かへい‐ほう〔クワヘイハフ〕【貨幣法】
貨幣法
貨幣法
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1932年(大同元年)6月に公布された「貨幣法」(大同元年6月11日教令第25号)で満洲国の貨幣が規定された。以下は公布時の条文である。 貨幣法 (大同元年六月十一日教令第二十五號) 第一條 貨幣ノ製造及発行ノ権ハ政府ニ属シ満洲中央銀行ヲシテ之ヲ行ハシム 第二條 純銀ノ量目二三・九一瓦ヲ以テ価格ノ単位トシ之ヲ圓ト称ス 第三條 貨幣ノ計算ハ十進トシ一圓ノ十分ノ一ヲ角ト称シ百分ノ一ヲ分ト称シ千分ノ一ヲ厘ト称ス 第四條 貨幣ノ種類ハ左ノ九種トス 紙 幣 百圓 十圓 五圓 一圓 五角 白銅貨幣 一角 五分 青銅貨幣 一分 五厘 第五條 紙幣ハ其ノ額ニ制限ナク法貨トシテ通用ス鋳貨ハ其ノ額面ノ百倍迄法貨トシテ通用ス 第六條 鋳貨ノ品位量目ハ左ノ如シ 一 一角白銅貨幣 總量 三瓦(ニツケル二五参和銅七五ノ割合) 二 五分白銅貨幣 總量 二瓦(ニツケル二五参和銅七五ノ割合) 三 一分青銅貨幣 總量 三・五瓦(銅九五 錫四 亜鉛一ノ割合) 四 五厘青銅貨幣 總量 二・五瓦(銅九五 錫四 亜鉛一ノ割合) 第七條 貨幣ノ様式並ニ製造発行損幣引換銷却ニ関シテハ教令ヲ以テ之ヲ定ム 第八條 著シク汚染磨損又ハ毀損セル貨幣ハ其ノ額面価格ヲ以テ無手数料ニテ満洲中央銀行ニ於テ之ヲ引換フ 第九條 鋳貨ニシテ模様ノ認識難キモノ又ハ私ニ極印ヲ為シ其ノ他故意ニ毀損セリト認ムルモノハ貨幣タルノ効力ナキモノトス 第十條 満洲中央銀行ハ紙幣発行高ニ対シ三割以上ニ相当スル銀塊金塊確実ナル外國通貨又ハ外國銀行ニ対スル金銀預ケ金ヲ保有スルコトヲ要ス 第十一條 前條ニ掲ケタル準備額ヲ控除セル残餘ノ発行高ニ対シテハ公債證書政府ノ発行又ハ保證セル手形其ノ他確実ナル證券若ハ商業手形ヲ保有スルコトヲ要ス 第十二條 満洲中央銀行ハ紙幣及鋳貨ノ発行高竝ニ準備ノ増減ニ関スル出納日報及毎週平均高表ヲ作製シテ政府ニ進達シ且毎週平均高表ハ之ヲ公告スヘシ 第十三條 政府ハ満洲中央銀行ノ管理官ヲシテ特ニ貨幣ノ製造及発行ヲ監督セシム 管理官ハ何時ニテモ貨幣ノ発行高未発行高及帳簿ヲ検査スルコトヲ得 第十四條 従来流通シタル鋳貨及紙幣ニ関シテハ舊貨幣整理辦法ノ定ムル所ニ依ル 附 則 本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス 第1條で、貨幣の製造及び発行の権限は政府に属するが満洲中央銀行が代行するとされた。 第2條で、純銀23.91グラムが価格の単位とされ、通貨の呼称は圓とされた。続く第3條で通貨単位は十進法表記が採用され、1圓=10角=100分=1000厘と規定された。 第4條で、貨幣の種類が9種と規定され、紙幣は百圓、十圓、五圓、一圓、五角の5種、硬貨は白銅貨幣が一角、五分の2種、青銅貨幣が一分、五厘の2種とされた。なお、1939年(康徳6年)の改正で硬貨の材質に関する表記が削除され、硬貨は一角、五分、一分、五厘の4種と規定された。 第5條で、貨幣の強制通用力が規定されており、紙幣は無制限、鋳貨(硬貨)は100枚まで法貨として通用するとされた。 第6條で、一角及び五角の白銅貨幣、一分及び五厘の青銅貨幣の量目、素材及び品位が定められていた。続く第7條で、貨幣の様式、製造、発行、損幣の引換え・消却に関しては教令で定めるとされていたが、1939年(康徳6年)の改正で、第4條の改正と同時に第6條が削除され、第7條を第6條として「貨幣ノ様式、製造、発行、損幣引換及銷却並ニ鋳貨ノ素材、品位及量目ニ関シテハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」に改められると共に以降の各條が繰り上げられた。 第8條で、著しく汚れたり磨耗・毀損した貨幣は、額面価格により手数料無しで満洲中央銀行で引き換えを行うとされた。但し、第9條で、鋳貨については模様の識別が難しい物や私的に極印した物、故意に毀損したと認められる物は貨幣価値を失うとされている。 第10條で、満洲中央銀行は紙幣発行に際して、その発行高の3割以上に相当する銀塊・金塊、確実な外国通貨、外国銀行に対する金銀預ケ金を保有する事で発行準備額としている。また、第11條では、発行準備額を除いた紙幣発行高に対しては、公債証書、政府が発行・保証する手形、その他確実な証券・商業手形を保有する事で信用を担保した。 第12條で、満洲中央銀行は紙幣及び鋳貨の発行高・準備の増減を記した出納日報と毎週平均高表を作製して政府に提出すると共に毎週平均高表を公告すると規定され、一般に対しては週1回、毎週平均高表を『満洲国政府公報』及び『政府公報』に公告した。 第13條で、政府は満洲中央銀行に対して貨幣の製造及び発行を監督する事を定めており、管理官は何時でも貨幣の発行高・未発行高及び帳簿を検査する事が出来るとされた。 第14條で、従来流通していた鋳貨及び紙幣に関しては「舊貨幣整理辦法(旧貨幣整理弁法)」の定める事によるとされており、1932年(大同元年)7月に施行された「旧貨幣整理弁法」(大同元年6月27日教令第37号)により、旧紙幣15種は2年間、一定の換算率で新貨幣と同一の効力を有するとされ、旧鋳貨(奉天省十進銅元)は5年間、新貨幣の一分青銅貨と同一の効力を有するとされ、それぞれ期間満了後はその効力を失うとされた。これらの旧貨幣は満洲中央銀行の総分支行で新貨幣と引き換えるとされ、流通期限満了の1934年(康徳元年)6月末迄に93.1%の回収率を示した。それでも約1000万圓の未回収分があり、所持者の利益保護のために「舊紙幣兌換ノ件」(康徳元年5月22日財政部布告第6号)で交換期間を更に1年延長し、最終的には97.2%の回収率を達成した。 なお、グラムの漢字表記は制定当初は日本語と同じ「瓦」が使用されたが、1933年(大同2年)4月の「貨幣法中改正ノ件」(大同2年4月19日教令第22号)で中国語の「公分」に改められ、1939年(康徳6年)10月の「貨幣法中改正ノ件」(康徳6年10月12日勅令第265号)で再度「瓦」に改められている。 上記の通り、貨幣法第2條で純銀23.91グラム(現大洋の純銀量)の価格を基準として「圓」と規定されているため、制度上は銀本位制に相当するが、条文に兌換に関する規定はなく、同第4條にも本位貨幣の銀貨の規定が存在しない。そのため、当初から銀にリンクする管理通貨として発足したとされている。
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