国鉄デハ6250形電車 国鉄デハ6250形電車の概要

国鉄デハ6250形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/09 09:27 UTC 版)

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概要

甲武鉄道引継ぎの二軸電車の後継として、1909年(明治42年)度に10両が日本車輌製造で新製されたもので、国有鉄道初のボギー式電車として知られる [1] 。製造当初はホデ1形(1 - 10)と称した [1]が、1911年(明治44年)1月1日に施行された鉄道院の国鉄車両称号規程制定にともなって、ホデ6100形(6100 - 6109)、1913年(大正2年)4月22日には、車両形式称号規程の改正にともなって、記号を「ナデ」に改めた[1]。さらに、1914年(大正3年)8月29日付けでデハ6250形(6250 - 6259)に改称[注釈 1]されている[1]

この電車は、最初の鉄道院独自設計の電車であったことから、後に製造された標準型電車とは、多くの点で差異が見られる。特筆すべきは、本形式の次に製造されたホデ6110形(後のデハ6260形)以降の中央線山手線用電車の車体幅が2,500mmであった[注釈 2]のに対し、2,700mmという大正中期以降製造の標準規格[注釈 3]と同じ車体幅となっていることである[2]。これは、当時の客車と同じ規格を採用したためといわれている。

車体は16m級の木製車体で、出入り台は開放式で両端部に設けられており、出入り台の中央部に運転台が設けられたが、客用の部分と区分はされていない。一方、前面は弧状に大きく湾曲した3枚固定窓で、出入り台中央部の幅を広くすることで、運転手と乗客が交錯しないよう配慮されている。側面窓は下降式の一段窓となっており、5個一組が3組15枚が設けられている。屋根は、客室部のみがモニター屋根とされているが、 通風器は設けられていなかった [2]

足回りについては、台車は欧州系の軸箱下に板バネを持つもので、日本では他に類を見ない方式であった。主電動機は、シーメンス・シュケルト製のD-58W/D (45.5PS)を4個装備していたが、制御装置も同社製の直接式で、旧甲武の二軸電車が間接式の総括制御装置を装備していたのに比して後退とも取れるが、二軸電車が原則重連で運転されていたものを、本形式1両で置き換えるためであったことを考えれば、当然ともいえる[3] 。そのため、2線式のトロリーポールは、車体前端部から大きく張り出す形で出入り台屋根上に取り付けられており、もとより連結運転は想定されていなかった[2]。電気方式は、直流600Vである。

車内については、屋根裏の天井は仕上げ板が張られておらず、垂木が20本剥き出しとなっていた[3]。座席は、背ずりまで布張りとした、ロングシートであった。出入り台と客室の境に設けられた扉は、従来の1.5倍の幅を持つ4ftの両開き式の引戸である[2]

標準化改造

鉄道院最初の電車だったこともあり、本形式は後続の形式と比して著しく異なる構造を持っており、早期に改造の対象となった。まず、モニター屋根側面に設けられた明かり取り窓を潰して片側4か所に水雷形通風器が設けられた。さらに、開放式だった出入り台側面に折戸が設置され、出入り台と客室の間の引戸が撤去された。1914年(大正3年)から翌年にかけて直接式制御器を総括制御が可能な間接式に交換し、トロリーポールをモニター屋根上に移設した。

1920年(大正9年)7月から9月にかけて、妻形状が切妻に変更されるとともに、前後の出入り台の折戸が引戸に改造され、中央部に引戸が追設されて片側3扉となり、台車も釣り合い梁式の明治45年標準形に交換されて、原形からはかけ離れた形状となっている。




注釈

  1. ^ これは、従来電車の等級は二等三等の中間と定められていた(それゆえ等級記号が使用されていなかった)が、この改正で正式に三等車扱いとされたため、相応の形式番号に変更されたものである。
  2. ^ 1928年10月の車両形式称号規程の改正により、サハ6形およびサハ19形に分類されたものに相当。
  3. ^ 同じく車両形式称号規程の改正により、サハ25形に分類されたものに相当。

出典

  1. ^ a b c d 沢柳健一・高砂雍郎 「旧型国電車両台帳 院電編」 - ジェー・アール・アール ISBN 4-88283-906-7(2006年)
  2. ^ a b c d 「木製省電図面集」 - 鉄道史資料保存会 編 ISBN 4-88540-084-8(1993年)
  3. ^ a b 新出茂雄・弓削進 「国鉄電車発達史」 - 電気車研究会(1959年)


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