日本のエネルギー資源
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/11 22:53 UTC 版)
化石燃料の埋蔵量は石炭を除いて非常に乏しく、原油、天然ガス、ウランをはじめとしたエネルギー資源を大量に輸入することで需要を満たしている状況にある。2010年の統計では、国内エネルギー需要の42%は輸入原油に依存しており[2]、世界輸出入総量の14.2%にあたる189Mt(世界3位)の石炭を輸入[3]、また世界輸出入総量の31.3%にあたる1084億m3の天然ガスを輸入している[4]。
なお、2010年頃は国内電力需要の4分の1を原子力発電としていたが、2011年の福島第一原子力発電所事故に伴う安全性危機によって原子力発電所稼働率が低下、2012年5月5日までにすべて停止した[5][6][7]。2015年8月11日、川内原子力発電所1号機が福島第一原子力発電所事故後に制定された新規制基準での稼働を全国で初めて再開した[8]。
概要
年 | 人口 (百万人) |
一次エネルギー供給量(Mtoe) | 電力消費量 TWh |
1人当たり一次 エネルギー供給量 (toe/人) |
GDP当たり一次 エネルギー供給量 (toe/1,000USD(2010年)) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
総量 | 国内生産量注1 |
総量の内、輸入量 注1 | 総量の内、|||||
1990年 | 123.6 | 439.23 | 75.11 | 377.70 | 801.28 | 3.55 | 0.11 |
1995年 | 125.4 | 494.31 | 98.40 | 408.49 | 923.85 | 3.94 | 0.12 |
2000年 | 126.8 | 519.00 | 105.62 | 429.23 | 1,011.60 | 4.09 | 0.12 |
2005年 | 127.8 | 520.42 | 100.28 | 435.93 | 1,049.36 | 4.07 | 0.11 |
2010年 | 128.0 | 498.81 | 99.26 | 409.59 | 1,011.60 | 3.90 | 0.11 |
2012年 | 127.6 | 452.28 | 28.32 | 435.27 | 988.92 | 3.55 | 0.10 |
2015年 | 126.9 | 451.38 | 27.87 | 435.24 | 1,021.55 | 3.54 | 0.1 |
注1:一次エネルギー=国内生産+輸入-輸出-国際輸送燃料となるため上表内では合計が一致しない[10]。 |
エネルギー消費の歴史
統計のある20世紀半ば以降の日本のエネルギー消費量の推移をみると、第二次世界大戦後の高度経済成長期に産業の成長に伴って急増し、1953年からの1963年までの10年間で2倍、1963年から1973年までの10年間でさらに3倍に増加している[11]。
その後1970年代の2度のオイルショックにより横ばい・微増となるが、1980年代にバブル景気期に入ると再び増加に転じた。バブル崩壊後失われた10年に入ってからも、やや増加傾向にあるが増加率は低い。オイルショック前の1973年を基準とすると、1990年代後半から2000年代前半にかけて1973年比1.5倍に達した後、2000年代後半に減少し、2021年時点では1973年比1.1倍の水準にある[12]。
この約50年間の動向を部門別に見ると、産業部門では省エネルギー化の進展により1973年比で2割の削減を達成した。一方、運輸部門ではトラック輸送の拡大などにより1970年代から1.5倍に増加した。また、家庭部門では家電製品の普及と多様化、業務部門ではOA機器の普及などによりそれぞれ現在まで増加傾向が続いており、2021年時点では1973年比で家庭部門が1.8倍、企業・事業所他部門が0.9倍、運輸部門が1.5倍に達している[12]。
GDP当たりのエネルギー消費量を国際比較すると、日本は1990年代から欧州先進国を上回る高効率の水準に達しており、2021年の時点でもイギリス・フランス・ドイツなどと同水準にある[12]。
電力
日本の電力使用量は年間約1,020TWh程度(2021年)で、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで世界で5番目に多く、日本の次に多いのがブラジルなどとなっている[14]。1人当たりでは年間7,865kWh(2015年)で、1990年に比べて21.8%増加している。また他国と比較すれば、14,240kWhのアメリカなどを下回っていて、世界では18番目の多さである[15]。発電設備合計容量においてもアメリカ、中国に次いで3番目に多い282GW(2010年)を有していたが、震災等の影響で2011年半ばには243GWに減少したと推定されている[2]。
年間発電総量に占める各発電方式の割合は、2010年度において火力59.3%(LNG27.2%、石炭23.8%、石油等8.3%の合計)、原子力30.8%、水力8.7%、新エネルギー等1.2%である[16]。原発事故後の2021年度では、火力72.8%、原子力6.9%、水力7.5%、新エネルギー等12.8%となり、火力発電が大幅に割合を増やしている[17]。
原子力発電所の合計発電容量はアメリカ、フランス、中国に次いで世界で4番目に多い。2011年2月時点で54基の原子炉があった。しかし、2012年4月に福島第一1-4号機が、2014年1月に同5-6号機が電気事業法上「廃炉」となった。また2015年4月に美浜1-2号機、敦賀1号機、島根1号機、玄海1号機が、2016年5月に伊方1号機が、2018年3月に大飯1-2号機が、同年5月に伊方2号機が、同年12月に女川1号機が、2019年2月に玄海2号機が、同年9月に福島第二1-4号機が、それぞれ廃炉となり、2021年時点では33基である(参照:日本の原子力発電所)。また、設備利用率(運転率)は2000年代に60%台前後だったが、2019年度は20.9%まで低下した[18]。
日本の電気料金は家庭用・産業用ともに主要国と同水準にある[19]。
2010年のIEAの統計では、家庭用は1kWh当たり0.2276ドルで世界で8番目に高く、産業用は同0.1578ドルで5番目に高かったが[20]、各国での課税・再生可能エネルギー導入促進政策により差が縮小した[19]。
送電網
他のほとんどの先進工業国が国内で同規格の送電網(ナショナルグリッド, National Grid)を持つが、日本は周波数が違うことにより2つの送電網に分断されているという特徴がある。東日本は50Hz、西日本は60Hzであり、両者をつなぐのは静岡県浜松市の佐久間周波数変換所、静岡県静岡市の東清水変電所、長野県朝日村の新信濃変電所、同村と岐阜県高山市を跨ぐ飛騨信濃周波数変換設備の計4か所・合計容量210万kW(2.1GW)の周波数変換所のみである。
周波数が異なる理由は電力事業初期の発電機の仕様が異なった事に由来してこれが現在まで続いており、変換所増強の必要性とコストの議論などもあったが、東日本大震災による電力危機でその欠点がにわかに浮上した(詳細は商用電源周波数#日本の商用電源周波数を参照)。震災で解列した発電設備容量は9.7GWであり、周波数変換所の能力1GW(100万kW)をはるかに上回っていた[21]。
電力会社
日本では主要10電力会社が地域別に担当を分け、各社は発電・送電にわたる電力流通を一元的に管理している。1990年代より電力自由化が行われたが、発送電分離を行わない部分的なものとなっている。
- ^ “世界の一次エネルギー消費量 国別ランキング統計・推移(EI)”. グローバルノート. 2024年3月12日閲覧。
- ^ a b c “Japan” (PDF). Country Analysis Briefs. U.S. Energy Information Administration (EIA). 2012年7月2日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “第2節 一次エネルギーの動向”. 2019年3月18日閲覧。
- ^ IEA Key World Energy Statistics 2011 (PDF) , 2010 (PDF) , 2009 (PDF) , 2006 (PDF) IEA October, crude oil p.11, coal p. 13 gas p. 15
- ^ http://www.ft.com/intl/cms/s/bf0affbc-7d5f-11e1-bfa5-00144feab49a,Authorised=false.html?_i_location=http%3A%2F%2Fwww.ft.com%2Fcms%2Fs%2F0%2Fbf0affbc-7d5f-11e1-bfa5-00144feab49a.html&_i_referer=#axzz1vnj3MoWo
- ^ http://eddiesblogonenergyandphysics.blogspot.com/2012/02/japans-electricity-crisis-nuclear-power.html
- ^ a b 原発稼働ゼロ:国内50基止まる 泊原発3号機運転停止で 鈴木勝一、毎日新聞 2012年05月05日
- ^ ^ “川内原子力発電所1号機の原子炉起動について”. 九州電力株式会社 (2015年8月11日). 2015年8月11日閲覧。
- ^ "Statistics Search > Report Japan IEA, 2017年1月28日閲覧
- ^ IEAエネルギーバランス表の概要とこれを応用した産業連関表形式エネルギー・CO2 物量表の作成手法について (PDF) 戒能一成、2006年8月。
- ^ a b 『エネルギー白書2021』第2部 1章 1節 エネルギー需給の概要
- ^ a b c “第1節 エネルギー需給の概要”. 経済産業省. 2024年3月12日閲覧。
- ^ a b 『エネルギー白書2021』第2部 1章 1節 エネルギー需給の概要【第211-3-1】一次エネルギー国内供給の推移(excel)および【第211-4-1】一次エネルギー国内供給構成及び自給率の推移(excel)
- ^ “"Yearly electricity data". ember-climate.org. 6 Dec 2023. Retrieved 23 Dec 2023.”. 2024年3月12日閲覧。
- ^ Electricity Consumption Per Capita 2004 - Country Rankings
- ^ 第2部 第1章 第3節一次エネルギーの動向 資源エネルギー省、エネルギー白書2011
- ^ “第4節 二次エネルギーの動向”. 経済産業省. 2024年3月12日閲覧。
- ^ 『エネルギー白書2021』第2部 1章 3節 一次エネルギーの動向 2.(1)①原子力発電の現状
- ^ a b 『エネルギー白書2021』第2部 2章 4節 国際的なエネルギーコストの比較 6.電気料金の国際比較
- ^ Nagata, Kazuaki, "Utilities have monopoly on power", Japan Times, 2011年9月6日, p. 3.
- ^ Williams, Martyn (2011年3月18日). “A legacy from the 1800s leaves Tokyo facing blackouts”. Computerworld 2011年3月21日閲覧。
- ^ 『エネルギー白書2021』第2部 1章 4節 二次エネルギーの動向(2)供給の動向
- ^ 『エネルギー白書2021』第2部 1章 3節 一次エネルギーの動向 1.(1)石油
- ^ 『エネルギー白書2018』第1部 3章 1節 2030年のエネルギーミックスの進捗と課題、2018年8月6日閲覧
- ^ 備蓄データ 石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2012年8月14日閲覧。
- ^ 『エネルギー白書2021』第2部 1章 3節 一次エネルギーの動向 1.(2)ガス体エネルギー
- ^ 天然ガス・LNGに関する最新動向 (PDF)
- ^ 日本の輸入ウランの原産国 資源エネルギー庁、エネルギー白書2006。
- ^ 政策選択肢の重要課題:エネルギー安全保障について (PDF) 内閣府原子力政策担当室 原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会 2012年2月23日。
- ^ http://www.msnbc.msn.com/id/48034288/ns/world_news-asia_pacific#.T_DZPuge4XM
- ^ “原子力発電所の現状” (PDF). 2019年2月8日閲覧。
- ^ a b “第3節 一次エネルギーの動向”. 経済産業省. 2024年3月12日閲覧。
- ^ Johnston, Eric, "Small hydropower plants keep it local", Japan Times, 29 September 2011, p. 3.
- ^ 『エネルギー白書2021』第2部 1章 3節 一次エネルギーの動向 1.(2)⑥水力
- ^ Demetriou, Danielle (2009年1月5日). “Japan taps into power of volcanoes with geothermal energy plants”. The Daily Telegraph (London)
- ^ a b c “第3節 一次エネルギーの動向”. 経済産業省. 2024年3月12日閲覧。
- ^ 『エネルギー白書2021』第2部 1章 3節 一次エネルギーの動向 1.(2)④風力発電
- ^ “新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?”. 2018年8月6日閲覧。
- ^ 総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 長期エネルギー需給見通し小委員会(第8回 平成27年4月28日(火)) 資源エネルギー庁、2015年4月29日閲覧
- ^ Countries - Japan、IEA、2022年6月29日閲覧
- ^ Japan eyes 50% greenhouse gas cut, BBC, published 2007-05-24, accessed 2007-06-20
- ^ “環境省 温室効果ガス 地域の排出削減事業で優遇制度を検討”. NHK. 2020年10月27日閲覧。
- 1 日本のエネルギー資源とは
- 2 日本のエネルギー資源の概要
- 3 エネルギー源
- 4 温室効果ガス排出量
- 日本のエネルギー資源のページへのリンク