筑後川昇開橋 筑後川昇開橋の概要

筑後川昇開橋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/29 14:22 UTC 版)

遊歩道として残る昇開橋
下降状態の昇開橋

概要

筑後川昇開橋は、鉄道省佐賀線の鉄道橋梁筑後川橋梁(ちくごがわきょうりょう)[1]」として建設され、1935年(昭和10年)竣工、同年5月25日に開業した[2]。舟運との共存のため、橋の一部が可動式となっている可動橋には旋回橋、跳開橋(跳ね橋)、昇開橋などがあるが、本橋は橋桁の一部が垂直方向に上下する昇開橋として日本に現存する最古のものである。橋の全長は507.2メートル、可動部分の長さは24.2メートル、昇降差は23メートルである。本橋の設計施行に中心的役割を果たしたのは、鉄道技師の釘宮磐(鉄道省熊本建設事務所長)であった。昇開橋の仕組みそのものは、坂本種芳[3]が考えた。竣工当時は「東洋一の可動式鉄橋」と呼ばれた。また、この筑後川昇開橋の構造を解説するために精巧な模型が交通博物館(閉館)及び鉄道博物館埼玉県さいたま市)で展示されている。ちなみに、昇開橋の精巧模型は1937年(昭和12年)にフランスパリで行われたパリ万博に出展されたものである。

建設するにあたっては、位置的に筑後川の河口付近で、有明海干満の影響も直に受ける地理的条件があり、しかも、付近にはもあり、建設当時は船が主要交通機関であったため、大型船の往来も激しかった。通常の橋だと干満の影響で船が通れなくなってしまう可能性があったため、中央部の橋が可動して船が通れる構造になった。

国鉄の民営化を前に1987年(昭和62年)3月27日限りで佐賀線は廃線となり[2]、同橋梁も閉鎖され、筑後川を管理する当時の建設省からも撤去勧告がなされ、解体も検討された。しかし地元では橋存続の要望が強く、1992年(平成4年)9月17日に日本国有鉄道清算事業団から大川市へ無償譲渡され[2]1996年(平成8年)に遊歩道として復活し、現在では大川市と諸富町のシンボル的存在となっている。また、橋の両端には公園が整備されていて、現役当時の橋の姿のモニュメントや佐賀線で使われていた3灯式信号機や警報機などが保存されている。

1996年(平成8年)に国の登録有形文化財に登録、2003年(平成15年)5月30日に、国の重要文化財に指定され[4]2007年(平成19年)8月7日に日本機械学会より機械遺産(23番)に認定された。2009年(平成21年)7月30日から橋脚の修復や塗装の塗り替え、遊歩道に防水加工を施すなどの保存修理工事が行われ、2011年(平成23年)2月13日に通行が再開された[5]。調査費を含めた総事業費は約3億円。平成27年2月1日から平行滑車の劣化が原因で桁に歪みが生じたため補修工事が行われた。同年3月1日に通行が再開された[6][7]

観光情報

昇開橋稼動時間表
稼働日
1月4日〜12月28日
休業日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日)
稼働時間
9:00〜17:00(詳細は写真参照)
通行料金
不要(ただし、橋の運営資金のための寄付金箱が橋の中央部の事務所前に設置されている)

両岸に駐車場があり約20台ほど駐車できる。佐賀県側は特産物直売所「橋の駅ドロンパ」。また、橋はペット連れやバイクの乗り入れは不可能である。自転車は降りて通行する事は可能。なお、気象条件により休業の場合があり、大型船の航行により稼働時間がずれる場合がある。

2011年12月に可動桁の滑車が故障したため、遊歩道としては一時通行止めとなっていたが、2013年(平成25年)6月に復旧し、現在は平常どおり通行できるようになっている[8]

2012年(平成24年)3月27日より日没〜22時にライトアップが行われている。


  1. ^ 歴史的鋼橋 筑後川橋梁 (M3-027) - 土木学会
  2. ^ a b c “「昇開橋」旧国鉄佐賀線の保存決まる 清算事業団九州支社 大川市へ無償譲渡”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 2. (1992年9月22日) 
  3. ^ 鉄道省の技師でありながら、副業でマジシャンをしていた。世界的なマジックの賞、スフィンクス賞を受賞している。また、マジック関連の著書「奇術の世界」「創作奇術四人集」「奇術に賭けた人生」も発表した。
  4. ^ 文化庁ホームページ
  5. ^ 昇開橋 塗り替え終了 鮮やかな赤 復活 [リンク切れ](2011年1月6日付西日本新聞朝刊)
  6. ^ 筑後川昇開橋が全面通行止め 架設80年で修理 [福岡県]
  7. ^ 筑後川昇開橋、1日に通行再開 [佐賀県]
  8. ^ 筑後川昇開橋工事完了および通行再開のお知らせ
  9. ^ 二階堂酒造・CMライブラリー「遠い憧れ」篇


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