アスパラガス 薬用

アスパラガス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/04 08:07 UTC 版)

薬用

薬効としては根や茎に利尿作用がある[25]。学名種形容語の"officinalis"は「薬用の」という意味で、古くから利尿作用や健胃作用が知られていた[32]。フランスの薬草療法家モーリス・メッセゲは、「この植物の主要な効能は利尿作用である」と述べ、尿道炎を起こしている人を除く腎臓機能の低下、膀胱・肝臓・心臓の病気、痛風にかかっている人に対して、特におすすめする旨を自身の著書に記している[31]。このときの用い方は、1リットルの湯に、根茎を半握りからひと握り分ほど入れて、しばらくの間、煮出してから1日にティーカップ2杯飲むとしている[31]ヨーロッパでは、アスパラギンやマンナン、コリンアルギニンが含まれるとされ、肝臓心臓の疾患に薬用されている[31]

中国では、塊根にアスパラギンやステロイドサポニンクマリンカロテン精油などを含んでいるとされ、サポニンは一般に去痰作用、溶血作用が知られており、去痰薬や強心薬などに使われている[31]。 2 - 3月ごろに塊根を掘り上げて水洗いしてそのまま日干しにするか、熱湯に通してから日干ししたものを、石刁柏(せきちょうはく)と呼んで薬用にしている[31]がある風邪のときや、小児の回虫などの寄生虫による栄養不足に、石刁柏を1日量3 - 9グラムほど煎じて服用する[31]

日本では、アスパラガスを薬用にしていない[31]

雑学

カーボベルデ北部、バルラヴェント諸島東部を構成しているサル島には、アスパラガスを意味する名称を持つ都市「エスパルゴス」が存在する。

アスパラガスを食べた後の尿に腐ったタマゴのような強い臭いを感じる人もいるが、これはアスパラガスに含まれる代謝物質、アスパラガス酸 (asparagusic acid)によるもので害はない。アスパラガスが消化・代謝されるとメタンチオールとS-メチルチオエステルが発生する。これを臭いと感じるか感じないかは個人差がある[33]。尿に強い臭いを感じない人の割合は、男性で58%、女性で61.5%を占めた。この嗅覚の差異は遺伝子に基づく嗅覚受容体の差異によるものとされている[34]

類似種

日本中国朝鮮には自生種のキジカクシ Asparagus schoberioidesクサスギカズラ A. cochinchinensis などが分布する。キジカクシの茎は食用になり、クサスギカズラの根茎(天門冬)は薬用になる。

クサスギカズラ属の中にはオオミドリボウキ A. plumosusクサナギカズラ A. asparagoidesA. myriocladusなど観葉植物にされるものがいくつかある。枝を観賞用の切り花とし、カーネーションに添えるなどして用いられる[1]

なお、ヨーロッパで広く食用となっている「ワイルド・アスパラガス」("Wild asparagus")はユリ科オオアマナ属のオルニトガルム・ピレナイクムの花芽である。日本では「アスパラソバージュ」の名で知られる[35]


注釈

  1. ^ ἀσφάρᾰγος (aspháragos) の異形
  2. ^ 「石刀柏」と書かれた用例もある[1]。「石刀柏(あすぱらがす)の喰方も知つてるが」(上田敏、『うづまき』)[1]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l 新村 2008, p. 52.
  2. ^ a b c 邑田・米倉 2010, p. 46.
  3. ^ a b c d e f g 石尾 1995, p. 85.
  4. ^ a b 三省堂編修所 1995, p. 22.
  5. ^ 邑田・米倉 2010, p. 21.
  6. ^ a b Webster 1958, p. 110.
  7. ^ a b c d e f 田中孝治 1995, p. 168.
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 講談社編 2013, p. 45.
  9. ^ a b 講談社編 2013, p. 42.
  10. ^ a b c d e f g h i 主婦の友社編 2011, p. 168.
  11. ^ a b c d e f g h i j 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 12.
  12. ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 163.
  13. ^ a b c d e 講談社編 2013, p. 43.
  14. ^ 小泉丈晴、剣持伊佐男、町田安雄「アスパラガス1年生株の生育と促成栽培での収量・品質の雌雄間差(栽培管理・作型)」『園芸学研究』第2巻第4号、園芸学会、2003年12月15日、275-278頁、NAID 110001803344 
  15. ^ 元木悟、西原英治、北澤裕明、平舘俊太郎、篠原温「沖積土壌におけるアスパラガスの連作障害に対するアレロパシーの関与(栽培管理・作型)」『園芸学研究』第5巻第4号、園芸学会、2006年12月15日、431-436頁、NAID 110005716737 
  16. ^ 元木悟、西原英治、平舘俊太郎、藤井義晴、篠原温「アスパラガスのアレロパシーに関する研究 : (第10報)アスパラガス連作障害における活性炭を利用したアレロパシー回避技術の確立」『園芸学会雑誌. 別冊, 園芸学会大会研究発表』第75巻第2号、2006年9月23日、NAID 10019588261オリジナルの2009年5月4日時点におけるアーカイブ。 
  17. ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 169.
  18. ^ 【食 旬な産地】福島県南会津町/紫アスパラガス 生で甘く/緑、白、桜 食べ比べ『読売新聞』朝刊2018年6月20日(くらし面)
  19. ^ a b c d e f g h 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 13.
  20. ^ グリーンアスパラガスの品種特性”. www.hro.or.jp. 2020年5月19日閲覧。
  21. ^ a b 研究成果情報 北海道農業:グリーンアスパラガス露地栽培の品種特性および多収維持管理法”. www.naro.affrc.go.jp. 2020年5月19日閲覧。
  22. ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 171.
  23. ^ a b c d e f g 金子美登 2012, p. 93.
  24. ^ 平成24年度収穫量ランキング
  25. ^ a b c d 小池すみこ 1998, p. 18.
  26. ^ a b c d e 小池すみこ 1998, p. 19.
  27. ^ カルカ 麻美「春の味覚シュパーゲル(白アスパラガス)All About、2006年04月19日。 2015年6月19日閲覧。
  28. ^ 講談社編 2013, p. 46.
  29. ^ 小池すみこ 1998, p. 20.
  30. ^ a b c d e f g h i 講談社編 2013, p. 47.
  31. ^ a b c d e f g h 田中孝治 1995, p. 169.
  32. ^ マグロンヌ・トゥーサン=サマ 著、玉村豊男 訳『世界食物百科』原書房、1998年。ISBN 4562030534 p.730
  33. ^ 桑満おさむ (2020年5月28日). “おしっこのニオイが気になる方へ、それって「アスパラガス」が原因かも。”. 五本木クリニック. 2023年1月6日閲覧。
  34. ^ S.マースキー、「アスパラガス尿と私」、『日経サイエンス』2017年第5号、95P、日本経済新聞出版社、ISSN 0917-009X
  35. ^ フランスから輸入される高級食材、アスパラソバージュについて教えて下さい。 Archived 2015年5月22日, at the Wayback Machine. 農林水産省、2015年1月23日閲覧。






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