マスノスケ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/24 22:17 UTC 版)
用途
本種はサケ類の中でも特に脂肪分が多く、美味とされる。国内で流通するものの多くはアラスカやロシアなどからの輸入もの(主に海中で養殖された個体)であり、日本産は少ない。主な用途は缶詰加工、塩漬けの切り身(焼き魚用)、燻製(スモークサーモン)、刺身など。また卵も他のサケ同様、イクラなどに加工される。
交配種
資源量
タイヘイヨウサケ属の魚はサケ(シロザケ)、ベニザケ、カラフトマスのような動物プランクトンを主に食べて育つ種と、サクラマス、ギンザケのように他の魚類を主に捕食する種に大別されるが、マスノスケは同属の中でも魚食性の代表格で、海域によって変化するが成魚はニシン、イカナゴ、イカなどを捕食する。食物連鎖の上で高位にあることもあり、プランクトン食のサケ類と比べて資源量ははるかに少ない[6]。
1970年代には400万尾の漁獲量があったが、2000年頃には100万尾まで減少している。この間、沖合サケマス漁が資源減少の原因とされた為、公海上の沖合サケマス漁は1992年以降禁漁となったが、資源減少には歯止めが掛かっていない。つまり、資源減少の原因は海洋上での捕獲ではなく、遡上河川に建設されているダムが原因となり淡水生活が大きな影響を受けていると考えられるが、解明はされていない[3]。この他、表面水温の変動の影響を強く受けている[7] との調査結果もある。
日本国内での放流事業は1959年(昭和34年)以降、発眼卵を輸入し北海道内の河川に稚魚を放流している、1964年には十勝川及び日高沿岸で回帰した個体も捕獲された[8]。ただし回帰率が悪いため放流は中止され、日本には定着していない[4]。
遺伝子組み換えへの利用
バイオベンチャーのアクアバウンティ・テクノロジーズ (AquaBounty Technologies) は、遺伝子組み換えサケ「アクアドバンテージ・サーモン」を開発した。このサケは、アトランティックサーモンの遺伝子に、マスノスケから成長ホルモンの遺伝子を、また、オーシャンパウトから転写開始の遺伝子領域プロモーターを組込んだ結果、天然のアトランティックサーモンの約半分の期間で、より大型に成長する特徴をもつ。
申請から約20年後の2015年11月19日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、これを食品認可した[9]。これはFDA初の遺伝子組み換え動物の承認となった。
カナダでも2016年5月に政府がアクアドバンテージ・サーモンを食品認可し、翌2017年、カナダでの食用販売が始まった[10]。カナダでは遺伝子組み替えの表示義務がない。環境団体は販売に反対している[11]。
- ^ “魚介類の名称表示等について(別表1)”. 水産庁. 2013年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月29日閲覧。
- ^ 加藤史彦、山洞仁、野田 栄吉、日本海におけるマスノスケの漁獲記録 日本海区水産研究所研究報告 (33):41-54,1982, NAID 40002837215
- ^ a b マスノスケ (PDF) 独立行政法人 水産総合研究センター
- ^ a b c d 井田+奥山 2017, p. 132-133.
- ^ 新たな県産ブランド魚「富士の介」『山梨県水産技術センター便り』第64号(2017年12月発行) (PDF) [リンク切れ] 山梨県水産技術センター
- ^ 国際漁業資源の現況 58 さけ・ます類の漁業と資源調査(総説)図2、図6など (PDF) [リンク切れ] - 水産庁 水産研究・教育機構(2016年)
- ^ ベーリング海を中心とした流し網さけます資源モニタリング2006 (PDF) 独立行政法人 水産総合研究センター
- ^ 十勝川及び日高沿岸で再捕されたマスノスケ成魚と幼魚 北海道さけ・ますふ化場研究報告
- ^ Andrew Pollack(ニューヨーク・タイムズ) (2015年12月9日). “成長速度2倍!遺伝子組み換えサケが食卓に 米当局の「食べても安全」は信用できるか”. 東洋経済ONLINE. 2023年10月26日閲覧。
- ^ “カナダで遺伝子組み換えサケを販売 GM動物では世界初”. 有機農業ニュースクリップ. (2017年8月5日) 2018年2月18日閲覧。
- ^ “遺伝子組み換えサケを非表示で販売、環境団体が中止要請 カナダ”. AFP. (2017年8月8日) 2018年2月18日閲覧。
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