超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか
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補足
「マクロスシリーズ」中の位置付け
映画予告編のナレーションでは「主演、リン・ミンメイ」「早瀬未沙、ゆれる女心を演じます」などアニメ世界内の映画(劇中劇)を思わせる演出がなされている。1990年代以降に製作された『マクロス7』などの続編作品内では、『愛・おぼえていますか』は「ゼントラーディ軍との第一次星間大戦(2009年 - 2010年)の戦勝20周年を記念して、2031年に公開された歴史映画」と位置付けられるようになった。これとは別に『超時空要塞マクロス』はシリーズドラマとしてテレビ放送されたもの[注 5]で、演出により描き方は異なるものの、両作品とも史実を題材にした物語であると説明されている。
『愛・おぼえていますか』が映画化された2031年当時は、宇宙移民により人類の生活圏が銀河系全域に拡大した反面、植民惑星間の紛争やゼントラーディ人の武装蜂起が深刻化しつつあった。そのため撮影に全面協力した統合政府の意向で、先人が果たした「異星間交流」の意義を広く再認識させたいというプロパガンダの意味合いも含まれている。公開後大ヒットした本作のメッセージは、14年後の2045年代を舞台とする『マクロス7』の登場人物の生き方にも影響を与え、ロックバンドFire Bomberの活動に関係することになる。
テレビ版と劇場版の違い
河森監督は両作品の特徴について、テレビ版は「ドキュメンタリースタイルなのでわりと日常的に作られていて、史実にやや近いという想定」、劇場版は「2時間でコンパクトにまとめなくちゃいけないのでドラマ的な編集がなされているという設定」と答えている[26]。また、劇場版の「劇場」には映画館での公開だけでなく、「舞台劇」という意味も込められているという[27]。「巨大異星人同士の抗争に巻き込まれた人類(マクロス)」という骨格はテレビ版と変わらないが、2時間の映画にまとめあげる上で設定の大部分にアレンジが施されている。
相違点
- 巨大異星人とその抗争図
- テレビ版 - ゼントラーディ軍対監察軍の争い。ゼントラーディ軍は男女混合軍だが、規律上部隊は別編成となっており、ラプラミズはボドルザー直衛部隊の指揮官で、クァドラン・ローはゼントラーディ軍女性兵用の機動兵器。
- 劇場版 - ゼントラーディ(男性種族)対メルトランディ(女性種族)の争い。クァドラン・ローはメルトランディの機動兵器。ゼントラーディ、メルトランディともキャラクター名がコードネーム(製造番号)付きになった(例:ミリア・ファリーナ→ミリア639)。この設定変更に伴い、ゼントラーディは有機的な曲面主体のグリーン系に、メルトランディは無機的な直線主体のパープル系にまとめられている。ボドルザーとラプラミズは独立した肉体を持たず、テレビ版とは形状が異なる要塞サイズの旗艦中枢部として固定され、巨人兵よりさらに巨大である。
- 『マクロス7』制作時の年表では前者の設定だが、『マクロス7』では劇中劇としての本作の影響で[要出典]ゼントラーディ女性を「メルトラン」と呼称するようになったとしている。
- 第一次星間大戦
- テレビ版 - 期間は2009年2月から2010年3月までの約1年間。マクロスとゼントラーディ軍が戦い、監察軍は地球に落下した砲艦(後に地球人によりマクロスへ改修)以外は登場しない。地球はマクロス帰還後のゼントラーディ基幹艦隊による総攻撃でほぼ全滅する。ボドルザーは要塞内部に突入したマクロスによる反応弾頭ミサイルの一斉発射により、要塞ごと爆散させられる。
- 劇場版 - 期間は2009年2月から9月までの約7か月。マクロス、ゼントラーディ、メルトランディの三つ巴の戦い。地球はマクロス発進後間もなく全滅させられた設定となっている。ボドルザーは要塞内部に突入してきたマクロスから離脱した輝操縦のバルキリーによりミサイルと集中射撃を受けて破壊され、フォールドシステムの暴走で各所が消滅し、機能を喪失する。
- マクロス
- 三角関係の構図
- 一条輝の軍人としての経緯
- テレビ版 - 輝は最初は民間人(エアスタントレーサー)だったが、マクロス乗艦後にスタントの先輩だったフォッカーの誘いで入隊、彼の部下としてスカル大隊に配属される。その後、戦績によりバーミリオン小隊長に昇格、新人のマックスと柿崎を部下とする。後にフォッカーと柿崎が戦死、輝とマックスがそれぞれ中隊長・小隊長に昇格する。
- 劇場版 - 輝は物語冒頭より軍人であり、フォッカーとの関係はほぼ同じだが、マックスと柿崎とは同期であり、全員スカル小隊に所属している。小隊長(スカルワン)フォッカーが輝とともにゼントラーディに捕虜とされ行方不明となったため、マックスが小隊長に昇格。マックスの未帰還(メルトランディへの帰化)と柿崎の戦死により、最終決戦では輝がスカルワンとして出撃する(マクロス護衛およびボトルザー打倒任務のための単機出撃であり僚機はいない)。
- 人類の起源
- テレビ版 - 50万年前、地球に立ち寄ったプロトカルチャーの調査船が人類の祖先に遺伝子操作を行った(『マクロス7』制作当時の年表における設定)。
- 劇場版 - プロトカルチャーが男と女に分かれて戦争となり、都市宇宙船アルティラで地球に逃げ延びた人々が人類の祖先に遺伝子操作を行った。2万年前、この人々はアルティラを海底に隠して地球を離れた。
2003年発売のPS2用ゲーム『超時空要塞マクロス』ではプレイヤーの配属先として空母プロメテウスか宇宙空母アームド-01を選ぶことで、設定の異なるテレビ版と劇場版の2つのコースを体験できる。
幻のシーン
本作は当初1984年8月25日公開予定[28]だったが、先行上映が7月上旬に繰り上がったため制作スケジュールが短縮された(制作期間は実質半年間[29])。また、上映時間の問題もあり、脚本や絵コンテでは予定されていたもののカットされたシーンがいくつかある。
絵コンテでは、本編終了後にエンディングテーマ『天使の絵の具』に乗って終戦後のリン・ミンメイのコンサートシーンが映し出され、主人公たち3人の未来が明示されて終わるはずだったが、作画が見送られ、公開版では暗転した画面にスタッフロールが流れる形式であった。監督の河森は、後になって考えると、このエピローグがあると観客の想像の余地がなくなるとして、カットされて良かった面もあるとしながらも、制作したいという願望を述べていた[30]。
公開3年後の1987年、このコンサートシーンを映像化したOVA『超時空要塞マクロス Flash Back 2012』が発売された。以後販売されたビデオ、LD、DVDソフトはエンディングの前半部分をOVAのコンサートシーン(「天使の絵の具 part1」)に差し替え、タイトルも『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 完全版』に変更している。2007年発売のHDリマスターDVDメモリアルボックスは「劇場公開版」と「完全版」のエンディング違いの2種類のディスクを収納している(劇場公開版は上映時のオリジナル音声を収録)。
他の幻のシーンとしては、最終決戦前のマクシミリアン・ジーナスとミリア639の結婚式がある(絵コンテ改稿段階でカット[31])。このシーンは『マクロス7』作中の回想シーンで新たに作画され、原画を美樹本晴彦が担当した。公開当時の雑誌・ムック本にはこれらの絵コンテやコスチュームデザインが掲載されているが、ミンメイのステージ衣装はOVA版よりもシンプルなデザインであった。
劇場版ストーリー
本作のオープニングではSDF-1 マクロスが地球に向けて宇宙航行を続けている理由や、同艦内の市街地で大勢の市民が生活している理由などが説明されていない。河森は、状況説明を省いた理由について「最も見て欲しいところに注目してもらうために、不必要なところを切り捨てた[32]」「意地でも説明ゼリフは入れまい!と思っていた[33]」と述べたが、スタジオぬえの先輩である高千穂遙は「河森がテレビ版『マクロス』を見ていない一般観客を相手にした以上、その賭けは敗れたと見るほかはない[34]」と批評した。
1997年発売のSS・PS用ゲーム『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』のオープニングムービーでは、河森による監修のもとでテレビシリーズ第1話から第3話までのエピソードに相当する開戦時の状況が描かれている。この映像は、DVD『マクロス20周年プレミアムコレクション』(2002年)や『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか HDリマスター メモリアルボックス』に収録されている。
2009年2月、SDF-1マクロスの進宙式典が催されていた南アタリア島に、突如ゼントラーディ軍上陸部隊が奇襲を仕掛け、島民はマクロス艦内に避難する。支援のため洋上の空母プロメテウスからバルキリー隊が発進するが、直後に衛星軌道上からのビーム攻撃でプロメテウスが撃沈。母艦を失ったロイ・フォッカー指揮下の一条輝、マクシミリアン・ジーナス、柿崎速雄らスカル小隊は南アタリア島へ急行する。バルキリー隊と敵機動兵器の交戦中、マクロスは地上付近で緊急フォールドを敢行(テレビ版と異なり南アタリア島は巻きぞえで空間転移しない)。脱出直後、間一髪で島にビーム爆撃の集中砲火が降り注ぐ。
マクロスは大爆撃から逃げ延びるが、フォールドシステムの誤作動で太陽系外周の冥王星付近まで飛ばされ、地球の安否も分からぬまま7か月の帰還航海の途に就く。艦内には長距離航海用の仮設居住空間があり、南アタリア島市民は市街地を建設して生活を始める。その街でリン・ミンメイはアイドル歌手としてデビューし、映画冒頭の5か月目にファーストコンサートを迎える。
また、一条輝らが行方不明になっていた1か月間にマクロスは土星から地球まで航海しているが、ゲーム内では木星付近でのゼントラーディ軍放棄戦艦の調査(敵の正体の判明)、火星サラ基地での物資補給、テレビシリーズのダイダロス・アタックに代わるアームド・アタックなどのイベントが設けられている。
2012年発売のBD版ソフトに収録された「Ver.2012」では、オープニングに状況説明のテロップが追加された。
初期シナリオでは、輝と未沙がデフォールドしたのは地球ではなく、すでに滅んだプロトカルチャーの移民星であり、マクロスもそこに逃れてくる展開だった。このシナリオをもとにした富田祐弘によるノベライズが秋田書店の『マクロス・ポストカードブック』に所載されている。
その他
- ゲスト出演
- アフレコに外国人エキストラが参加し、ブリッジオペレーターの交信[注 6]、艦内アナウンス、繁華街のモブシーンで英語・スペイン語などの音声を担当した。また、プロモーションの一環として、当時テレビ番組『世界まるごとHOWマッチ!!』の回答者として人気者だった弁護士ケント・ギルバートがコンダ88333役に起用された。ワレラ25258役のジェフリー・スミスはギルバートの同業者である。
- プロモーション
- 劇場公開時、ファミリーレストランチェーンすかいらーくグループが抽選でバッジやパズルが当たるタイアップ企画「マクロスフェア」を催した。マクロスグッズの詰め合わせ袋も販売したが、店内のグッズにはすかいらーくマークが入っているのに対し、一般販売のグッズには「マクロス(MACROSS)1984-SUMMER」と入っている。また、テレビCMでは映画の場面と『愛・おぼえていますか』の曲に乗せて、リン・ミンメイ(飯島真理)の「味・おぼえていますか」なる台詞が付けられた。なお、同社はかなり後年のCMでも同曲を使用している。
- パロディ
- 作画スタッフのお遊びとして、ボドルザー艦内で輝のバルキリーから一斉発射されるミサイルの中にサントリータコハイとバドワイザービールの缶が混じって飛んでいる(通称「タコハイミサイル」「バドワイザーミサイル」)。このカットの担当者は作画監督補の飯田史雄(漫画家SUEZEN)[36]。後にやまとから発売された1/48バルキリー玩具のスーパーパックセットには、これを再現した缶ラベルのシールが付属していた。
- リメイク企画
- 1990年代初めにアメリカで本作の実写特撮リメイク企画が立ち上がり、河森は渡米してハリウッドの製作スタッフと準備にとりかかった(マクロスシリーズ#幻の企画を参照)。これを契機に国内外で「マクロス4大プロジェクト」が発表され[37]、このうち『マクロスプラス』(OVA・劇場版)と『マクロス7』は実現したが、ハリウッド実写版だけは実現しなかった。
他作品における引用
- アニメ
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- ケロロ軍曹 - 第146話のサブタイトルが「冥 おぼえていますか? であります」。なお、本編はパロディではない。
- バンブーブレード - 第7話に劇中アニメ『マグロス 鯵・おぼえていますか』のポスターが登場する(劇中アニメのタイトルロゴもポスター自体のデザインも、本作品のパロディ)。
- ヴァンドレッド - 男女種族の抗争という企画原案に本作品が影響している。
- アベノ橋魔法☆商店街 - 第3話にロイ・フォッカーのミサイル乱射シーンへのオマージュがある[38]。
- 涼宮ハルヒの憂鬱 - 第12話「エンドレスエイト」で主人公のキョンが自転車を運転しながらロケット花火を乱射し、柿崎の名を叫ぶ(板野一郎#板野サーカスを参照)。
- ゲーム
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- ギャラクシーエンジェル - ゲーム版最終話は本作品をモチーフとし、第1作においては歌も飯島真理が担当した。
- タイムトラベラーズ - 『愛・おぼえていますか』を歌うリン・ミンメイを彷彿とさせるシーンが存在する。ディレクターであるイシイジロウが当該シーンをオマージュであると明かした[39]。
注釈
- ^ 大阪地区のみ7月7日より先行上映。関東地区は7月21日、中部東海地区は8月11日より上映。
- ^ 羽田が作曲を担当した特撮映画『さよならジュピター』(1984年)では本作のBGMが流用されている。
- ^ 徳間書店刊行のアニメージュ誌上で実施された。風の谷のナウシカは同誌連載の同名の漫画を原作者がアニメ化したものであり、テレビアニメの劇場版とは趣を異にした。
- ^ 本作ではセルを最多でJセル(10枚)まで重ねて撮影している。通常のアニメではEセル(セル5枚)までが限界である[20]。
- ^ 『マクロスF』のサウンドトラック『娘フロ。』のブックレットでは一条輝、リン・ミンメイ、早瀬未沙を題材にした連続ドラマ「トライアングラー」が放送されたとの記述がある。同ドラマが現実に放送されたテレビ版『超時空要塞マクロス』と同じものであるかは明確にされていない。
- ^ 劇場版では「ブリッジのセクションごとに使用言語が分けられている」というマルチリンガル設定がある[35]。
- ^ テレビシリーズは開局前のため、福島テレビ(TBS・フジテレビ系列→JNN脱退でフジテレビ系列に一本化)で放送された。
- ^ テレビシリーズは編成上の都合によりテレビ長崎(フジテレビ・日本テレビ系列)で放送された。
- ^ 土星リング内でブリタイ艦へ飛び込んだロイ・フォッカー機のコクピットカバーの色を、黄色から黒へ修正。
- ^ BD版は前述の『Flash Back 2012』映像をエンディングに付け加えた『完全版』と劇場公開版を1ディスクに収録しポップアップメニュー画面から選択が自在に可能だが、『完全版』では『Flash Back 2012』映像箇所のマスターが行方不明のため、その部分だけはアップコンバートで収録されている。
出典
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- ^ NHKアニメ [@nhk_animeworld] (2019年5月5日). "作品投票2位は「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」でした!". X(旧Twitter)より2021年4月29日閲覧。
- ^ 「『マクロスの証言』 河森正治インタビュー」『メガミマガジン クリエイターズ』Vol.11、学習研究社、2008年、8頁。
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- ^ 高千穂遙 「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」『キネマ旬報』1984年10月上旬号、キネマ旬報社、157頁。
- ^ 「MACROFEX」『アニメック』1984年9月号、66頁。
- ^ アニメの作画を語ろう animator interview 板野一郎(5) - WEBアニメスタイル(2005年2月1日)。
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- ^ アニメの作画を語ろう ガイナックス若手アニメーター紹介(1) - WEBアニメスタイル
- ^ 「タイムトラベラーズ」の制作にあたり,ディレクター イシイジロウ氏は,どうして自らに逆境と枷を課したのか(2/2) - 4Gamer.net(2012年7月12日)2012年8月9日閲覧。
- ^ ジェシー|ジェシーのワンダーランド|Victor Entertainment
- ^ a b 船津稔 (2012年3月23日). “バンダイナムコ、「超時空要塞マクロス~愛・おぼえていますか~Hybrid Pack」。PS3のゲームと映画をBlu-ray1枚に収録。「30周年アニバーサリーBOX」も登場”. GAME Watch. 株式会社インプレス. 2023年3月20日閲覧。
- ^ a b c d e f “「マクロス」シリーズの劇場版5タイトルが装いも新たにブルーレイで登場!!”. バンダイビジュアル (2015年). 2016年4月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月29日閲覧。
固有名詞の分類
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小さな妖精ミルン 地球少女アルジュナ 超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 地球防衛企業ダイ・ガード 珍犬ハックル |
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