式に規則性のあるアドレスに、使用ユーザーの有無に関係なく作成して無差別に送付するものもある。
このメールアドレスリストには主に2種類あり、「無差別に収集され、現在は既に無効となっているものも多く含まれているリスト」と「有効であり現在使われていると確認されたメールアドレスのリスト」がある。後者のリストの方が人の目にスパムを触れさせられる可能性が高く、スパマー、あるいは送信者はリスト中の有効なアドレスを選び出すことに腐心している。
リストの中から有効なアドレスを選び出す方法としては、主に下記の3つがある。
- 送信拒否方法や苦情の送付先が書かれている。
- 「配信停止はこちら」などの文句とともに返信用のメールアドレスが記載されている場合が多い。ここに連絡をすると、「現在有効なメールアドレスであり、このアドレスの持ち主はスパムメールをきちんと開いて読んでいる」と判断される。この手の連絡先は、そういう「返信」を期待して記載されている場合が大半であり、連絡したとしてもスパムメールの配信が止まる保証は全く無いどころか、メールアドレスが分かったことで、逆にスパムメールを大量に送り付けて来ることが殆どである。
- サイトへの広告掲載や質問を装って返答させ、それをリスト化する業者も存在する。
- スパム内のヘッダや本文に、スパムメール毎の固有IDを含ませたウェブサイトへのURLやメールアドレスを設定する。
- HTML形式のメールとなっており、特定のURLの画像を参照するように記述されている。
- URLに固有の識別子が割り当てられている場合は、どのメールアドレスに送信したものかが判別される(このような画像ないしHTMLコードはWebビーコン、Webバグなどと呼ばれる)。
前二者に対しては連絡しない・URLをクリックしないという自衛手段で防ぐことができる。ウェブビーコンでは、メール本文の画像を開いた時点で情報が判別される危険があるが、「HTML形式のメールは開かず即刻削除する」といった強硬な対策を取ると、スパムではない通常の電子メールも削除してしまうリスクがある。そのため、メーラーの中には「イメージブロック」と呼ばれる、画像の表示を禁止する機能が実装されているものもある。
スパマーとゾンビPC
スパムメールを送信している者(spammer、スパマー)は“ゾンビ”と呼ばれる不正侵入されたシステムで構成された巨大な軍隊のようなものを統制している。スパマーのコミュニティは異常なほど高度に組織化されており、フィルターを通り抜ける方法を開発する者、マシンを乗っ取りゾンビにしてしまう者、そのマシンの利用権を切り売りする者もいる。ゾンビシステムの数は数千台にのぼると見られている[5]。景山忠史は、著書の中で全迷惑メールの40%以上はゾンビPCから送信されているのではないかとしている[6]。
法律による取り組み
日本においては、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律・特定商取引に関する法律等によりスパムの送信方法に対する規制が行われている[注 2]。規制内容は主に次の通りである。
- 原則として、広告・宣伝メールを送信することに対して同意した受信者以外に対しては、特定電子メールを送信してはならない。(オプトイン)
- 送信者が、送信拒否の通知をした者に対して、特定電子メールの送信をすることの禁止(オプトアウト)。(ただし上述の通り、送信拒否の通知はメールアドレスの有効性を知らしめるもので、かえって逆効果である。)
- 商品やサービスの販売を目的とした広告である場合は、広義の通信販売とみなし、取り扱い業者の所在などの連絡先を明示しなければならない。(表示義務)
しかしながら、スパム送信そのものに対する規制は不十分で、問題も多い。2008年2月には、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」の改正案をまとめ、日本国外から発信されたスパムについても取り締まりの対象とするほか、罰金の最高額を改正前の100万円から3000万円に引き上げるなど、規制を強化している[7]。
違法特定電子メールの申告窓口としては、次の二つの団体が指定されている(規定された法律が異なるためで、どちらでも申告を受け付けている)。
注釈
- ^ ピンクシート(Pink Sheets)市場などのPenny stock(日本語で言えばボロ株に相当)に対する風説の流布である。これは情報開示があまり為されていない、流通性・価格の低い企業の株に対し業績が上がるという情報を流し、売り抜けるというものである。Stockや XXXX.PK(ピンクシート銘柄の証券コード)やXXXX.OB(店頭市場の証券コード)などのキーワードが入っているものがそれである。なお、日本では、数百万円以上の金額を年利数%から1%以下の低金利で融資する旨の宣伝内容を送りつける闇金融(貸します詐欺)の勧誘メールもある。
- ^ 「特定電子メール」とは、個人に対し、営利を目的とする団体及び個人が、自己又は他人の営業につき、広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール。
- ^ あくまで機械的に判定するものであるため、悪意のないメールがスパム扱いされる、誤検知(後述)の問題もある。
- ^ アットマークを画像に置き換えるなど。
出典
- ^ “スパムの種類が最も多いのはアルゼンチン――マカフィー調査”. ITmedia エンタープライズ. 2020年9月9日閲覧。
- ^ “スパムは10年間で8%から90%に、Symantecが動向報告”. ITmedia (2010年1月14日). 2011年1月9日閲覧。
- ^ スパムメール生誕30周年記念、世界初のスパムメールは一体何だったのか?。
- ^ 日経クロステック(xTECH). “sendmail開発者Eric Allmanが語る「ネットの夜明けとスパムの歴史」”. 日経クロステック(xTECH). 2020年9月9日閲覧。
- ^ David Crocker、翻訳 安東 孝二「世界の電子メールをspam制御へ 」『IPSJ Magazine』第46巻第7号、2005年、741-746頁。
- ^ 景山 忠史「spamメールの現状」『IPSJ Magazine』第46巻第7号、2005年、747-751頁。
- ^ “迷惑メール規制法 海外発のメールも摘発対象に”. CNET Japan (2008年2月14日). 2020年9月9日閲覧。
- ^ “画像スパムが1年で急増、スパム全体の65%までに”. ITmedia エンタープライズ. 2020年9月9日閲覧。ITmedia エンタープライズ:画像スパムが1年で急増、スパム全体の65%までに(2007年1月16日)
- ^ “迷惑メールは誰がどこから送信するのか?”. ITmedia (2010年3月25日). 2010年3月25日閲覧。
- ^ “India spews more spam than ever before, report finds” (英語). Naked Security (2012年10月16日). 2020年9月9日閲覧。
- ^ 平成14年(ワ)第12815号 損害賠償請求事件 (平成15年3月25日判決)
- ^ 2年半に迷惑メール約20億通…サイト運営会社 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
- ^ 措置命令に違反しメール送付容疑 警視庁、出会い系社長を逮捕 :日本経済新聞
- ^ 迷惑メール送信容疑で社長逮捕 措置命令違反は全国初 - 47NEWS(よんななニュース)
- ^ なりすましメール撲滅プログラム (PDF) 迷惑メール対策推進協議会 (2012) (2012年12月16日閲覧)。
- ^ 小向太郎 (2008). 情報法入門-デジタル・ネットワークの法律-. NTT出版. ISBN 4757102348
- ^ 「なりすましメール撲滅プログラム (PDF) 」 迷惑メール対策推進協議会 (2012) (2012年12月16日閲覧)。
- ^ なりすましメールに気をつけよう 迷惑メール対策推進協議会(2012年12月16日閲覧)[リンク切れ]
- ^ 迷惑メール対策のすすめ(2012年12月16日閲覧)[リンク切れ]
- ^ “「スパムメールは採算が取れるうちは根絶されない」京大高倉助教授”. internet.watch.impress.co.jp. 2020年9月9日閲覧。
- ^ “スパム22億通送信で逮捕 25歳男「捕まると思わなかった」 - ITmedia News”. web.archive.org (2008年2月18日). 2020年9月9日閲覧。
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