録音
『現代民話考』(松谷みよ子)12「写真の怪 文明開化」第2章の8 皆で百物語をして、テープに録音した。百話がすんでも何も起こらなかったので、テープを戻して、早送りしながら再生した。ところが、百物語なのに101話入っている。これは変だと言って、あらためて1話ずつ再生していった。すると、「みんな、面白いこと話すなあ。では、おれが死んだ時の話をしよう」という声が入っていた(東京都)。
★2a.偶然、男女の別れ話の声が録音されたと思ったら、前もって仕組まれたことだった。
『二つの声』(松本清張) 俳句仲間4人が、夜、軽井沢で野鳥の声を録音する。野鳥の鳴き声に混じって、男女の別れ話の声が聞こえ、後に、声の主である女(=バアのホステス・マチ子)の絞殺死体が発見される。実は、別れ話の声も録音されたものだった。犯人は前日に東京でマチ子を殺していた。犯人は、マチ子の生前の声を夜の軽井沢で再生し、野鳥の声と一緒に俳句仲間たちに録音させて、殺害現場と時刻をごまかしたのである。
★2b.録音技術がまだ珍しかった1920年代には、前もって録音された声を再生し、殺害された人物が生きているかのように思わせるトリックが有効であった。
『アクロイド殺人事件』(クリスティ) アクロイドは午後8時40分から50分までの間に、自室で殺された。犯人は、アクロイドの声を吹き込んだ録音機を、午後9時30分に作動するようにセットして犯行現場を立ち退き、9時10分に自分の家に帰りついた。それから20分後に、アクロイドの秘書ジョフリーは主人の声を聞いた。彼は、「アクロイドさんは9時半には確かに生きておられましたよ」と証言した。
『カナリヤ殺人事件』(ヴァン・ダイン) ブロードウェイの踊子オーデル(通称「カナリヤ」)が、アパートの一室で殺された。犯人は、オーデルに似た声を前もってレコードに録音しておき、彼女を殺した後、そのレコードを蓄音機にかけて部屋を出た。犯人はドアの所に立ち、間合いをはかって、録音された声との会話を成立させる。近くで仕事をしていた電話交換手は、その時点でオーデルは生きていた、と証言した。
★2c.『アクロイド』(1926年)や『カナリヤ』(1927年)よりも早く、1921年にドイルは録音・再生トリックを使っている。
『マザリンの宝石』(ドイル) ホームズが人形のふりをして、自室の肘掛椅子にすわる(*→〔人形〕2b)。悪人2人がやって来るが、奥の寝室からヴァイオリンの音がするので、「ホームズは奥でヴァイオリンを弾いており、椅子にかけているのは人形だ」と思う。油断した悪人2人に、ホームズはピストルを突きつける。悪人はわけがわからず、「あのヴァイオリンの音は、どういうことだ?」。ホームズ「近ごろ発明された蓄音機というのは、まったくすばらしい」。
『子不語』巻13-339 江秀才が、竹筒にガラス蓋をつけた装置を作った。蓋を開け、竹筒の中に幾千もの言葉をしゃべり込んだあとで、蓋を閉じる。これを遠くに持って行き、千里以内なら、蓋を開けて耳をすませば、しゃべったとおりに聞こえる。千里以遠になると、音はきれぎれになって、聞こえなくなる。江の弟子から、私(=『子不語』の著者・袁枚)はこのことを聞いた。
『うそつき弥次郎』(落語) うそつき弥次郎が語る。「北海道は雪が深いから、長い竹の節(ふし)を抜いて雪にさしこみ、向こう側の人と『おはようございます』『ごきげんよろしゅう』などと話をする。たいへん寒いので、声が竹の中で凍ってしまう。それを細かく切って、1本いくらで売っている。これは目覚まし時計代わりになる。湯の中に5~6本ほうり込むと、声が溶け出して『おはようございます、おはようございます』」。
『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「ミュンヒハウゼン男爵自身の話」 「ワガハイ(ミュンヒハウゼン男爵)」が冬のロシアを馬車で旅した時、御者が角笛(ホルン)を口に当て、渾身の力で吹いても、まったく音が出なかった。宿屋へ入って、御者は角笛を、かまどの火のそばの釘にかけた。すると、突然、角笛が鳴り出したので、「ワガハイ」たちは驚いた。角笛の中で凍りついていた音が、溶けて鳴り出したのだ。
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