90-II式戦車 90-II式戦車の概要

90-II式戦車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/07 02:59 UTC 版)

90-II式戦車
アル・ハーリド
性能諸元
全長 10.7 m
車体長 7.00 m
全幅 3.50 m
全高 2.40 m
重量 48.0 t
懸架方式 トーションバー方式
速度 69 km/h整地
45 km/h(不整地
行動距離 450 km(最大550km)
主砲 2A46 125mm滑腔砲
副武装 90-II式12.7mm重機関銃
86式7.62 mm機関銃
9M119対戦車ミサイル
装甲 複合装甲及び
コンタークト5爆発反応装甲
エンジン KMDB
6TD-2ディーゼルエンジン
1200hp
乗員 3 名
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輸出モデルのM型は別名MBT-2000ともよばれ、パキスタン国内でのモデルにはアル・ハーリド (AL-Khalid) の名称が付けられている。

歴史

80式戦車を元に88A/B式戦車の開発に成功した中国であったが、ソ連との緊迫化を背景に更なる研究が進められた。一方、パキスタンも同じくソ連のアフガニスタン侵攻に伴う脅威と隣国インドの軍拡競争とにより、自国の軍備増強が進められた。パキスタンは以前から中国の戦車を大量に輸入していたが、自国でもライセンス生産の形で技術力を蓄えていった。90-II式戦車はこうした両国の利害の一致のもと、1988年10月に共同開発が決定され、1990年1月にMBT-2000開発計画として本格始動した。

90-II式戦車は全く新規からの開発でなく、既存のコンポーネントを数多く盛り込んで開発された。第1世代の59式戦車から10%、69/79式戦車から15%、第2世代の85-C式戦車から20%、合計で既存のコンポーネントを45%使用し、残り55%が新規に開発された。

新コンポーネントにはソ連製のT-72戦車(ルーマニア、またはイラン・イラク戦争時に捕獲された物がイランから輸入されたと言われている)から多くが取り入れられており、車体の大きさやデザインで多くの類似点が見られる。

車体と砲塔は溶接鋼板ではあるが、前部は複合装甲を採用している。また、この車体には中国製戦車初の本格的コンポジット方式を導入しており、以前の溶接方式と異なり、被弾した装甲を交換したり、あるいは、さらに防御性の高い装甲が開発された際には簡単に取り付ける事ができるようになった。パキスタン仕様と中国仕様でそれぞれ独自のERA(爆発反応装甲)を取り付けている。ロシア製の爆発反応装甲コンタークト5をフル装備した時で48tと、比較的軽量である。

西側諸国の技術も積極的に採用し、エンジンはイギリスチャレンジャー1で採用されているパーキンス・コンドー水冷ディーゼルエンジンの1,200hp版を搭載している。トランスミッションにはフランスルクレールにも採用されたSESME社製SM-500オートマチックミッションを採用し、FCS(射撃統制システム)は85-IIAP式戦車で使われたイスラエル製ISFCS-212の改良型など、実績のあるコンポーネントを数多く取り入れた。

90-II式戦車は中国では正式採用されなかったものの、後にこの車体をベースに再設計された98式戦車99式戦車が現在中国陸軍主力戦車として正式採用されている。

装備・スペック

主砲

旧ソ連系の2A46 125mm滑腔砲とカセトカ自動装填装置を搭載している。砲自体は中国製で、オリジナルより砲身の寿命が長いとされている。自動装弾装置は1分間に10〜12発の射撃が可能である。APFSDS弾、HEAT弾・HEAT-FRAG弾の各種砲弾と、後にはインド軍T-90に対抗出来るよう、9M119 レフレークス対戦車ミサイルの発射機能も追加された。具体的には、タングステン合金製弾芯の125-I APFSDS-T弾の場合は弾芯のL/D比が20:1で、砲口初速1,730m/秒、最大射程2,500~3,000m(夜間有効射程は850–1,300m)、射距離2,000mで460mm厚の均質圧延鋼板 (RHA) を貫徹できる。劣化ウラン製弾芯の125-II APFSDS-T弾(中パ共同で開発したものでソ連/ロシア製APFSDS-T弾よりも弾芯のL/D比が長いものになっている)は、2,500mにおいて命中角60度で厚さ350–400mmの均質圧延鋼板を貫徹し、2,000mで600mmの均質圧延鋼板を貫徹する能力を有するといわれている。

射撃統制装置は、スタビライズされたレーザー測遠機の組み込まれた砲手用サイトや、弾道コンピューター等から構成されている。

1998年には、パキスタンの砂漠地帯で試作車の評価試験が行われており、この試験の公式発表によると、アル・ハーリド戦車は2,000m離れた動目標に対して、40km/hの速度で移動しながら射撃を行い、85%の命中率を発揮したという。

エンジン

当初は中国でライセンス生産したMTU396 1,200hpディーゼルエンジンを搭載していたが、後にイギリス製パーキンス・コンドーCV12-1200TCA、ウクライナ製6TD/6TD-II 1,200hpディーゼルエンジン、ドイツ製MTU-871/TCM AVDS-1790 1,200hpディーゼルエンジンなど、試作を重ねるごとに変更が行われた。

パキスタンモデルであるアル・ハーリドにおいては一時期フランス製1,500hpディーゼルエンジンも検討されたが、1998年のパキスタン核実験の影響で、この案は中止された。後にウクライナからT-84を320輌購入した経緯もあって、安価でかつ同車と互換性のあるウクライナ製6TD-II 1,200hpディーゼルエンジンを採用した。

90-II式戦車は0–32km/hまで約10秒で加速できる。加えて全自動変速装置を搭載し、中国製戦車としては初めて超信地旋回が可能となった。




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