偶像崇拝 概説

偶像崇拝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/09 20:54 UTC 版)

概説

偶像という語には「人形」「生贄」「人間に似せた物」などいくつかの意味があるが、ここでは木材金属など具体的な物質で形どられた像のうち崇拝的対象をかたどったものをさす[1]。また「偶像崇拝」という単語自体は、そうした像を崇めることを禁じ、あるいは批判する立場から否定的な意味合いで使われる(後述。同様に偶像崇拝を批難するために使われる単語として「偶像教」がある[2])。他方、何らかの像を崇拝する信仰では、一般に崇拝の対象となる像を神像仏像などと表現しており、また二元論多神教なども世の知恵に過ぎず偶像崇拝である。偶「像」と書かれるが、プロテスタントなどにおいては十字架への祈りも偶像崇拝とされ、首飾り、護符、ご神体などを信仰対象にすることも偶像崇拝である。エホバの証人においては、葬儀遺骨なども偶像崇拝と見なされる。

旧約聖書

旧約聖書では、イスラエルの神は預言者モーセに神の指で書かれた石の板二枚、十戒を授け、偶像崇拝を禁じた(出エジプト記31:18)。ゆえに、アブラハムの宗教と呼ばれるユダヤ教キリスト教イスラームの諸宗教では偶像崇拝は禁忌とされており、を可視化してはならない。特にユダヤ教においては厳格で、19世紀まではユダヤ系の画家・彫刻家などの芸術家が輩出されなかった[要出典]

あなたは自分のために、刻んだ像を造ってはならない。上は天にあるもの、下は地にあるもの、また地の下の水のなかにあるものの、どんな形をも造ってはならない。それにひれ伏してはならない。それに仕えてはならない。 — 出エジプト記20章4節から5節(口語訳)

イスラエルの民が金の子牛を崇拝した際には、極刑をもって処罰された[3]

他の国々や諸宗教で信仰の対象とされている偶像については、以下のように全くの無益であるとされた。

彼らの偶像はしろがねと、こがねで、人の手のわざである。それは口があっても語ることができない。目があっても見ることができない。耳があっても聞くことができない。鼻があってもかぐことができない。手があっても取ることができない。足があっても歩くことができない。また、のどから声を出すこともできない。これを造る者と、これに信頼する者とはみな、これと等しい者になる。 — 詩篇115章4節から8節(口語訳)

ヨシヤ王はユダとエルサレムを清めるために偶像を粉々に打ち砕いた[4]

イザヤ書の中でも、はご自分の栄光を偶像に与える事は無い、と明記されている[5][6]

新約聖書

新約聖書で「偶像礼拝」と訳されるギリシャ語のεἰδωλολατρία(ガラテヤ5:20、第一コリント10:14、コロサイ3:5、第一ペテロ4:3)の語は、キリスト教の文献にしか出てこない[7]

肉の働きは明白である。すなわち、不品行、汚れ、好色、偶像礼拝、まじない、敵意、争い、そねみ、怒り、党派心、分裂、分派、ねたみ、泥酔、宴楽、および、そのたぐいである。わたしは以前も言ったように、今も前もって言っておく。このようなことを行う者は、神の国をつぐことがない。 — ガラテヤ人への手紙5章19節から21節(口語訳)
それだから、愛する者たちよ。偶像礼拝を避けなさい。 — コリント人への第一の手紙10章14節(口語訳)
だから、地上の肢体、すなわち、不品行、汚れ、情欲、悪欲、また貪欲を殺してしまいなさい。貪欲は偶像礼拝にほかならない。これらのことのために、神の怒りが下るのである。 — コロサイ人への手紙3章5節,6節(口語訳)

注釈

  1. ^ アッラーフは精神だけの存在なので、いつ、どこであってもその場にいる[要出典]

出典

  1. ^ 広辞苑』岩波書店
  2. ^ 日本国語大辞典』小学館
  3. ^ 出エジプト記(口語訳)#32:27-28
  4. ^ 歴代志下(口語訳)#34:1-7
  5. ^ イザヤ書(口語訳)#42:8
  6. ^ イザヤ書(文語訳)#42:8
  7. ^ 尾山令仁『ガラテヤの諸教会への手紙』p.285-286
  8. ^ 『ポリュカルポス殉教伝』The Martyrdom of Polycarp: The contemporary account of his death in the letter to the Smyrnaeans.
  9. ^ 尾山令仁『ヨハネが受けたキリストの啓示(黙示録)』羊群社
  10. ^ 西山俊彦『カトリック教会の戦争責任』サンパウロ
  11. ^ カリタス・ジャパン『ひびき-非暴力による平和への道』2006
  12. ^ 石黒イサク他『それでも主の民として』いのちのことば社
  13. ^ 『神社参拝拒否事件記録』美濃ミッション
  14. ^ 小野静雄『日本プロテスタント教会史』聖恵授産所出版
  15. ^ 奥山実他『教会成長シンポジウム』新生運動
  16. ^ 尾山令仁『今も生きておられる神』プレイズ出版
  17. ^ 尾山令仁『信仰生活の手引き』いのちのことば社
  18. ^ 滝元明『千代に至る祝福』CLC出版
  19. ^ a b ジョン・M.L.ヤング『天皇制とキリスト教』(日本における二つの帝国)燦葉出版社,The two empires in Japan by John M. L. Young
  20. ^ 中央神学校史編集委員会『中央神学校の回想-日本プロテスタント史の一資料として』
  21. ^ 中村敏 『日本における福音派の歴史』いのちのことば社 p.41
  22. ^ 『通俗正教教話』pp.212-214
  23. ^ Forgiveness for Shirk - Islamweb - Fatwas”. www.islamweb.net. 2021年1月31日閲覧。






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