ニコンF3
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「ニコンの銀塩一眼レフカメラ製品一覧」の記事における「ニコンF3」の解説
F一桁として初めて電子制御式シャッター・絞り優先AEを搭載。20年の長期にわたって販売されたモデルである。発売当初のキャッチコピーは「Super Nikon」。ニコンではニコマートELにおいて初の電子制御式シャッターとしてコパル製の縦走りシャッター「コパルスクエアSE」を採用したが、ニコンF3では自社設計による横走りシャッターを採用している。シャッター幕はチタンで、開口時間はクォーツを基準として制御されるが、本機の基本動作はFRE(金属薄膜抵抗体;巻き戻しクランク部に位置する)などを用いたアナログ電子式である。マニュアルで使用可能なシャッター速度は8秒~1/2000秒(中間シャッター速度は選択不可)、スピードライトはX(1/80秒)以下のシャッター速度で同調する。ニコンFやニコンF2と同様ファインダーの交換が可能である。ファインダーに測光機構を持つニコンFフォトミック、ニコンF2フォトミックと異なり、測光機構はボディ内部にある。メインミラーに穿設された約5万個のピンホールを通過し、サブミラーを反射してミラーボックス下部のSPDに光を導く方式で、この「ボディ測光」によりニコンF3はすべてのファインダーでTTL測光ができる。同一のSPDがスピードライトTTL調光用素子を兼ねる。ハーフミラーでなくピンホールミラーなので円偏光フィルターだけではなく通常の(直線)偏光フィルターも使用できる。測光方式は中央部重点測光だが中央重点度が高く、スポット測光的に近い。使用電池は、銀電池SR44 ×2、またはアルカリ電池LR44×2、もしくはリチウム電池CR-1/3N。 緊急用として約1/60秒とT(タイム)の機械式シャッターも用意されており、電池が切れても一応は撮影が可能である。 TTL自動調光も本機専用のスピードライトで可能となった。クリップオン式スピードライトはニコンF2と同様に巻戻しクランクの直上部に装着する方式。ただしニコンF3独自規格で、ニコンF2に使用できたスピードライトや一般のJIS規格クリップオン式スピードライトはそのままでは使えずガンカプラーが必要である。またスピードライトやガンカプラーは、裏蓋開放機能を兼ねるフィルム巻き戻しクランクに被せる形で装着するので、フィルム交換のたびにスピードライトを取り外す必要があった。スピードライトを巻き戻しクランクから前方にオフセット装着することによりこの問題点を解決したガンカプラーAS-7が用意されているが、独自規格シューによるスピードライトでないとTTL自動調光に対応しない、前方へオフセット装着することから重心が移動する、外部測光時接写時の微妙な撮影距離の計算に修正が必要等の欠点が伴う。報道用のニコンF3Pはペンタプリズム部にホットシューを装備し汎用品のスピードライトが使用可能となり、フィルム装填時のスピードライト脱着を不要としている。ただしこの接点ではTTL自動調光はできない。 デザイナーには自動車デザインなどで著名なイタリアのジョルジェット・ジウジアーロを起用。モータードライブと本体が一体で設計・デザインされた。右手で保持する部分に盛り上がった手がかり(グリップ)を設け、さらに赤いラインを入れるなど、従来のニコン一眼レフカメラとは一線を画したモダンな外観となっている。グリップ部の表皮は発売当初メルセデス・ベンツのステアリングに採用されていた柔らかい素材が張られていたが、途中からゴム素材に変更されている。 ファインダー内部表示は、液晶表示装置(シャッター速度などをデジタル表示)・レンズの絞り環を直読する絞り値表示・スピードライトのチャージなどを示すレディライト(赤色LED)の3つである。ファインダー取り付け部の赤色ボタンを押下すると内蔵されたランプが点灯し、液晶表示と絞り値表示を照明する。 バリエーションモデルとしては下記のモデルがリリースされている。 ニコンF3(Nikon F3 、1980年(昭和55年)3月発売) - ベーシックモデルでアイレベルファインダーDE-2を搭載している。 ニコンF3ハイアイポイント(Nikon F3 High-eye Point 、1982年(昭和57年)3月発売) - ハイアイポイントファインダーDE-3を搭載したモデル。F3HPと略称される。 ニコンF3/T(Nikon F3/T 、1982年(昭和57年)12月発売) - 外装をチタンとしたモデル。限定モデルだったニコンF2チタンと違い、通常モデルとして生産された。各部の防滴性能強化が施されている。ファインダーはハイアイポイント仕様でチタン外装のDE-4。 ニコンF3AF(Nikon F3AF 、1983年(昭和58年)4月発売) - ニコン一眼レフカメラ初の市販オートフォーカスモデルでオートフォーカスファインダーDX-1を搭載している。 ニコンF3P(Nikon F3P 、1983年(昭和58年)報道向けのみ発売) - ニコンF3HPを基本に各部仕様を特化した報道向けモデルで、ファインダーはハイアイポイントファインダーDE-5。セルフタイマーや多重露出レバーの省略、各部の防滴性能強化などがなされる。 ニコンF3/T黒(Nikon F3/T Black 、1984年(昭和59年)9月発売) - ニコンF3/Tを黒仕上げとしたモデルで、それ以外の内容に変更はない。 ニコンF3リミテッド(Nikon F3 Limited 、1993年(平成5年)限定発売) - ニコンF3Pが一般向けに限定販売され、外装に「Limited」の刻印がある以外はニコンF3Pと同一仕様。ニコンF3Lと略称される。 以下は限定モデル。 ニコンF3H(Nikon F3H 、1996年(平成8年)発売) - ニコンF3Pをベースにクイックリターンミラーを廃し固定式ハーフミラーを採用、専用モータードライブMD-4Hとの併用で13コマ/秒の連続撮影が可能なハイスピードモータードライブモデルでハイアイポイントファインダーDE-5を搭載している。スポーツ報道などの特殊用途向けとして限定販売。販売時価格は48万円。生産台数は500台程度と言われている。 ニコンF3クラシック(Nikon F3 Classic ) - 安藤カメラクラシックが企画した限定モデル。100台で発売された。Ai Nikkor 50mm f/1.2Sとセットで販売された。レンズの刻印はボディと同じゴールドで塗装されている。また、別売りを防ぐため、ボディとレンズのシリアルナンバーは同じ番号である。 ニコンF3ラピタ2000メモリアルエディション(Nikon F3 LAPITA 2000 MEMORIAL EDITION 、2000年(平成12年)発売) - ニコンF3最後の限定モデル。小学館の雑誌「ラピタ」が愛読者向けに100台限定で発売した。「LAPITA 2000/MEMORIAL EDITION」の刻印、グリップの赤ラインが緑ラインになっているのが特徴。内容はほぼニコンF3ハイアイポイントに準じる。 以下は特殊モデル。 ビッグカメラ(1980年(昭和55年)製作) - アメリカ航空宇宙局からスペースシャトルに載せるカメラの発注があり製造された特殊カメラ。長尺フィルムバッグを装着しており大型のためこう呼ばれた。外装のプラスティック部品は全て金属に置き換えられている。 スモールカメラ(1980年(昭和55年)製作) - アメリカ航空宇宙局からスペースシャトルに載せるカメラの発注があり製造された特殊カメラ。前面のロゴ以外には反射防止用の黒い塗料が塗られている。 ウエムラスペシャル(1981年(昭和56年)製作) - 南極点単独旅行の記録用としてニコンF2に引き続き依頼があって作成された。アイレベルファインダー仕様でF3チタン発売に先駆けてチタン素材が使用されている。チタンカラー。 後継のニコンF4が発売されても並行して製造が続き、ニコンF5が発売されて以降も製造され、F一桁シリーズでは最長の20年に渡って製造された。そのため短期間だがニコンF3・ニコンF4・ニコンF5が並行して販売されていた時期があり、3機種が同時に掲載されたカタログも存在する。しかし採用されている電子部品の調達が困難になったこと、その部品の性能試験装置のメンテナンスがこれまた部品の枯渇により不可能になることなどから2000年(平成12年)に製造を終了した。
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