支持と運動の生体力学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 03:49 UTC 版)
「腕 (頭足類)」の記事における「支持と運動の生体力学」の解説
筋組織や他の組織は圧力変化に応じて体積変化しにくいため、触腕の支持および運動ができ、触腕の体積は基本的に一定であるため、ある面の縮小により別の面の拡大が起こる。捕食行動の際の急激な触腕の伸長は、横走筋およびそれと連携した輪走筋の変化により起こる。その短縮により横断面積が減少するが、体積は少ししか減少しないため、触腕長は増加する。触腕の短縮は縦走筋の収縮により、縦走筋は横断面を増加させることによって横走筋組織を再び拡張する。従って、横走筋と縦走筋は脊椎動物の関節の裏側の筋肉と類似した拮抗筋として働く。 横走筋は直交するパターンで並び、横走筋の収縮により触腕の高さと幅がともに減少するため、横走筋および輪走筋繊維の変位と収縮速度が増幅される。この横断面の減少は触腕の伸長 (長さの1乗) をもたらす面積 (長さの2乗) の減少を表し、よって横走筋と輪走筋の短縮が増幅される。放射軸方向の張力εrと前後軸方向の張力εl の関係は、下式のように表せる。 εr = (1+εl)−.mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1/2−1 例えば、直径の僅か25%の減少のみで、典型的な獲物の捕捉の際の、触腕の伸長の約80%になる。この変位の増幅は出力よりも入力の方が比較的短い、硬い骨格(外骨格および内骨格)のてこ装置と類似している。機械的な増幅は触腕の素早さに一部寄与し、それに加え、横走筋および輪走筋繊維は高い短縮速度への特化を示す。 右巻きまたは左巻きの螺旋筋の層 (helical muscle layers)は前後軸を中心とする触腕のねじれの原因となる。触腕の攻撃における伸長の相では、触腕はよくねじれ、獲物の向きによってどちらの方向にも曲がる能力があることが確認されている。このねじれは、触腕が付いた面で獲物を捕捉するため、触腕掌部の方向を変えるのは重要である。生体工学的分析では、螺旋筋の層の収縮の巻き方によりねじれがおこるとされる。螺旋筋の層は、触手が伸長したり短縮したりする際に、螺旋の経路長の変化に対応しなければならない。触腕が完全に収縮した状態から伸長すると、螺旋筋は短くなり、 54°44′までに達する。触腕がこの点を超え、fiber angle がさらに減少すると、螺旋筋が伸長される。周縁部の螺旋筋の層はより中央部の位置に比べ、トルクを適用することができるより大きなモーメントをもたらす。
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「腕 (頭足類)」の記事における「支持と運動の生体力学」の解説
腕の最も重要な運動の一つである屈曲は腕の曲げた部分の内側半径側の縦走筋の選択的な収縮を必要とする。横断面の口側に存在し、口側方向に力強く曲がる特に大きな縦走筋の束は獲物の操作に特別重要であるが、縦走筋の束は横断面の全周を取り囲み存在しているため、あらゆる面への屈曲が可能である。縦走筋の収縮は、この力に反発するいくつかのメカニズム以外の、曲げるよりも単に腕を短くする傾向のある前後軸方向の圧縮力を作り出す。腕の組織の体積変化への反発は前後軸方向の圧縮への反発をもたらすのに重要である。腕の体積は基本的に一定なので、あらゆる短縮は径の増加をもたらす。前後軸の圧縮力に反発するため直径の増加は妨げられるに違いない。横走筋は腕の直径を制御することができるように並び、屈曲に必要な前後軸の圧縮への反発をもたらす。それゆえ、能動的な腕の屈曲には腕の縦走筋および横走筋繊維をともに同時に収縮する運動を必要とする。上記のような状況では、横走筋は縦方向の繊維が腕の1側面を短くするとき、直径を維持し、前後軸の圧縮に抵抗する。屈曲はまた、腕の1側面(屈曲の内側半径)の縦走筋が伸長に反発する限り、横走筋を短くすることにより直径を減少させることで起こりうる。屈曲のための横走筋または縦走筋の短縮の相対寄与は変化し、上記のような2つの状況は連続体の終点を代表する。縦走筋の束は、中立面に近いより中央の位置に比べ、曲げモーメントを増加させる腕の周縁部に位置する。 腕をねじるのに必要な捻り力は斜走筋と、連携した交叉した繊維結合組織の薄層によりもたらされる。右巻きの筋肉および左巻きの筋肉と結合組織繊維層が存在する。任意の巻き方の繊維は腕の全長を螺旋状に覆う筋繊維と交互に並ぶ結合組織繊維の複合体と見なされる。その複合体系の一つの収縮は螺旋繊維系の巻き方に応じたねじり方向に腕をねじる。腕のねじり剛性は右巻きと左巻き両方の斜走筋系の収縮活性とともに増加しうる。ねじり剛性の能動制御は もがく獲物を制御するのに特に重要である。斜走筋の配置は中立軸に近いより中央の位置 (中立軸はねじれの梁の中心に位置し、剪断応力を受けない) よりも、トルクが適用できるより大きいモーメントをもたらす周縁部に位置する。
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タコの腕における支持と運動は上記の十腕類の腕と触腕と同様に、腕の筋肉組織の体積変化への反発による。タコの腕は顕著な運動の多様さと複雑さをもち、全ての運動は前述の伸長、短縮、屈曲そしてねじれの4つの基本的な腕の変形の組合せによって生み出される。タコの腕は一部分だけに限って変形したり、腕の全長に亘って変形したりするため、注目に値する。加えて、その変形は個々の腕の1つの場所または複数の場所でおこる。屈曲運動はあらゆる面でおこりうるし、ねじれ運動は両方向で観察される。緊張、収縮、屈曲とねじれの剛性は能動的に制御できる。 腕の組織が体積変化に反発すると、横断面の減少は長さの増加をもたらす。横断面のこの減少は横走筋塊の筋繊維の収縮により作り出されるようである。 その伸長は局所的で横走筋の一部のみと腕の全長に亘っての両方でおこる。輪走筋の薄層もその収縮が腕を伸長させるように方向づけられるが、その生理学上の横断面積はほんの小さく、そのため伸長のために作られる力も小さい。輪走筋の層の働きの一つに姿勢を維持するための腕の緊張をもたらすことがありうる。 短縮は腕の全長に拡がる縦走筋の束の収縮に関与するらしい。腕が体積変化に反発するため、腕の短縮は横断面の増加をもたらし、それにより横走筋繊維および輪走筋繊維の伸長の原因となる。従って、横走筋繊維と縦走筋繊維は拮抗筋として働き、互いに再び伸長するために必要な力を生み出す。 屈曲運動に必要な筋肉の活性化は上記のイカの腕の屈曲と同様である。能動的な屈曲は屈曲の内側半径を示す腕の側面に沿った縦走筋の束の選択的な収縮を必要とする。単に腕を短くする前後軸の圧縮力に反発することを必要とする支持は横走筋塊によりもたらされる。従って、能動的な屈曲運動は同時に横走筋と縦走筋の収縮を必要とする。また腕の片側(屈曲の内側半径)の縦走筋が一定の長さを維持する際、横走筋が横断面を減少させると屈曲が起こることがある。上記の十腕類の腕のように、ここで与えられる2つの例は恐らく横走筋及び縦走筋の相対的な短縮の連続体上の終点を表している。突然の屈曲は、いくつかの行動で観察されているように、より軽い屈曲がより幅広く分布する筋肉活動に関与するため、選択的に局在する腕の縦走筋および横走筋の筋肉組織の収縮が恐らく関与している。 タコの腕は十腕類の触腕とも十腕類の腕とも異なっている。前述のように、触腕は主に伸長と短縮に機能するが、対して十腕類の腕は殆ど長さが変化せず、代わりに屈曲運動を行う。タコの腕は屈曲と長さの変化を併せ持つ。タコの腕は横走筋および縦走筋繊維といった同じ筋肉組織を用いて、活動パターンを変えるだけで伸長と短縮のときの連続した活動と屈曲中に同時に起こる活動を行うことができる。 単純な工学的考察に基づいて、屈曲運動の際、腕により生み出される力は縦走筋繊維が腕の中立面からできるだけ遠くに位置しているとより大きくなる。確かに、縦走筋は腕の中心軸から離れて位置している。加えて、縦走筋の束はあらゆる面で働く曲げ応力を与える内在筋の横断面の全周を取り囲むように位置している。横走筋は腕の口側の縦走筋の束と合わせて口側の屈曲(力強い屈曲のもっとも一般的な形態)を生み出し、支持する役割をもつこともあって、腕の反口側部分でもっとも強靭である。 能動的な屈曲運動に加え、横走筋と縦走筋の共収縮は腕の曲げ剛性を増加させる。いくつかの腕の運動では、腕は硬くなり、腕の基部にある傘膜の筋肉組織の基底で回転する。 十腕類の腕で見られるように, ねじれ運動は斜走筋の収縮により生み出される。交叉した繊維の螺旋結合組織の配列は斜走筋により生み出される力を伝達する結合組織と筋肉の螺旋系の主要成分である。腕の両側の外側斜走筋と中間斜走筋の対およびそれと連携した交叉繊維結合組織の配列は左巻き及び右巻き螺旋系の両方を示し、それによって、両方向に生みだされるねじり力を与える。これは腕の両方向のねじれの観察と相違ない。外側斜走筋及び中間斜走筋系の共収縮は腕のねじれ合成を増やしているようである。ねじれモーメントは斜走筋ができるだけ中立面から遠くに位置しているほどより大きくなる。実際、外側斜走筋及び中間斜走筋は中立面から遠くに位置している。内側斜走筋の機能的役割は明らかでないが、最も内側にあるため、ねじれモーメントを産み出すのに非効率で、外側斜走筋と同じ巻き方をしている。 タコの腕は筋肉流体静力学装置のメカニズムによる付属肢が高い局所運動および変形を可能にする1例となっている。筋繊維の局所的な活動は、巨大な体液に満たされた体腔の静水圧を増大する典型的な静水力学的骨格における一般的な作用に比べ、より局所的な作用を示す。 変形は全ての位置または複数の位置で多くの方向に向けて起こるため、腕は筋繊維の選択的に小さな集団を活性化し、筋力の発生を精密に調節することが必要な神経筋制御を行わなければならない。実際、横走筋および縦走筋の運動単位は小さく、繊維同士の電気的結合は見られない。加えて、筋繊維の活動は直接神経活動に制御され、筋力の発生を精密に調節する。しかし、このようなシステムの難しさは複雑な運動制御を行うのに必要なのである。近年の研究により、運動路、機械受容メカニズムと腕の神経筋制御を簡単にするメカニズムへの重要な知見が示されている。
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