ブローニングM2重機関銃 日本におけるM2重機関銃

ブローニングM2重機関銃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/05 22:38 UTC 版)

日本におけるM2重機関銃

日本軍での使用

太平洋戦争ではアメリカ合衆国と干戈を交えることになった大日本帝国だったが、陸軍航空部隊を中心に、旧日本軍でも航空機関砲(固定式・旋回式)としてブローニング系機関銃やその改良型が大々的に使用された。

手前がホ5 二式二十粍固定機関砲、中央がホ103 一式十二・七粍固定機関砲タイ王国空軍博物館収蔵品)
ホ103
陸軍は、M2重機関銃の航空機搭載型であるAN/M2(MG53-2)をベースとしつつ、実包ブレダSAFAT 12.7mm重機関銃の規格(12.7x81mmSR)に変更するなど独自の改良を施したホ103(一式十二・七粍固定機関砲)を採用し、一式戦「隼」を始めとする太平洋戦争初中期の大半の陸軍戦闘機に装備した。
ホ103はM2と比べ、砲自体が一回り小型軽量かつ発射速度に勝るものの、代償として弾頭が少々軽くなり、威力と初速で劣った(代わりにM2には無い榴弾「マ弾」が使用可能)。また、M2の欠点は火力のわりに航空機関砲としては大きく重いことだったが、ホ103はその重量を大きく下回ることに成功した。
ホ5
更に陸軍は、より高威力な20mm機関砲の開発に着手し、12.7mmのホ103をベースに20mm弾(20x94mm)に対応するように拡大改良したホ5(二式二十粍固定機関砲)を開発採用、四式戦「疾風」を始め、太平洋戦争中期以降に登場する多くの陸軍戦闘機が装備した。
ホ5は、口径20mmながら口径12.7mmのM2とほぼ同寸法同重量に収められ、発射速度や初速も優秀かつ口径相応の大威力を持つ。
三式十三粍固定機銃
海軍でもM2をベースに、オチキス(保式)系である九三式十三粍重機関銃銃身と13mm弾(13.2x96mm)を用いる三式十三粍固定機銃として採用したが、搭載機は大戦後期登場の零戦五二乙型以降の少数の海軍戦闘機のみに留まった。こちらはM2と比べ発射速度に勝るがサイズや重量はほぼ同等、なおかつ弾頭重量が大きく一発あたりの威力で上回るが初速は犠牲になっている。

第二次世界大戦後における使用

第二次世界大戦後、日本が再軍備を進めるとM2もまずはアメリカ軍よりの供与品として装備された。供与品の他、住友重機械工業の田無製造所で1984年からライセンス生産が行われている。

陸上自衛隊では主に戦車自走砲装甲車などの車載機関銃や対空用として「12.7mm重機関銃M2」という名称で採用して各部隊が装備しており、年間80挺を新規調達している。M3銃架は96式40mm自動てき弾銃と互換性がある。対空兵器として地上設置する場合はM63対空銃架を使用する。現在では前述のQCB仕様のものが調達されている。調達価格は約530万円である[要出典]

海上自衛隊では創設間もない時期の護衛艦哨戒艇などに数挺搭載していたが、威力不足と短射程を理由に一時期搭載する艦艇はなくなった。しかし、北朝鮮不審船事件などを受けて、皮肉なことに現役艦載武器の威力過剰[注釈 11] が問題とされて、小目標に対する適切な火力を有する本銃が再び搭載されるようになった。なお、M2は艦艇固有の装備ではなく搭載品として扱われている。航空自衛隊でも本機関銃を四連装としたM55機関銃トレーラーを基地防空用として採用した[注釈 12]

海上保安庁でも創設当時から運用しており、「13ミリ機銃」と呼称され、多くの巡視艇に装備された。現在でも13mm単銃身機関銃として巡視船巡視艇に搭載されている。

2013年(平成25年)12月18日、メーカーの住友重機械工業において、5.56mm機関銃(ミニミ軽機関銃)・74式車載7.62mm機関銃・12.7mm重機関銃(ブローニングM2重機関銃)の3種で少なくとも合計5,000丁にものぼる試験データ改竄が発覚。同社は5ヶ月の指名停止処分となった。

2021年4月、住友重機械工業が機関銃の生産から撤退することが公表された[25][26][27]。機関銃のメンテナンスや整備用の部品の生産は続ける方針。


  1. ^ 2011年には近代化改修のためにアラバマ州バイナム(英語版)にあるアメリカ陸軍アニストン補給廠(Anniston Army Depot (ANAD)(英語版)内にあるアニストン防衛軍需センター(Anniston Defense Munitions Center (ADMC)(英語版)に集められたM2の中から、1932年に製造された最初期ロット(シリアルナンバー No.324)のものが発見されている[1]。このM2は過去に一度もオーバーホールを受けた記録が存在しなかったにもかかわらず、検査の結果、各部の公差は軍の基準で「最良」と判定される状態であったという[1]
  2. ^ 例えば、陸軍の騎兵部隊は騎馬によって運搬することが容易で、発射速度が低く反動の少ない軽量型なものを求めたが、海軍は艦艇や沿岸要塞に設置する固定式対空砲とするため、重量があっても高発射速度で持続射撃能力が高いものを求めた。陸海軍ともに航空隊は空冷型で左右両用給弾が可能なこと(でなければ翼に搭載できない)と同調装置に対応していることを前提としてかつ軽量なものを求め、陸軍機甲部隊は車両内に搭載する必要上、空冷型で複合砲架と単装銃架の双方に簡易に搭載できるものを求めた。このように、装備を希望する部隊・兵科によって要求するものが異なっており、しかもそれらの要素は相反していた。
  3. ^ なおM2に先立ってM1921A1の改良型として Cal.50 T1を経て開発された Cal.50 T2 が「Cal.50 M1」として制式採用されているが、量産発注は続いて開発された改修型の Cal.50 T2E1 に与えられたため、.50口径機関銃としての"M1"はアメリカ軍の制式装備としては欠番になっている。
  4. ^ 二脚とピストルグリップを装備して射手1名で運用できる構成とした発展型は試作された例があるが、制式化はされていない[8]
  5. ^ 第二次世界大戦後では、ジェットエンジンの発達によって軍用航空機の高速化が進んだ結果、無誘導の銃弾や砲弾を命中させること自体が困難となり、「一発当たりの火力の大きさと、速射性のバランスがとれた対空火器」として機関砲が着目され、小口径の機関銃は弾薬の威力不足、大口径の高射砲は速射性の悪さからいずれも対空兵器としては力不足と見なされた。
  6. ^ なおこのB-52による撃墜記録は2022年現在に至るも「爆撃機が防御機銃で戦闘機を撃墜した記録」としては最新のものである。
  7. ^ 例として[17][18][19]
  8. ^ 例として[14][13][20][21][22][23]
  9. ^ 例として[17][19]
  10. ^ 例として[14][20][21][22][23][24]
  11. ^ 艦砲ミサイルでは小型船は一撃で沈んでしまう。また、威嚇射撃にしても対費用効果が高すぎる欠点があった。
  12. ^ 後継機種であるVADSの導入にともなって現在では実戦運用を外れており、予備装備として保管されるのみである。
  13. ^ 内部に冷却フィンが設けられた円筒形の部品で、ルイス軽機関銃の空冷銃身型と同様の構造と機構を持つ。
  14. ^ "AN/M*"の制式番号は口径ごとに与えられているため、単に"AN/M2"とのみ表記/呼称した場合、それが指し示すものは複数存在するので注意が必要である。正式には口径を示す数字を付けて表記され、アメリカ軍において"AN/M2"の制式番号の付いた航空機用機関銃には「.30 AN/M2」「.50 AN/M2」「20mm AN/M2」の3種類が存在する。
  15. ^ なお、アメリカ軍においてAN/M3も複数存在しており、".50 AN/M3"の他"20mm AN/M3"が存在する。
  16. ^ AN/M3 20mm機関砲が1947年のアメリカ空軍発足に伴って制式番号が変更されたもの
  17. ^ 銃本体 (64.5 ibs) + リコイルアダプター (4.5 lbs)[37]
  18. ^ "U.S. AIR FORCE>Browning M3 Machine Gun"[38]では“65 lbs(29.48 kg)”と表記。
  19. ^ 発射する弾種によって2,730-3,450 fps (832-1,052 m/s) の間で変動。






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