スパム (メール)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 14:19 UTC 版)
当初は、電子メール(SMSを含む)サービス開始と共に電子メールにおけるスパムが席巻した。近年は各種SNSに同様な迷惑行為もある。
「迷惑メール」という語もあるが、その内容が迷惑であろうが、仮に有用であろうが「受信者や媒体の意向を無視して、無差別かつ大量に一括してばらまく」のがスパム行為であって別の語である。
語の由来については、スパム#迷惑行為とスパムを参照。
概説
スパムメールは、宣伝目的で一方的に送られる電子メールである。販売側から見て、不特定多数の個人に対して広告活動をするとき、郵便に比べて電子メールでは以下のような特徴がある。
- 郵便では一通ごとに内容の印刷と郵送料によって出費が発生するが、電子メールはインターネット接続料金のみで送信できるため、コストが非常に低い。
- 短時間に大量の一括送信が可能。
- 封筒ごと捨てられる恐れがなく、題名だけでも受信者の目に触れる可能性が高い。
インターネットの普及とともに、無差別送信されるメールは急増した。セキュリティソフト会社マカフィーが2010年4月から6月にかけて調査した結果では、スパムメールの1日あたり配信数は約1750億通とされている[1]。メール使用者にとって必要な通常のメールよりも、これらスパムがはるかに多く届くといった事態にもなり、大きな社会問題となっている[2]。
なお、語源となった商品名(#語源参照)との混同や、一種のインターネットジャーゴン(専門語)である「スパム」を避け、日本語を使ってわかりやすく「迷惑メール」と呼ばれることも多い。
受信者に直接送信されるスパムの他に、宛先不在のスパムを、記述されている偽の送信元に返信することにより生じるbackscatter(後方拡散)、またはcollateral spam(巻き添えスパム)と呼ばれる二次被害を起こすこともある。
世界最初のスパムは、コンピュータ会社のディジタル・イクイップメント・コーポレーションが1978年5月に送信したものとされる[3][4]。内容はDECSYSTEM-20の製品発表会の案内で、約400人に送信された。
対象となるメールや別の呼び方
これらの無差別かつ大量に一括して送信される電子メールのほとんどは広告メールで、「迷惑メール」「ジャンクメール(junk mail)」「バルクメール (bulk mail)」とも呼ばれ、日本国内においては総務省などの省庁が使う表現に従って「迷惑メール」と呼ぶことが多い。アダルト向け勧誘やワンクリック詐欺のURLが記されていることがある。
英語では、次のように呼ばれることもある。
- UCE (Unsolicited Commercial Email)
- 勝手に送りつけてくる宣伝電子メール
- UBE (Unsolicited Bulk Email)
- 勝手に送りつけてくる大量の電子メール
なお、コンピュータウイルスやワームから無差別的に発信される電子メールも存在し、「ウイルスメール」と呼ばれることがある。このメールに添付されるファイルは、ウイルスそのものである場合が多く、厳重な警戒が必要である。
語源
語源は、缶詰の "SPAM" およびコメディ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』のスケッチ、『スパム』から来ている。
スパムではないメールのことを、スパムに準えて"ham"(ハム)と表現することがある。アンチスパムソフトウエアでhamという表現が採用されていることがある[どれ?]。
注釈
- ^ ピンクシート(Pink Sheets)市場などのPenny stock(日本語で言えばボロ株に相当)に対する風説の流布である。これは情報開示があまり為されていない、流通性・価格の低い企業の株に対し業績が上がるという情報を流し、売り抜けるというものである。Stockや XXXX.PK(ピンクシート銘柄の証券コード)やXXXX.OB(店頭市場の証券コード)などのキーワードが入っているものがそれである。なお、日本では、数百万円以上の金額を年利数%から1%以下の低金利で融資する旨の宣伝内容を送りつける闇金融(貸します詐欺)の勧誘メールもある。
- ^ 「特定電子メール」とは、個人に対し、営利を目的とする団体及び個人が、自己又は他人の営業につき、広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール。
- ^ あくまで機械的に判定するものであるため、悪意のないメールがスパム扱いされる、誤検知(後述)の問題もある。
- ^ アットマークを画像に置き換えるなど。
出典
- ^ “スパムの種類が最も多いのはアルゼンチン――マカフィー調査”. ITmedia エンタープライズ. 2020年9月9日閲覧。
- ^ “スパムは10年間で8%から90%に、Symantecが動向報告”. ITmedia (2010年1月14日). 2011年1月9日閲覧。
- ^ スパムメール生誕30周年記念、世界初のスパムメールは一体何だったのか?。
- ^ 日経クロステック(xTECH). “sendmail開発者Eric Allmanが語る「ネットの夜明けとスパムの歴史」”. 日経クロステック(xTECH). 2020年9月9日閲覧。
- ^ David Crocker、翻訳 安東 孝二「世界の電子メールをspam制御へ 」『IPSJ Magazine』第46巻第7号、2005年、741-746頁。
- ^ 景山 忠史「spamメールの現状」『IPSJ Magazine』第46巻第7号、2005年、747-751頁。
- ^ “迷惑メール規制法 海外発のメールも摘発対象に”. CNET Japan (2008年2月14日). 2020年9月9日閲覧。
- ^ “画像スパムが1年で急増、スパム全体の65%までに”. ITmedia エンタープライズ. 2020年9月9日閲覧。ITmedia エンタープライズ:画像スパムが1年で急増、スパム全体の65%までに(2007年1月16日)
- ^ “迷惑メールは誰がどこから送信するのか?”. ITmedia (2010年3月25日). 2010年3月25日閲覧。
- ^ “India spews more spam than ever before, report finds” (英語). Naked Security (2012年10月16日). 2020年9月9日閲覧。
- ^ 平成14年(ワ)第12815号 損害賠償請求事件 (平成15年3月25日判決)
- ^ 2年半に迷惑メール約20億通…サイト運営会社 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
- ^ 措置命令に違反しメール送付容疑 警視庁、出会い系社長を逮捕 :日本経済新聞
- ^ 迷惑メール送信容疑で社長逮捕 措置命令違反は全国初 - 47NEWS(よんななニュース)
- ^ なりすましメール撲滅プログラム (PDF) 迷惑メール対策推進協議会 (2012) (2012年12月16日閲覧)。
- ^ 小向太郎 (2008). 情報法入門-デジタル・ネットワークの法律-. NTT出版. ISBN 4757102348
- ^ 「なりすましメール撲滅プログラム (PDF) 」 迷惑メール対策推進協議会 (2012) (2012年12月16日閲覧)。
- ^ なりすましメールに気をつけよう 迷惑メール対策推進協議会(2012年12月16日閲覧)[リンク切れ]
- ^ 迷惑メール対策のすすめ(2012年12月16日閲覧)[リンク切れ]
- ^ “「スパムメールは採算が取れるうちは根絶されない」京大高倉助教授”. internet.watch.impress.co.jp. 2020年9月9日閲覧。
- ^ “スパム22億通送信で逮捕 25歳男「捕まると思わなかった」 - ITmedia News”. web.archive.org (2008年2月18日). 2020年9月9日閲覧。
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