ご当地グルメ ご当地グルメの概要

ご当地グルメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/06 18:04 UTC 版)

近年、各地でご当地グルメを利用した地域振興活動が盛んに行われており[1]雑誌テレビなどで多く取り上げられている。

概要

かつて、日本においては物流の整備と発展により、海から遠い山深い温泉地であってもマグロの刺身が提供されるなど食に感動があったとは言い難かった[2]。しかしながら、『旅行者動向2009年』(日本交通公社)に拠れば、旅行の目的は第1位の「日常生活からの解放」に次ぐ2位が「グルメ旅行」となっているなど、食が主要な観光資源になっている[2]

郷土の歴史と文化が色濃く、旅行者にとってはその地域の個性のとの触れ合いがあり、その地域の歴史の発見が体験でき、地元の市民との交流につながるのが、ご当地グルメである[2]

2006年から開催されるようになった「ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会(通称:愛Bリーグ)」主催によるB-1グランプリは成功を収めた[2]。一例として2010年神奈川県厚木市で開催された第5回B-1グランプリでは46団体が参加し、2日間の会期中の人手は43万5000人、PR効果を含めた経済効果は約36億円に上ったとされる[2]。こうして、ご当地グルメは、「大金をかけずに地域経済を潤す切り札」として最も効果の高い地域おこしの手法と注目され、日本全国に波及して、類似イベントが開催されるようになり、日本は「ご当地グルメによる地域おこし」の時代というべきものとなった[2]

定義

大まかには、以下のように定義づけられる[2]

B級グルメ
誰からも好まれる味であり、値段は安め庶民的な外食メニューであり、普段から気軽に食べられる食事の意味。
ご当地グルメ
B級グルメの要件を満たした上で、観光客にアピールする料理であり、地元の食生活に根ざし、その土地の食文化として認識されている料理。
B級ご当地グルメ
B-1グランプリ主催者が命名し、推奨している「ご当地グルメ」の名称。一般的には「B級グルメ」として認識されている。
郷土料理
ある地域の生活の中で、作り食べられ伝承されてきた、その土地特有の料理。ふるさとの味。

田村秀は著作『B級グルメが地方を救う』(2008年、集英社新書、ISBN 978-4087204629)で、(カレー焼きそばなどは)あえてカタカナ言葉で呼んだほうが似つかわしく身近に感じがすると指摘している[2]

歴史

第二次世界大戦後の日本では、政府は主に工業化に力を入れ、地場産業の育成、企業誘致、新産業の育成といったいわゆる「箱物」に注力した[2]

しかしながら、経済のグローバル化が進んだことで製造業の多くは生産拠点を日本国外に移転するようになり、日本国内で新規展開を図る企業は減った[2]。地方はシャッター通りが目に付くようになり、商業の空洞化が顕著になった[2]。地方活性化を目的として日本各地にテーマパークが建設されるが、これらも次々と閉園に追い込まれ、合わせて不況の長期化が拍車をかけたことで日本の人々は生きていくのに精一杯な状況に追い込まれていった[2]

一方、各地域で農作物の直売所、農村加工といった「食」による地域おこしやブランド戦略が脚光を浴びるようになっており、その地域から出たあまり知られていない素材や、埋もれていた素材をブランド化することによって、それを目当てに人が訪れて、金を落とし、その土地に経済の波及効果による好循環が生まれることで、地域活性化に結びつけようという論理ができた[2]。この論理による地域活性化が、ご当地グルメが拡大をした理由であり、本来の目的である[2]

こういった食のブランドと地域をむすび付け、地域の活性化に役立った食品は以前から数多くあり、赤福餅三重県)、白い恋人北海道)、福さ屋辛子明太子福岡県)、崎陽軒シウマイ神奈川県)、鐘崎の笹かまぼこ(宮城県)などが挙げられる[2]。しかしながら、食品偽装問題などにより「食の信用」は崩れかけることになる[2]

食のブランド化と地域活性化が脚光を浴びるようになったのは、渡辺英彦が会長を務める富士見やきそば学会による富士宮やきそばによる成功である[2]。渡辺は誰もが思い描いていた「地域に埋もれていた食による地域おこし」を具現化させ、成功させた[2]

2006年に八戸せんべい汁研究所のプロデュースで開催されるようになったB-1グランプリもまた、「まちづくりのためのB級ご当地グルメコンテスト」と、まちづくりを主題に位置づけ、参加資格も「まちづくりのため」が重点ポイントとされている[2]


  1. ^ a b 天ぷらにソースをかけますか?, p. [要ページ番号].
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag 牛田泰正「「B級ご当地グルメ」その現状と今後の課題」(PDF)『城西国際大学紀要』第19巻第6号、城西国際大学、2011年、51-66頁、ISSN 091949672024年6月29日閲覧 
  3. ^ a b c 黄天楽、中山玲、冨田裕也、肖錦萍、久保倫子「龍ケ崎コロッケにみる開発型B級グルメによるまちおこしの取り組み」(PDF)『地域研究年報』第44巻、筑波大学人文地理学・地誌学研究会、2022年、73–94頁、ISSN 18800254 
  4. ^ 村上喜郁「B級ご当地グルメ市場の特性に関する一考察 -顧客セグメントと3つの差別化要因を中心に」『大阪観光大学紀要』第11号、大阪観光大学、85-92頁、doi:10.20670/00000064ISSN 1881638X 
  5. ^ a b 松永光雄「B級グルメと地域振興 -B級グルメによるまちおこしにみる地方自治の新たな動き-」『法政論叢』第49巻第2号、日本法政学会、2013年、39–49頁、doi:10.20816/jalps.49.2_39ISSN 24321559 
  6. ^ “B-1:経済効果も“美味” 富士宮やきそばは439億円”. 毎日新聞. (2007年9月17日). オリジナルの2012年7月9日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/hDC2 2010年9月28日閲覧。 


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