ラハティ L-39 対戦車銃 ラハティ L-39 対戦車銃の概要

ラハティ L-39 対戦車銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/11 03:11 UTC 版)

Panssarintorjuntakivääri L-39
L-39(m/39)
この銃には銃床部のチークパッドが装着されていない
概要
種類 対戦車銃
製造国  フィンランド
設計・製造 VKT(共和国銃器工廠)
設計主任:アイモ・ラハティ
性能
口径 20mm
銃身長 130.05cm
使用弾薬 20×138mmB弾
装弾数 10発
作動方式 セミオートマチック方式(対戦車ライフル)
フルオートマチック方式(対空機関砲)
全長 224cm
重量 49.5kg(うち弾倉全重量3.4kg)
発射速度 毎分30発
銃口初速 800m/s(2,624 ft/s)
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英語圏の国を始めとして、“Lahti”の英語読みから“ラティ”もしくは“ラーティ” と呼ばれることもある。

尚、その長大な外観から、フィンランド兵は“Norsupyssy”(ノルスピュッシュ:象撃ち銃[注釈 1])のニックネームを付けていた。

概要

フィンランドのValtion Kivääritehdas(VKT:共和国銃器工廠)[注釈 2]によって開発され、アイモ・ラハティによって設計された大口径対戦車ライフルで、当初は口径13.2mmの対戦車銃として開発されたが、ラハティは対戦車用途としては口径が不足しているとして、20x113mm弾を使用する独自の設計案を提出した。VKT側は20mm口径は大型過ぎて連射速度に劣り、威力の上昇よりも不利点の方が多い、としたが、ラハティの主張を入れて13.2mmと20mmの2種類の試作銃が製作され、比較試験、及び冬戦争第一次ソ芬戦争)においての実地試験の結果、20mm型が「連射速度も充分であり、威力に勝る」として選択され、使用弾を20×138mmB弾に変更した上で、1939年に“20 pst. kiv (panssarintorjuntakivääri) /39"(20ミリ対戦車小銃1939年型)の制式名[注釈 3]で採用された。

1944年には、本銃を単装で対空射撃に用いるため、機構を全自動射撃可能なものに改造した“L-39/44(m/39-44)”が開発され、対空照尺を装備し、二脚及び橇に代わって杭や立ち木の先端に設置して用いることのできる対空銃架に装着した"20 it. kiv(ilmatorjuntakivääri)/39-44"(20ミリ対空銃1939年型・改1944年型)”が制式化されている。20 it. kiv/39-44用に大型弾倉(装弾数15発)も製造された。

L-39は最終的に1,906丁が製造され、対空機銃化されたL-39/44を中心に1960年代までフィンランド軍に装備されていたが、1960年代に入ると対戦車火器としても対空火器としても一線を退き、順次、生産数の半数以上である約1,000挺がアメリカの民間市場に放出された。しかし、予備兵器とはされたものの、フィンランド軍ではベトナム戦争の戦訓から対ヘリコプター戦に有効であるとして、1988年まで現役に留まっていた。

派生型

1940年には、ソ連軍Il-2対地攻撃機シュトゥルモヴィーク)対策として、L-39の設計を発展させた機関砲を射手席のついた専用銃架に並列連装に装備し、大型の対空照準器を付けて連装対空銃座とした“20 it. kiv(ilmatorjuntakivääri)/40(20ミリ対空銃1940年型)”が開発・生産された。

実戦での運用

L-39は通常2名(射手、観測手兼弾薬手)で運用されたが、しばしば射手のみでも用いられた。銃本体の他、弾倉2個収容の運搬箱を2つ(計、予備弾倉4個、弾薬40発)、整備・分解用工具及び弾倉用装弾装置と予備部品の2つの工具箱、曳航索が標準の付属品とされている。

冬戦争では試作型の2挺が戦闘に投入され、ソ連軍戦闘車両に威力を発揮した。続く継続戦争(第二次ソ芬戦争)では約1,800挺あまりが生産され、ソ連軍のT-34中戦車やKV-1重戦車に代表される新型戦車相手には力不足でありながらも履帯や燃料タンクを狙った攻撃でそれなりの戦果を挙げている。継続戦争当時は対戦車用途の他に現在の対物ライフル同様、トーチカ機関銃座の狙撃に使用された。

大型で重く反動の大きい本銃は運用面での困難も大きく、標的とする戦車の急速な重装甲化の前に開発当初ほどの威力を示せなかったものの、フィンランド軍の主力対戦車火器の一つとして大いに活躍した。


注釈

  1. ^ Norsupyssy:直訳すると「象(Norsu)銃(pyssy)」だが、「象のような銃」「象を撃つための銃」の意
  2. ^ ValtionKivääriTehdas とは「国営ライフル工廠」の意
  3. ^ 機関部左側面の刻印は「20 pst:ksv./39」となっている
  4. ^ 文献によってはこの遊底開放レバーを「グリップセフティ(銃把の一部を握り込むことにより撃発機構の固定を解除する安全装置)」と解説しているが、暴発防止の為のみの機構ではい。
  5. ^ 頬付けの射撃姿勢の際に頬を置くための銃床の一部
  6. ^ ただし、劇中に登場する「20ミリ砲」はエリコンFF 20mm機関砲であり、L-39とは異なる。

出典

  1. ^ The Lahti 20mm Anti-tank Gun: The ‘Finnish Boombeast’>Burglary Tool”. Guns.com (2013年5月21日). 2016年3月11日閲覧。


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