霧
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 02:35 UTC 版)
定義
水蒸気を含んだ大気が冷やされるなどして飽和状態に達し凝結、含まれていた水蒸気が小さな水滴となって空中に浮かんでおり、それが地表に接している状態[1][3][4]。
雲との違い
発生原理も構成する水滴も雲とは変わらない。観測上、地面に接しているものを「霧」、地面に接していないものを「雲」と定義している[4]。特に山にかかる霧(雲)のような場合、霧が差す山肌に立つ観測者からは霧と認識されるが、麓の観測者からは雲と認識されるような、場所により呼称が変わることが生じうる[3][4]。なお、登山の場面などで霧や低い雲のことをガスと呼ぶことがある[5][6][7][8][9][10]。
靄(もや)との違い
霧よりも薄く灰色がかっている。水滴や微粒子の浮遊により生じ、霧の延長線上にある現象で、視程が1 キロメートル以上のものを靄と呼んで区別する。気象観測では視程が1 キロメートル以上のものを靄と呼んで区別する[1][2]。
分類
発生要因による分類
その発生要因によって、主に以下のように分類される。
- 放射霧
- 晴れた日の夜間には、地表面から熱が放射され地面が冷える(放射冷却)。そうして冷えた地面が、地面に接している水蒸気を多く含んだ空気を冷やすことで発生するもの。夜から早朝にかけて発生し、日射の強まりとともに蒸発して消えていく。雨が上がった後に生じやすい。風が強いと空気がかき混ぜられるため、生じにくい。地形の影響で冷気が溜まりやすい盆地や谷沿いに発生しやすく、それぞれ盆地霧、谷霧という[3][11][12][13][14]。
- 移流霧
- 暖かく湿った空気が移動(移流)して水温の低い海上や陸地に乗り、下から冷やされることにより発生するもの。暖流と寒流の境目付近に生じやすい[3][11]。地表近くに混合層が発達していると、混合層全体が冷えて厚い霧を生じることがある[14]。夏ごろ三陸沖から北海道の東海岸などに発生する海霧がその代表的な例で、寒流(親潮)上への暖気の移流が原因であり、しばしば霧は内陸にまで移動し、厚さが600 メートルに達することもある[3][11][15][16]。
- 蒸気霧
- 暖かく湿った空気が冷たい空気と混ざって発生する。冬に息が白くなるのと原理は同じ。暖かい水面上に冷たい空気が入り、水面から蒸発がおき、その水蒸気が冷たい空気に冷やされて発生するもの。川や湖の上にみられ、川霧などと呼ばれる。水温と気温の差が大きい時に生じやすい。風呂やコップに入れた暖かい飲み物の湯気も原理は同じ。極地で秋から冬によく生じ、海氷の周りの海面や、表面が氷結する前の川や湖にみられる[3][11]。冬の日本海上でもこの成因をもつ湯気のような霧(
気嵐 ())が生じる[11][17]。 - 前線霧
- 前線、主に空気が暖かい温暖前線付近で降雨に伴い発生する。雨が降り湿度が上がったところに温度の比較的高い雨が落ちてくると、雨粒から蒸発したさらに湿度が上がり、霧が生じる。雨粒が気温より温度が高いときに生じやすいと考えられる[3][11][14][18]。
- 上昇霧
- 山の斜面に沿って、湿った空気が上昇し冷やされて発生する。遠くから見ると山に掛かった雲に見えるが、雲に覆われた山の地表では霧となる。粒子は雲粒に近い大きさにもなり、層雲に似た性質をもつ。滑昇霧ともいう[4][3][11][14][19]。
複数の要因、例えば放射霧と移流霧の要因を持つ霧なども発生することがある。盆地霧にも放射霧と移流霧の性質を併せ持つものがみられる[3][11]。
層雲が発達して次第に厚みを増し、雲底が地面に接して霧となることがある[14]。反対に、地表の加熱や風の強まりによって、霧が地表から離れて層雲に変化していくことがある[20]。
水平視程と濃度による分類
- 水平視程が1キロメートル未満であるが、天空がかすかに見えるようなものを低い霧という[21][22]。
- 水平視程が1キロメートル以上であるが、人間の視線の高さより低い地面付近にのみあるものを地霧という[22][23]。こちらは気象観測上は霧の定義(水平視程1キロメートル未満)から外れる。
類似の大気現象
- 気温0 ℃以下のとき生じることがある、過冷却の水滴でできた霧を着氷性の霧という。物体に付着して凍結・堆積することがあり、主に樹木に樹氷や粗氷を形成する。航空機への着氷の原因となることから航空気象では気温0 ℃以下における霧をすべて着氷性の霧 (FZFG)として報告する。なお、気温-10 ℃以下になると氷晶が含まれるようになり、細氷のように大気光学現象を生じうる[24][25][26][27]。
- 気温約-30 ℃以下の低温で、微小な氷の結晶が浮遊し視程が低下する現象を氷霧という。主に晴れた風の弱い時に生じる[22][28]。
- 主に湿度75 %未満の時、乾いた微粒子が浮遊し視程が低下する現象を煙霧という[29][30]。
霧の性質
霧が発生している状態では大気中に浮遊する水滴が光を散乱するために、大気は白く霞んで見え、視程(見通すことのできる水平距離)が狭くなる。霧に十分に光が当たっているときは霧粒をはっきりと確認することができる[1]。視程の低下度は、霧の水滴の密度や粒径に相関がある[2]。霧に煙や塵埃が混じると、灰色や黄色みがかって見えることがある[1][2]。
通常、霧の中の相対湿度は100 %に近く、湿っぽく冷たい感触の環境である[1]。
霧虹は太陽光や月の光が霧に投影する虹。白虹ともいう。白色の帯で、たいていは外側に細く赤みがかった領域、内側に青みがかった領域がある。色彩を生じる光の回折が少ないためこのような色味を呈する[31]。
注釈
出典
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- ^ a b c d e “Fog compared with Mist”. International Cloud Atlas. World Meteorological Organization (2017年). 2023年3月8日閲覧。
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- ^ “登山用語「ガス」”. 図解ひとり登山. 2024年3月25日閲覧。
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- ^ “日本酒製造に使った霧化技術を、廃液処理やリサイクルに活用”. 日経テクノロジーonline (2013年9月10日). 2015年12月10日閲覧。
- ^ 松浦一雄「超音波霧化分離の工業的応用」2011年、NAID 130000655178。
- ^ "霧". 小学館『精選版 日本国語大辞典』. コトバンクより2023年3月8日閲覧。
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