120mm迫撃砲 RT
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 23:52 UTC 版)
来歴と設計
開発は、トムソン-ブラーント社によって行なわれた。なお、同社はタレス・グループとEADSの合弁事業であったが、のちにTDA社と改名し、2005年以降はタレス・グループの100パーセント子会社となっている。
従来の107mm迫撃砲と同様にライフル砲身であるが、107mm迫撃砲と異なり牽引用のタイヤを装備しており、移動・展開が容易である。このタイヤは射撃の際に取り外す必要はない。牽引時は専用のフックを砲口に取り付けて使用するが、通常の砲より軽量であるため必ずしも砲兵トラクターを使用する必要はなく、陸上自衛隊では高機動車を改造した「重迫牽引車」、アメリカ海兵隊ではグロウラーITVが使用されている。
砲身後部の撃針は可動式で、切換位置によって射撃方法を選択できる。撃針を突出させておけば墜発式(砲口から装填された砲弾がすぐに発射される)、逆に後退させておけば拉縄式(装填された砲弾は砲身後端にとどまり、砲手が任意のタイミングで撃発用のロープを引っ張り発射させる)となる。
採用国
フランス
本砲は、1980年代後半よりフランス陸軍において採用されている。フランス陸軍においては、VAB装甲車から派生したVTM-120(Véhicule Tracte Mortier de 120 mm)牽引車によって牽引されており、1個射撃班は、車両の乗員2名と砲員4名の合計6名より構成される。
平時は砲兵連隊に8門ずつ配置されて、榴弾砲やMLRSを補完しているが、戦時の際は本来の所属である歩兵連隊に配備されて運用される。
アメリカ合衆国
アメリカ海兵隊は、HIMARSやM777 155mm榴弾砲を補完する小型・軽量な間接照準火力として本砲に着目し、M327 EFSS(Expeditionary Fire Support System)として本砲を採用して、2009年3月より運用を開始した。ただし実運用ではM327をMV-22Bの機内に収容することが困難だったほか、その牽引車として採用されたグロウラーITVの信頼性不足もあり、2017年には退役の予定が発表された[2]。
また、LAV-Mの後継となる自走迫撃砲としてLAV-EFSSも開発されている。これは、LAVシリーズの車体をベースに、自動装填装置を搭載して発射速度を向上させたXM326 ドラゴンファイア-II迫撃砲を搭載したものである。
日本(陸上自衛隊)
M2 107mm迫撃砲の後継として1992年(平成4年)度から採用しており、豊和工業がライセンス生産している。陸上自衛隊では、牽引車両として高機動車を改造した重迫牽引車を使用する。現在も調達を続けており、2020年度(令和2年度)は6門調達予定である[注釈 1]。調達価格は約3,400万円である。自走型として、96式自走120mm迫撃砲も開発・配備され第7師団第11普通科連隊の重迫撃砲中隊に集中配備されている。
普通科の中では最大の火砲で、師団・旅団の普通科連隊・水陸機動連隊の重迫撃砲中隊、(一部旅団は普通科連隊本部管理中隊重迫撃砲小隊)に配備されているほか、野戦特科部隊でも即応機動連隊の火力支援中隊や水陸機動団特科大隊、またその機動性から第1空挺団特科大隊にも装備されている[3][4]。空輸の際は、CH-47J/JA輸送ヘリコプターにより吊り下げられて空輸される。 一般公募で付けられた愛称は「ヘヴィモーター」だが、他の装備と同様に愛称は部隊内では使われず、隊員達からは「重迫」「120迫(ひゃくにじゅっぱく)」などと呼ばれている。
-
第1空挺団の120mm迫撃砲RT。重迫牽引車で牽引されている。
-
CH-47Jで吊り下げ輸送される120mm迫撃砲 RT
-
第18普通科連隊の120mm迫撃砲 RT。発砲炎で煌輪が出来ている。
予算計上年度 | 調達数 |
---|---|
平成4年度(1992年) | 47門 |
平成5年度(1993年) | 55門 |
平成6年度(1994年) | 53門 |
平成7年度(1995年) | 52門 |
平成8年度(1996年) | 38門 |
平成9年度(1997年) | 42門 |
平成10年度(1998年) | 27門 |
平成11年度(1999年) | 27門 |
平成12年度(2000年) | 22門 |
平成13年度(2001年) | 11門 |
平成14年度(2002年) | 11門 |
平成15年度(2003年) | 6門 |
平成16年度(2004年) | 6門 |
平成17年度(2005年) | 6門 |
平成18年度(2006年) | 4門 |
平成19年度(2007年) | 4門 |
平成20年度(2008年) | 4門 |
平成21年度(2009年) | 4門 |
平成22年度(2010年) | 4門 |
平成23年度(2011年) | 1門 |
平成24年度(2012年) | 3門 |
平成25年度(2013年) | 2門 |
平成26年度(2014年) | 1門 |
平成27年度(2015年) | 2門 |
平成28年度(2016年) | 5門 |
平成29年度(2017年) | 6門 |
平成30年度(2018年) | 2門 |
平成31年度(2019年) | 12門 |
令和2年度(2020年) | 6門 |
令和3年度(2021年) | 11門 |
令和4年度(2022年) | 19門 |
諸元・性能
諸元
性能
砲弾・装薬
弾種は榴弾のほか、対軽装甲弾、煙弾、照明弾などがある[8]。
注釈
- ^ 当初の計画での配備により充足完了していた部隊の砲は新編部隊(1連隊重迫中隊の再編及び新編部隊である50連隊-52連隊)への管理替えなどで現在のところ各部隊共に完全充足しておらず、現在は引き続き必要数の調達が主体の他、52連隊の重迫小隊が中隊編成(16門による完全編成へ準備中)への拡充や水陸機動団特科部隊への配備予定である事から引き続き調達は行われる予定。
出典
- ^ “A Show Of Shame - Belgian Weapons Deliveries To Ukraine”. 2022年11月27日閲覧。
- ^ Joseph Trevithick (2019年6月30日). “Marine Corps Is Finished With Its Long-Troubled Lightweight 120mm Mortar Systems”. The War Zone
- ^ 駐屯地機関紙「湯布院」第29号(pdf) - 陸上自衛隊湯布院駐屯地
- ^ 水陸機動団の装備 陸上自衛隊 水陸機動団(2018年5月2日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
- ^ 防衛白書の検索
- ^ 防衛省 予算等の概要
- ^ MO 120mm RTF1(フランス陸軍)
- ^ “120mm迫撃砲RT”. www.mod.go.jp. 2020年4月7日閲覧。
固有名詞の分類
- 120mm迫撃砲 RTのページへのリンク