代表的な作家と歌
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雄長老(1535-1602) 本名永雄英甫 南禅寺の禅僧 いつはりのある世なりけり 神無月貧乏神は身をもはなれぬ(冬6-263) 本歌:いつはりのなき世なりけり 神無月誰がまことより時雨そめけむ(藤原定家) 本歌:いつはりのなき世なりせば いかばかり人の言の葉うれしからまし(古今集・読み人知らず) 歌意:神無月(10月)は神様が出雲に行くはずなのに、貧乏神は離れてくれない。 松永貞徳(1571-1653)貞門派俳諧の祖 下記は巻頭歌 さほ姫のすそ吹返し やはらかなけしきをそゝと見する春風(春1-1) 歌意:春の女神佐保姫に春風が吹く。裾がひるがえってやわらかな景色が見える。 石田未得(いしだみとく 1587-1669)本名又左衛門 両替商 山人は冬ぞひもじさまさりけん あえ物草もかれぬと思へば(冬6-274) 本歌:山里は冬ぞさびしさまさりける 人目も草もかれぬと思へば(源宗于) 追記:『蜀山先生狂歌百人一首』(1843年)の替歌も有名。「山里は冬ぞさびしさまさりける やはり市中がにぎやかでよい」 布留田造/平郡実柿(寛文年間1673頃没か)本名池田正式 大和郡山藩士 ほとときすなきつるかたをながむれば ただあきれたるつらぞのこれる(夏3-110) 本歌:ほととぎす鳴きつる方をながむれば ただ有明の月ぞ残れる(後徳大寺実定) 追記:他の替歌として、『万代狂歌集』(1812年)に四方赤良作「ほととぎす鳴きつるあとに あきれたる後徳大寺の有明の顔」 樋口関月 秋山玉山(1702-1763)と交友があった事以外は不明 八はしを見んと思へど 高いびきかきつばたにて跡になり平(旅8-336) 出典:伊勢物語8段 歌意:業平がかきつばたの歌を詠んだ八橋を見ようと思ったが、駕籠の中で眠って過ぎてしまった。 白鯉館卯雲(はくりかんぼううん 1708-1783)本名木室朝濤(きむろともなみ) 幕臣 さびしさに抱えていとまやりにくし 火桶は老の妾同然(冬6-264) 歌意:火桶は老人にとって妾同然。ずっと抱えていたい。 元木網(もとのもくあみ 1724-1811)本名渡辺正雄 画名高嵩松 湯屋 吹く風に虱(しらみ)こぼれて をみなへし落にきとても人にたかるな(秋4-182) 本歌:名にめでてをれるばかりぞをみなへし 我落ちにきと人に語るな(僧正遍昭) 歌意:しらみよ、風に吹かれて落ちても人にたかるな。 平秩東作(へづつとうさく 1726-1789)本名立松懐之 馬宿・煙草屋 そしてまた おまえいつきなさるの尻 あかつきばかりうき物はなし(恋11-416) 本歌:有明のつれなくみえし別れより あかつきばかり憂きものはなし(壬生忠岑) 歌意:夜明けに遊女は、またいつ来てくれるのと言う。さるの尻のように真っ赤な言葉を。 山手白人(やまてのしろひと 1737-1787)本名布施胤致(ふせたねよし)幕臣 さかづきを月よりさきにかたぶけて まだ酔ひながらあくる一樽(夏3-133) 本歌:夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを 雲のいづこに月宿るらむ(清原深養父) 歌意:月が傾くより先に杯を進め、酔いながら一樽あけた。 算木有政 ( -1794)本名羽倉訓之 魚商? いただくや3合4合7合と 段々のぼるふじのさかづき(雑14-571)(『狂歌若葉集』にも重撰) 歌意:3合4合..と酒をいただこう。富士の坂を3合4合..と登るように。 朱楽菅江(あけらかんこう 1740-1799)本名山崎景貫 幕臣 南無阿弥陀ふつとさとりし発心に鬼もさっそく滅無量罪(釈教16-723) 出典:一念弥陀仏即滅無量罪(『一遍上人語録』) 歌意:南無阿弥陀仏とふっとさとると鬼も無限の罪から救われるという。 花道つらね(1741-1806)市川團十郎 (5代目) 歌舞伎役者 たのしみは春の桜に秋の月 夫婦なかよく三度食ふめし(雑14-600) 解説:この歌は幕末の橘曙覧の独楽吟52首につながる。(例:17首目「たのしみはまれに魚にて児ら皆がうましうましといひて食ふ時」) 唐衣橘洲(からごろもきっしゅう 1744-1802)本名小島謙之 田安家家臣 月見酒 下戸と上戸の顔見れば 青山もあり赤坂もあり(秋5-223) 歌意:月見酒をする人々の顔を見ると(悪酔いの)青い顔や赤い顔がある。 四方赤良(よものあから 1749-1823)本名大田覃(ふかし) 別号南畝。幕臣 この狂歌集の主編者。後年蜀山人と号する。 あなうなぎいづくの山のいもと背を さかれてのちに身をこがすとは(恋12-496)(『狂歌若葉集』にも重撰) 本歌:来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ(藤原定家) 歌意:裂かれる男女のように、うなぎも背をさかれて身をこがすとは。 鹿津部真顔(しかつべのまがお 1753-1829)本名北川嘉兵衛 汁粉屋 しら雪のふる借銭の年つもり はらはで家も横にねにけり(冬6-283) 歌意:雪と借金がつもり、家が傾いた。借金は踏み倒そう。 加保茶元成(かぼちゃのもとなり 1754-1828)本名村田市兵衛 吉原大文字屋の店主 いつのまにか色づきそめしほおづきを 人のちぎらんことをしぞ思ふ(恋12-472) 歌意:ほおずきのようにいつのまにか色づいた娘を、人が契るのだろうな、惜しいなあ。 青陽 ( -1820)本名浅山芦国 浮世絵師 ありあひの小さく見えし茶碗より 盃ばかりよきものはなし(雑14-569) 本歌:有明のつれなくみえし別れより あかつきばかり憂きものはなし(壬生忠岑) 歌意:酒よりよいものはない。 遊女たが袖 吉原大文字屋の遊女。天明4年土山宗次郎に身請けされた。 わすれんとかねて祈りし紙入れの などさらさらに人の恋しき(恋12-489) 本歌:多摩川にさらす手作りさらさらに 何ぞこの児のここだ悲しき(万葉集・東歌) 歌意:忘れたいのに、あの人からいただいた紙入れを見るとますます人恋しい。 紀野暮輔 詳細不明 見わたせば金もおあしもなかりけり 米櫃までもあきの夕暮(秋4-196) 本歌:見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦のとまやの秋の夕暮(藤原定家) 歌意:金も銭も米もない。 (読み人知らず) おふじさん雲の衣をぬがしゃんせ 雪のはだえが見とうござんす(雑14-532) 歌意:富士山よ、雲が晴れてほしい。おふじさん、衣を脱いでほしい。
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