金星 観測

金星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 01:15 UTC 版)

観測

金星は恒星ではないが、全天において年間を通じて観測できる天体としては太陽、月に次いで3番目に明るい。そのため日没前後で最初に観測できる天体として「宵の明星」、日出前後では最後まで観測できるため「明けの明星」と称されている。 日中も観測することはできるが、太陽に近い特性から目測は困難である。 また、夜間は太陽とともに地平線以下に沈んでしまうため観測できない。

目視

明けの明星
金星の観測モデル。満月形の外合時に観測上の視直径は最小となり、地球に最も近づく内合時(の直前)に視直径が最大となる。

公転軌道が地球より内側にある金星は、天球上では太陽の近くに位置することが多い。地球から見た金星は、のような満ち欠けが観測できる。これは内惑星共通の性質で、水星も同じである。内合のときに「新金星」、外合のときに「満金星」となる。なお、合とその前後は天球上で太陽に近すぎるため、太陽の強い光に紛れて肉眼で確認することはきわめて困難である。

地球と金星の会合周期は583.92日(約1年7か月)であり、内合から外合までの約9か月半は日の出より早く金星が東のに昇るため「明けの明星」となり、外合を過ぎると日没より遅く金星が西のに沈むため「宵の明星」となる。その神秘的な明るい輝きは、古代より人々の心に強い印象を残していたようで、それぞれの民族における神話の中で象徴的な存在の名が与えられていることが多い。また地域によっては早くから、明けの明星と宵の明星が(金星という)同一の星であることも認識されていた。

地球から見ると、外合から東方最大離角を経て最大光度までは、徐々に明るくなり、最大光度から内合にかけては暗くなり、内合から最大光度までは明るくなり、最大光度から西方最大離角を経て外合までは徐々に暗くなっていく[34]。外合のときに視直径はもっとも小さく、内合のときにもっとも大きい[34]。外合のときは満月、最大離角のときは半月、内合のときは新月、最大光度のときは三日月のような形に見える[34]

西方最大離角のときには日の出前にもっとも早く昇り、東方最大離角のときには日没後にもっとも遅く沈む。

明けの明星の見かけ上の明るさがもっとも明るくなるのは内合から約5週間後[35]である。そのときの離角は約40度、光度は-4.87で、1等星の約220倍の明るさになり、明るくなりかけた空にあってもひときわ明るく輝いて見える。内合から約10週間後[35]に西方最大離角(約47度)となる。

内合のときに完全に太陽と同じ方向に見える場合、金星の太陽面通過と呼ばれる現象がまれに起こる。

金星がもっとも明るく輝く時期には、金星の光による影ができることがある。オーストラリア砂漠では地面に映る自分の影が見えたり[36]、日本でも白いの上にをかざすとができたりする[37]。なお、過去には SN 1006 のような超新星が地球上の物体に影を生じさせた記録も残っているが、現在観測できるそれほど明るい天体は太陽、金星、天の川のみ[37]である。


注釈

  1. ^ 最低温度は雲の上層部のみで観測される
  2. ^ 金星は水星と比べ太陽からの距離が倍、太陽光の照射は75% (2,660 W/m2) である。
  3. ^ 天王星も約98度の赤道傾斜角を持つため、太陽が西から昇って東に沈む。

出典

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