マスノスケ 分布

マスノスケ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/24 22:17 UTC 版)

分布

サケ目中では最も冷水を好み、アラスカからカムチャツカ半島にかけての北太平洋を中心にオホーツク海日本海北部などに分布するが、分布数はアラスカ沖の北太平洋に偏る。日本国内ではロシアに回帰する一部の個体が、主に北海道の太平洋沿岸で漁獲されるものの、数は多くない。尚、国内には恒常的な産卵場所となる河川は存在しないが、佐渡島東北地方以北の河川で捕獲された例がある[2]

孵化後、海洋で1 - 5年ほど生活し、多くの個体は4 - 6年で成熟するが、オスでは、海洋生活が1年程度と考えられる小型早熟の個体が現れる。その後は産卵のため、再び生まれ育った川を目指して遡上する。また、アラスカユーコン川産の個体では、川に入ってから産卵場所となる上流にたどり着くまで、遡上する距離が1,000kmを超えるものも存在する。

寄生虫の分析により、アジア系、カムチャッカ系、アメリカ系の3系統の群れがいることが判明しており、各々の群れの生活様式(遡上から産卵・孵化、降海生活、回遊海域、遡上時期)は異なっている[3]

1900年代にアメリカからニュージーランド南島に移植され定着し、またワカティプ湖などでは陸封型としても定着している[4]

別名

キングサーモン(King salmon)以外の英語での地方名として、タイイーサーモン(Tyee salmon)、スプリングサーモン(Spring salmon、カナダ)がある[4]

日本語での別名にはスケ(介)・スケマス(介鱒)・オオスケ(大介)などがある。標準的な和名であるマスノスケやこれらの名称に含まれる「スケ」とは、国司の四等官のうち次官である介(すけ)を意味する。現地赴任する国司のうちの官位筆頭者で任国で強権を振るった受領は、東国の大国たる親王任国上野国常陸国上総国では次官の介であり、普通のサケ(シロザケ)やマス(サクラマス)よりも巨大なこの種を、サケやマスの親分格の存在と見立て、国衙に君臨する介に例えたものである。東北地方には鮭の大助の伝承がある。

鮮魚店などでは「キングサーモン」の名称で販売されていることが多いが、別種であるタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)も同じ「キングサーモン」の名前で並べられている場合も多い。

英語で「king-of-the-salmon」というのはキングサーモンとは全く異なり、学名「Trachipterus altivelis」という大型の深海魚である。

生態

釣り上げられたマスノスケのオス。
身体には婚姻色が表れている。

孵化・浮上後直ち(3ヶ月以内)に降海する個体群は「海洋型」に分類され、孵化後1年から2年をベニザケの様に淡水生活を行った後に降海する個体群は「河川型」分類される。生活史は型の個体群で大きく異なる。同一河川では海洋型よりも河川型の方が産卵時期が早い傾向がある。降海時期は共に、融雪水の増加する4月から6月。産卵期には、幅があり夏の集団と秋の集団が存在する。

  • 海洋型(秋サケ)は、主にアラスカの北緯56度以南に生息し、沿岸を生息海域とし海洋での越冬はせず産卵直前に母川回帰する。数ヶ月間の海洋生活の後、7月から12月に遡上を開始し河川型ほど上流までは遡上せず中流から下流域で産卵する。
  • 河川型(夏サケ)は、アジア系、カムチャッカ系とも呼ばれ、沖合を生息海域とし1 - 4回の海洋での越冬を行い、2月から7月に遡上を開始し、より上流まで遡上を行い産卵をする。産卵期は、秋から冬。カムチャツカ系の産卵期は7-8月。

サケ科魚類の中ではもっとも大きい部類のもので、過去には体長1.47メートル、体重57キログラムの記録もあるが、通常漁獲される個体は体長90センチメートル、体重は10キログラム前後のものが多い[4]。体色は、背面は黒色点が散在する青緑色、腹部は銀白色をしている。尾鰭には銀色の放射条と黒色斑があることで他のサケ・マスと区別できる。また体に対する目の大きさも、他のサケ・マス類と比較してやや小さめである。


  1. ^ 魚介類の名称表示等について(別表1)”. 水産庁. 2013年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月29日閲覧。
  2. ^ 加藤史彦、山洞仁、野田 栄吉、日本海におけるマスノスケの漁獲記録 日本海区水産研究所研究報告 (33):41-54,1982, NAID 40002837215
  3. ^ a b マスノスケ (PDF) 独立行政法人 水産総合研究センター
  4. ^ a b c d 井田+奥山 2017, p. 132-133.
  5. ^ 新たな県産ブランド魚「富士の介」『山梨県水産技術センター便り』第64号(2017年12月発行) (PDF) [リンク切れ] 山梨県水産技術センター
  6. ^ 国際漁業資源の現況 58 さけ・ます類の漁業と資源調査(総説)図2、図6など (PDF) [リンク切れ] - 水産庁 水産研究・教育機構(2016年)
  7. ^ ベーリング海を中心とした流し網さけます資源モニタリング2006 (PDF) 独立行政法人 水産総合研究センター
  8. ^ 十勝川及び日高沿岸で再捕されたマスノスケ成魚と幼魚 北海道さけ・ますふ化場研究報告
  9. ^ Andrew Pollack(ニューヨーク・タイムズ) (2015年12月9日). “成長速度2倍!遺伝子組み換えサケが食卓に 米当局の「食べても安全」は信用できるか”. 東洋経済ONLINE. 2023年10月26日閲覧。
  10. ^ “カナダで遺伝子組み換えサケを販売 GM動物では世界初”. 有機農業ニュースクリップ. (2017年8月5日). http://organic-newsclip.info/log/2017/17080841-1.html 2018年2月18日閲覧。 
  11. ^ “遺伝子組み換えサケを非表示で販売、環境団体が中止要請 カナダ”. AFP. (2017年8月8日). https://www.afpbb.com/articles/-/3138468 2018年2月18日閲覧。 


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