MGM-52 (ミサイル) 特徴

MGM-52 (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 03:31 UTC 版)

特徴

弾体

MGM-52Cの発射。弾体側面から特徴的な黒煙を吐く

ランスは、貯蔵可能液体推進剤を用いた新型可変推力デュアル・スラスト液体燃料ロケットモーターを搭載していた。また、ランスは発射の直後に特徴的な黒煙を生じる、4基のスピン・モーターを使用していた。ランスは、1,500mの距離まで加速する高推力ブースターで発射され、その後可変推力サステナーによる弾道維持飛行に移行する。

誘導には、1961年5月にウィリアム・C・マコークル博士とレッドストーン兵器廠にあったOML(Ordnance Missile Laboratories)のR・G・コナードによって発明されたDCAM(Directional Control Automatic Meteorological)補償原理を用いたAN/DJW-48完全内蔵慣性システムを用いていた。同システムは、加速段階の方向をブースターへの二次噴射を指令するジャイロスコープで制御し、また、ミサイルの加速を絶えずモニターし、ブースターの停止と可変推力サステナーを加速度計で制御した。このシステムでは、推力をミサイルの空気抵抗に等しくして予定された弾道にミサイルを保つために正確な推力量を提供することで、いかなる大気条件の変化や障害に対してもそれを補償した。

ランスは従前のMGM-29 サージェントと比較して、運用および維持がはるかに簡単だった。ミサイルは遅滞なく即応時間15分未満で発射されることができ、そのコンパクトなサイズのため、より多くのミサイルを1つの部隊で移動させることができた。

放射線強化型熱核弾頭

XMGM-52B

1977年には、W70 核弾頭の派生型であるW70 Mod 3(W70-3)を生産する準備ができていた。W70 Mod 3は、ER(Enhanced Radiation、放射線強化)弾頭であり、一定の範囲の中で人間の中枢神経系を攻撃する高レベルの中性子線を大量に発するように設計されていた。いわゆる中性子爆弾である。中性子線は、通常の核爆弾で発する放射線と違い、を含む遮蔽物や鋼板装甲がほとんど役に立たないため、遮蔽物の陰や装甲戦闘車両の中にいる敵兵を殺傷することを目的としていた。また、民間施設やインフラへの損害を減らすために通常の熱核弾頭より爆風と熱による破壊力が小さくされていた。

アメリカ政府は、ランスの放射線強化型熱核弾頭がドイツ連邦共和国(西ドイツ)の国土を不必要に破壊することなく敵兵だけを殺傷することができることを強調し、同盟国への損害を考慮せず躊躇なく使うことができる核兵器としてソビエト連邦に圧力をかけることによってソビエトの侵攻を阻止できると考えていたが、1977年6月6日付のワシントン・ポスト紙が建造物を温存して人命だけを奪う兵器として中性子爆弾(Neutron Bomb)という用語を用いて非人道的というニュアンスをこめて軍の開発を報じたため、ランスは一時悪評を得ることとなった。アメリカ議会は1977年7月13日にER弾頭の生産資金を承認したが、当時のジミー・カーター大統領1978年4月に政治判断で中性子弾頭の製造を延期した。その後大統領が代わり1981年8月10日ロナルド・レーガン大統領は、カーター大統領が定めた方針を覆してミサイルと砲弾の弾頭として中性子爆弾の生産を認可、製造が開始された。しかしながら、ER弾頭はアメリカ合衆国内に留め置かれ、海外に移送されることはなく、使用に関しても厳しい制限が設けられ、決して野戦部隊に持たされることはなかった。


  1. ^ a b Missile.index”. Missile.index Project (2007年6月9日). 2007年6月23日閲覧。
  2. ^ Vladimir(訳) (1999年8月). “北朝鮮のミサイルゲーム”. 新東亜. North Korea Today. 2007年7月7日閲覧。
  3. ^ 石川潤一 (2007-07). “空自ペトリオットPAC-3実戦配備”. 軍事研究 42巻 (7号): p.30. ISSN 0533-6716. 
  4. ^ Parsch, Andreas (2005年12月9日). “MGM-52” (英語). Directory of U.S. Military Rockets and Missiles. Designation-Systems.Net. 2007年6月30日閲覧。


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