ボーイング767 派生型

ボーイング767

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/06 22:41 UTC 版)

派生型

767-200

デルタ航空 767-200
「スピリット・オブ・デルタ」

1978年に生産が立ち上がり、1981年から1994年まで生産された767型機の最初期モデル。1982年ユナイテッド航空が運航を始めた。

当初は安全上の理由から、飛行試験用の1 - 4号機の操縦乗員を3人にしていたが、1981年9月にアメリカ政府の委員会が「新型機については2人乗務でも安全運航が可能」との結論を発表。またそれと同時にライバルのエアバスも、同クラスの新型機・A310での2人運航を本格化したため、ボーイングは急遽767を2人乗務へ設計変更した。6号機からは2人運航が可能な操縦席で製造し、1982年5月27日に初飛行を行っている。

2000年代以降では退役する機材もあり、日本航空全日本空輸で運航されていた767-200はすべて退役している。全日本空輸で使用されていた機体は貨物機に改造され、アメリカのエアボーン・エクスプレスで使われている。デルタ航空でも退役が始まり、とくに同社の経営不振の際に社員が有志で購入した「ザ・スピリット・オブ・デルタ」と呼ばれた767-232(機体記号:N102DA)は2006年3月に退役し、ジョージア州アトランタ市の同社本社に所在するデルタ航空博物館へ寄贈された。

2001年のアメリカ同時多発テロでは、アメリカン航空ユナイテッド航空の767-200がアルカイダのテロリストにハイジャックされ、ニューヨークのワールド・トレード・センターに突入した。 この衝突はツインタワーの崩壊を招き、乗客や警察官や消防士を含む2763名が命を落とした。

767-200ER

マレーヴ・ハンガリー航空 767-200ER

767-200に燃料容量増加などの改良を加え航続距離を伸ばしたタイプ。1984年エル・アル・イスラエル航空が初運行を行った。初受注は1982年12月16日エチオピア航空によるもの。航続距離は767-200の5,852kmに対し12,352kmと2倍になっている。軍用の派生型(詳細は以下参照)も767-200ERをベースに造られているものが多い。

なお、コンチネンタル航空(現在のユナイテッド航空)が運航する-200ER型には-400ERと同じ操縦席が装備されている。

767-300

日本航空 767-300

767-200の胴体を6.43m延長し、座席数と貨物積載量の増加を行った機体。1982年9月29日発注の日本航空がローンチカスタマーで、同年の11月7日にはデルタ航空からも発注を受けている。初号機(日本航空のJA8234)は1986年1月30日に初飛行を行い、同年9月25日には初納入されている。

Amazon.comは貨物機へ改修された-300を自社専用機『Amazon One』として40機導入することを予定している(運行はアトラス航空などへ委託)[22]

767-300ER

ウィングレットを装着したオーストリア航空の767-300ER

767-300に新型エンジンを搭載し、燃料容量を増加、航続距離を伸ばしたもの。767-300の航続距離は7,340kmだが、-300ERでは11,306kmとなっている。初受注はアメリカン航空によるもので、計画は1984年7月21日に正式にローンチしている。初号機は1986年12月9日に初飛行し、ローンチカスタマーのアメリカン航空へは1988年2月19日に納入されている。機体の設計変更は767-200から-200ERへ行われたものと同様であるが、重量増加の対策として客室などの素材を一部強化している。767の派生型の中では最多製造機数となった。のちに燃費低減を目的として、737NGシリーズで採用しているウィングレットが用意され、アメリカン航空などが採用している。

なお、767の標準仕様では、最大客席数は290席に制限されるが、-300ERではオプション扱いで非常口配置を変更することを可能とし、これによって最大客席数を350席まで増加させることを可能とした[20]。非常口配置は以下の3種類存在する。

A-III-III-A
標準仕様。タイプAドアが最前部と最後部にあり、主翼上にタイプIIIの非常口が2つ並ぶ。
A-A-III-A
オプション仕様。タイプAドアは最前部と最後部に加えて主翼前方にも設置、主翼上にタイプIIIの非常口を1つ設置。
A-A-I-A
オプション仕様。タイプAドアは最前部と最後部に加えて主翼前方にも設置、主翼後方にタイプIの非常口を1つ設置。

このように、同一機種で複数の扉配置をオプションとして設定したのは、ボーイングのジェット旅客機の中でも757と767のみである[23]

767-400ER

コンチネンタル航空 767-400ER
コックピット

767-300の胴体を6.43m延長し、操縦席を777スタイルのものに変更した派生型。デルタ航空が運航するロッキード L-1011 トライスターの後継機を、300席級の長距離洋上飛行路線用として導入したい、という要望に応えるため開発された。胴体延長に対応して、機種上げ時の尾部の接地(テールストライク)を防ぐため、尾部にテールスキッドを装備するとともに、メインギア(主脚)の高さを46センチメートル高くしている。ただし、ノーズギア(前脚)の高さは変わらないため、地上ではやや前傾気味の姿勢となる[24]。また、後退翼(レイクド・ウィングチップ)を設けたことにより、主翼幅は片側あたり7フィート8インチ (2.2m) 延長されている。

コックピットの大きな設計変更が行われたが、既存の767、757と操縦資格は共通である。

1997年3月20日にデルタ航空が21機確定発注したことにより、計画が正式にローンチした。1999年10月9日に初飛行し、2001年9月14日にユナイテッド航空(旧:コンチネンタル航空)に初納入されている。なお、-400ERはデルタ航空とユナイテッド航空のみが定期旅客便として運航しているほか、1機だけバーレーン王室のVIP仕様機が在籍している。

なお、767-400という型式は存在しない。前述のように長距離路線用として開発されたため、構造は767-200ERや767-300ERをベースとしている。そのため767-400ERと名付けられた。ただし、-200ERや-300ERに比べ航続距離はやや劣る。

767-300F

ユナイテッド・パーセル・サービス 767-300F

767-300ERの貨物専用型。1993年1月15日にユナイテッド・パーセル・サービス (UPS) が30機を確定発注し、計画が正式ローンチした。 窓やドアの一部撤去などのほか、操縦席に従来の補助席(ジャンプシート)2名分に加え、荷主用ジャンプシートも追加され計3名分を設け座れるようにしている[25]

一部機材で、先述のB767-300ERと同じくブレンディングウィングレット装着も行われている。

767-300BCF

全日本空輸 767-300BCF

ボーイングの旅客型→貨物型への中途改修 (Boeing Converted Freighter) プログラムで、767-300ERの中古機を基に改修される。改修はシンガポールのSASCO(STアビエーション・サービス社)のシンガポール工場が担当する。

ローンチカスタマーは全日本空輸で、2005年に自社の中古機の767-300ERの7機をベースに発注(当初は3機発注、4機オプションだったがその後追加装備分も正式発注)した。

改修第1号となったJA8286の改修作業は2007年に開始した。改修内容は、旅客型の内部機材と内装の取り外し、メインデッキ周辺機材、および貨物口の側面設置、メインデッキ床の張り替え、耐9-G 貨物障壁、貨物処理新システム、最大離陸重量の改善、およびその他の装備・性能向上である。

完成後初飛行は2008年4月9日で、翌4月10日に試験飛行を兼ねてアメリカ、シアトルまでの無着陸飛行をしながら、各種試験項目を実施した。その後FAAから認証を得て、5月26日再びシンガポールのSASCO(STアビエーション・サービス社)への長距離飛行を行い、6月16日に全日本空輸に引き渡された。

2024年2月19日、JAL CARGOでも旅客型767-300ERを貨物機に改修した767-300BCFの運航を開始する予定で、東アジアへの路線を中心に国内線でも運航が計画される[26]

軍用機型

E-767
航空自衛隊 E-767
AWACS(空中警戒管制機)型(航空自衛隊採用)-200ERベース
KC-767
空中給油輸送機型(イタリア空軍、航空自衛隊採用)-200ERベース
E-10
MC2A(Multi-Sensor Command and Control Aircraft)型 E-3CE-8CRC-135後継機(2008年4月時点、実証試作機の開発のみ継続中で、量産計画はキャンセルされている) -400ERベース
KC-46
空中給油輸送機型 (アメリカ空軍、航空自衛隊採用)-200ERベース(-2C)

計画中止になった発展型

767-X
胴体中央部より後方部分を2階建てにした派生型[27]
1986年に発表されたが、開発が中止された。
767-100
短胴型。計画のみ。
767-400LR
航続距離延長型:767-400ERの水平尾翼に7,571 Lの燃料タンクを増設することで、航続距離が900 km前後延長するというもの。

これらは787の開発決定により中止された。


  1. ^ a b イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p45
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p46
  3. ^ イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p52
  4. ^ a b c d e f イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p54
  5. ^ a b c d イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p56
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p47
  7. ^ 国際共同開発(航空機開発作業への参加)Boeing 社と民間航空機で40年”. 日本航空宇宙工業会. p. 18. 2020年7月7日閲覧。
  8. ^ イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p55
  9. ^ a b c d e f g h i j k l イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p48
  10. ^ イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p49
  11. ^ a b c イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p51
  12. ^ a b c d e f g イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p70
  13. ^ a b イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p147
  14. ^ アメリカ同時多発テロ事件#ハイジャックされた旅客機参照。
  15. ^ a b c d イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p148
  16. ^ a b イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p78
  17. ^ a b c d イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p81
  18. ^ a b c d e f イカロス出版『旅客機型式シリーズ2 ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』p72
  19. ^ a b c イカロス出版『月刊エアライン』2002年10月号(通巻280号)p52
  20. ^ a b イカロス出版『月刊エアライン』2002年10月号(通巻280号)p44
  21. ^ 谷川一巳『世界の旅客機Top45』ユナイテッド・ブックス〈Top45シリーズ〉、2013年。 
  22. ^ Amazon.com、自前の貨物航空機の運航開始:ITpro
  23. ^ 旅客機形式シリーズ2『ハイテク・ツイン・ジェット Boeing757&767』(イカロス出版)p80
  24. ^ イカロス出版『月刊エアライン』2002年10月号(通巻280号)p33
  25. ^ 就航15周年迎えた貨物専用機 写真特集・ANAカーゴ767-300F
  26. ^ [1]
  27. ^ Boeing 767-X Concept, 1986”. Boeing. 2023年12月12日閲覧。
  28. ^ https://www.planespotters.net/operators/Boeing/767
  29. ^ https://flyteam.jp/news/article/93816
  30. ^ 767 Model Summary”. Boeing. 2020年7月15日閲覧。
  31. ^ Japan Airlines Orders 6 767-300ER Blended Winglet Systems






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