新幹線961形電車 新幹線961形電車の概要

新幹線961形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/27 11:52 UTC 版)

新幹線961形試作電車
1987年撮影
基本情報
運用者 日本国有鉄道
製造所 川崎重工業(961-1・2)
日本車輌製造(961-3・4)
日立製作所(961-5・6)
製造年 1973年(昭和48年)6月・7月
製造数 6両1編成
投入先 山陽新幹線東北新幹線
主要諸元
編成 6両編成(全電動車)
軌間 1,435 mm (標準軌
電気方式 交流 25,000 V・50/60 Hz
架空電車線方式
設計最高速度 260 km/h以上[3]
起動加速度 1.1 km/h/s[4]
減速度(常用) 0 - 80 km/h:2.35 km/h/s[5]
260 km/h時:1.17 km/h/s[5]
減速度(非常) 0 - 80 km/h:3.53 km/h/s[5]
260 km/h時:1.76 km/h/s[5]
車両重量 約58 t
全長 25,150 mm(先頭車)[1]
25,000 mm(中間車)[2]
全幅 3,380 mm[1]
全高 4,000 mm[1]
車体 アルミニウム合金
ボディーマウント構造
台車 IS式軸箱支持方式空気ばね台車
DT9013・DT9013A(5号車後位寄りのみ)
車輪径 980 mm
固定軸距 2,500 mm
台車中心間距離 17,500 mm
主電動機 直流直巻電動機
MT920形
主電動機出力 275kW(連続定格)[6]
駆動方式 WN駆動方式
歯車比 25:60 ≒ 2.40[3]
編成出力 6,600 kW
定格速度 205 km/h(連続定格)
制御方式 サイリスタバーニア連続位相制御
制動装置 発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(チョッパ連続制御)
保安装置 ATC-1型ATC-2型
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新幹線総合車両センター内に保存されている新幹線961形電車

編成の特徴

編成構成は電源周波数50/60Hz対応の6M(全車電動車)で、ボディはアルミ合金製でボディーマウント構造を採用し、新幹線で初めて客室窓がすべて小型構造となった。主電動機の定格出力は951形を上回る275kWに増強し、東北新幹線などでの寒冷地走行を想定した耐寒耐雪仕様となっており、車端部に雪切室が設置された。当時、山陽新幹線や東北・上越新幹線では開業当初から260 km/h運転が計画されていたことから、これに合わせた車両性能が確保されている[5]

多方面への分割・併合を前提として先頭車両のスカート(排障器)上部に連結器を常備する設計となっていた。この結果、先端部カバー内部は連結器を格納しないために空洞となり、蛍光灯が内蔵されて1000形試作車以来の「内部からの光源で光る光前頭」となった。将来的には、電気軌道総合試験車(ドクターイエロー)への改造も想定されていたが、実現しなかった。

1編成6両の製造費用は9億円[7]。台車はDT9013型を採用している[8]

室内設備

1・2・6号車は通常車両(2号車のみ腰掛設置)。

3号車は当時新幹線としては初の(営業用では0系の36形が最初)食堂車で、食堂利用客と通過客の分離を計る観点から側廊下を採用し、食堂は窓側2人席・通路寄り4人席のテーブル配置で間接照明とスポットライトを採用し、一角にはソファーコーナーを設置した。

4号車は長距離列車での運用を想定した寝台車と小グループ旅行を前提とした個室とした。特別個室(1室6名[9]の定員)は2室あり、シルバートーンにグレイのアクセントを配した「会議室風」と木目の壁面にエッチング模様・コーナーソファーのある「応接室風」とし、2室の間の仕切は可動式として一体使用も可能としてある。寝台は特別個室1室、特別寝台3室、普通寝台を設置。特別個室は家族旅行をテーマとし2段寝台にソファーを配置 (後の「北斗星」ツインデラックスの室内が近似) 、特別寝台は1人用個室でこのうち2室については寝台は固定として間の仕切には鍵付きの引き戸を設置し2室利用が可能としている。残る1室は昼間時の1人個室使用の試作を兼ねて寝台が折りたたみ式となっている。普通寝台は2段式であるが新幹線の大柄な車体を生かし、枕木方向のワンボックスに加えて廊下を挟んで長手方向にも寝台を配置した「に」の字配置とした。

食堂車は36形のベースとなり、個室寝台は24系客車のオロネ25形とも共通する点が見受けられる。

ただし、3号車の食堂と4号車の寝台設備は新製当初から設置されたものではなく、1973年(昭和48年)12月に浜松工場に入場して取り付けたものである[10]。5号車には内装がなく、両側面に4×1.5mの開口部を4か所[11]設け、車両の剛性と乗り心地との関係を調べるため、わざと剛性を低下させ、様々な補強材を入れて耐久試験を行った。


  1. ^ a b c 誠文堂新光社 1976, p. 321,331
  2. ^ 誠文堂新光社 1976, p. 323,325,327,329
  3. ^ a b 誠文堂新光社 1976, p. 347
  4. ^ a b 交通資料社『鉄道工場』1975年7月号「961形新幹線試作電車における走行試験の概要」pp.13 - 15。
  5. ^ a b c d e 日本鉄道運転協会『運転協会誌』1973年6月号「東北・上越新幹線向け961形試作電車」pp.1 - 5。
  6. ^ 誠文堂新光社 1976, p. 323
  7. ^ a b c d e 交友社『鉄道ファン』1973年10月号「961形新幹線試作電車が落成 最高の車両技術を結集」pp.87 - 89。
  8. ^ ぜかまし文庫 新幹線形式図 1973
  9. ^ 誠文堂新光社 1976, p. 327
  10. ^ a b c 日本国有鉄道新幹線総局『新幹線十年史』第2章 運転・車両 pp.695 - 698。
  11. ^ 誠文堂新光社 1976, p. 329
  12. ^ 三菱電機『三菱電機技報』1973年12月号「新幹線試作電車961形用電機品」pp.1226 - 1237。三菱電機ではTM920形主変圧器、RS920形主シリコン制御整流器、MT920形主電動機、IC920形主平滑リアクトル、RS921形チョッパ制御装置(バーニアチョッパ)、TS921形ブレーキ受量器どを納入した。
  13. ^ 日立製作所『日立評論』1973年12月号「全国新幹線網用961形試作電車の主回路方式と主要電気品」 (外部リンク項目)。
  14. ^ a b c d 東京芝浦電気『東芝レビュー』1973年12月号「新幹線961形試作電車車両用電気機器」pp.1333 - 1340。東京芝浦電気でTM920形主変圧器、MT920形主電動機、KS920形主回路転換器、CS920形抵抗制御器、MR920形主抵抗器、RS921形チョッパ装置(バーニアチョッパ)、電動発電機、SC920形静止形インバータ、電動送風機、ATOMIC4形、空調装置や暖房装置などを納入している。
  15. ^ a b 富士電機製造『富士時報』1973年10月号「全国新幹線試作電車用電気機器」(外部リンク項目)。
  16. ^ 東洋電機製造「東洋電機技報」第34号(1978年9月)「鉄道特集」pp.23 - 26。
  17. ^ a b c d e f g 日本鉄道サイバネティクス協議会『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』第10回(1973年)「961形新幹線試作電車のATOMIC」論文番号417。
  18. ^ a b c 計測自動制御学会『計測と制御』1972年1月号「ミニコンピュータによる列車制御ATOMIC (PDF) 」(インターネットア―カイブ)。
  19. ^ a b 日本鉄道運転協会『運転協会誌』1972年4月号「ミニコンピュータによる列車自動制御自動化の研究 - ATOMIC - 」pp.9 - 12。
  20. ^ 日立製作所『日立評論』1972年8月号「制御用計算機による新幹線電車の自動制御システム(ATOMIC) (PDF) 」。
  21. ^ a b c 日本鉄道サイバネティクス協議会『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』第10回(1973年)「車上ミニコンピュータによる列車自動運転(ATOMIC)(第2報)」論文番号416。
  22. ^ a b 日立製作所『日立評論』1973年12月号「全国新幹線網用961形試作電車の運転制御システム(ATOMIC 3) (PDF) 」。
  23. ^ 日立製作所『日立評論』1973年5月号「日立制御用計算機 HIDICシリーズ (PDF) 」。
  24. ^ a b 日本鉄道サイバネティクス協議会『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』第10回(1973年)「全国新幹線電車用自動運転装置」論文番号415。
  25. ^ a b c d e f 日本鉄道サイバネティクス協議会『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』第9回(1972年)「全幹網電車の運転制御システム(ATOMIC)」論文番号419。
  26. ^ ATOMICの表示画面ではカナ・漢字表記ができないため、「RESHA DAIYA TOUCHAKU、HASSHA、JOKOU」と表記される。
  27. ^ 『新幹線50年史』財団法人交通協力会、2015年、256頁。ISBN 978-4-330-56715-0 
  28. ^ ひかりプラザ


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