トルテカ文明とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > トルテカ文明の意味・解説 

トルテカ文明

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/21 04:36 UTC 版)

トルテカ文明(トルテカぶんめい)は、テオティワカン崩壊後、チチメカ侵入前までの時期に、メキシコ中央高原に盛んに建設された都市「トゥーラ」群がもっていたと考えられる文明[1]

年代で言えば7世紀頃 - 12世紀頃に当たる。テスカトリポカトピルツィン・ケツァルコアトル英語版の神官たちによる争いなどの伝承で知られるトルテカ帝国が、メキシコ中央高原を支配したと長い間考えられてきたが、伝承が伝わっているのみで具体的な証拠がなく、その伝承さえ征服後に作られたものらしいという見解もある。

トルテカとはだれか?文明の担い手について

トルテカ文明の担い手であるトルテカ人については、欧米の「主流派」研究者は、トルテカ・チチメカと呼ばれるメキシコ西部のウト・アステカ語族に属するナワトル語を話す半文明化した人々が主であり、ノノアルカと呼ばれる少数であるがプエブラ州およびメキシコ湾岸に住んでいた彫刻や建築をよくする職人的な人々からなるとされてきた[2]。 そして彼らの文化には冶金術とマサパ系土器が伴うとされてきた[3]

しかし、大井邦明は、この考え方をヒメネス・モレーノスペイン語版が資料操作をおこなったために混乱しているとし、トルテカ人は、もともとテオティワカンにすんでいたケツァルコアトル神をあがめる集団であり、具体的にはオトミ族やマトラツィンカ族であって[4]、コヨトラテルコ式土器を伴い、トゥーラ・シココティトランショチカルコなどの「トゥーラ」(城塞都市)群を中央高原に築いた人々であるとした[5]

その根拠として、伝承に一種の国譲り的な記述が見られたり、ケツァルコアトル神に創造された人々がトルテカ人であるという記述がみられること、チチメカの移動はどう考えても文献記録からでは11世紀以前にはならないこと[6] 、テオティワカン衰退の契機となった破壊行為は都市全域に及ばずあくまでも中枢部分にとどまること、テオティワカンの全盛期にケツァルコアトル神の神殿が築かれ、やがて破壊されたという出来事があり、ショチカルコは、かって機能したケツァルコアトル神殿の思想的延長上にあること[7] 、古典期後期のマヤにもケツァルコアトル神を思わせるレリーフなどが増加すること、トゥーラ・シココティトランが焼き払われ、破壊された後の上から、「全盛期に使われた土器」であるはずのマサパ系土器が出土することなどを挙げている。

また、侵略者のチチメカ人は、攻撃対象となった都市を「葦が密集するように人の多い場所」という意味のトゥーラと呼び、そこの住民を「トルテカ」と呼ぶ一方で、自分たちを「トルテカ」と自称したため、チチメカ人自身が「トルテカ」であるかのように誤解されるようになった[8]、とする。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ ナサニエル・ハリス 『古代マヤ 密林に開花した神秘の文明の軌跡をたどる』BL出版、2014年、59頁。ISBN 978-4-7764-0560-3 
  2. ^ コウ1975,p.162,タウンゼント2004,p.61,p.69
  3. ^ 大井1985,p.191
  4. ^ 大井1985,pp.197-198
  5. ^ 大井1985,p.199
  6. ^ 大井1985,p.193
  7. ^ 大井1985,pp.199-201
  8. ^ 大井1985,pp.196-197

参考文献

  • 大井邦明『ピラミッド神殿発掘記-メキシコ古代文明への誘い-』,朝日新聞社,1985年
  • 同「文明興亡の大地 メキシコ高原」『季刊文化遺産15』所収,pp.24~36,(財)島根県並河萬里写真財団,2003年
  • マイケル・コウ/寺田和夫・小泉潤二(訳)『メキシコ』,学生社,1975年
  • リチャード・タウンゼント/増田義郎(監修),武井摩利(訳)『図説アステカ文明』,創元社,2004年

関連項目

外部リンク


「トルテカ文明」の例文・使い方・用例・文例

  • マヤ・トルテカ文明では,人(じん)身(しん)供(きょう)犠(ぎ)を行っていた。
Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「トルテカ文明」の関連用語

トルテカ文明のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



トルテカ文明のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのトルテカ文明 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS