フジツガイ科
(cymatiidae から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/04 08:05 UTC 版)
| フジツガイ科 | ||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
インドフジツガイ Perry’s triton
|
||||||||||||||||||
| 分類 | ||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||
| 学名 | ||||||||||||||||||
| Cymatiidae Iredale, 1913[3] | ||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||
| tritons family[4] 中名 嵌線螺科 (qiān xiàn luó kē)[5] |
フジツガイ科(Cymatiidae)は新生腹足類のヤツシロガイ上科に属する巻貝の科である。太平洋などの暖海に生息するカコボラやシノマキは貝殻に毛が生え、螺肋のほかに縦肋が張り出す。冷水性のアヤボラFusitriton oregonensisでは縦肋は弱い。肉食性[6]。
分布
暖海性の属はインド洋・西太平洋・大西洋西部の浅海に分布する。冷水性の属は、各大陸の南端・オーストラリア南部・ニュージーランドのほか北太平洋などに分布する。種によって岩礁底・泥砂底・サンゴ礁棚の下など生息場所が異なる[7][8]。
系統発生
フジツガイ科が属するヤツシロガイ上科の Strongら (2019)による系統分岐図のうちフジツガイ科関連の一部を下に示す。各属で例示した種の和名は主にアボットら (1985)と奥谷ら (2004)を参照した。なお生息域は、インド洋-西太平洋をIWP, 西大西洋をWA, オーストラリアを豪州、ニュージーランドをNZのように略記した。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| Strongら(2019)によるヤツシロガイ上科関連の分岐図の一部[22] |
かつて奥谷ら (2004)などでフジツガイ科に含められていたイボボラ類、ホラガイ類は近年別の科として分離された。これらはヤツシロガイ上科としての共通点がある一方で、軟体部の構造や貝殻の形態にフジツガイ科との相違点がある[23]。
種類
主に下表のような属と種が知られている。例示した各属の貝の和名はアボットら (1985, p. 123-130)奥谷ら (2004, p. 112-115)によった。
| 貝殻の外観 | 各属の種の一例・分布の例 |
|---|---|
| 分岐図上部の分岐群[22] | 主にインド-西太平洋の以下6属。 |
|
|
Cabestana Röding, 1798 |
|
|
Turritriton Dall, 1904 図はヒメミツカドボラ Turritriton labiosus[24]。 |
|
|
Reticutriton Habe & Kosuge, 1966 図はダテスズカケボラ Reticutriton pfeifferianus。 |
|
|
Monoplex Perry, 1810[25] |
|
|
Septa Perry, 1810 図はショウジョウラ。インド洋・太平洋などに分布。 |
|
|
Ranularia Schmacher, 1817 図はオオゾウガイ。インド-西太平洋。 |
| 系統分岐未詳 | 以下の3属は系統分岐未確認。 |
|
|
Cymatium Cabestana Röding, 1798 |
|
|
Lotoria Emerson & Old, 1963 |
|
|
Linatella Gray, 1857 |
| 分岐図下部の上の分岐群[22] | 以下の2属 |
|
|
Personella Conrad, 1865 |
|
|
Gyrineum Link, 1807 図はシマアラレボラ。インド-西太平洋 |
| 分岐図下部の下の分岐群[22] | 以下の7属で主に南半球南部に生息。 |
|
|
Distorsomina Beu, 1998 サザレイボボラ1種のみ。西太平洋。 |
|
|
Austrotriton Cosmann, 1903 図はAustrotriton bassiで豪州南部産。 |
| 図なし | Proxicharonia Powell, 1938 ニュージーランド北島産。 |
|
|
Fusitriton Cossmann, 1903 図はアヤボラ[17] Fusitriton oregonensis。 |
|
|
Argobuccinum Herrmannsen, 1846 シマダンゴボラ。各大陸南端産。 |
|
|
Austrosassia Finlay, 1931 図はパーキンソンボラ。 |
|
|
Sassia Bellardi, 1873 図はニセイボボラ。西太平洋。 |
ホラガイ類 Charoniaとイボボラ類Distorsioはフジツガイ科から独立した科へ移された。
形態
- 軟体
軟体部外面にヒョウのような斑点模様がある。ヤツシロガイ上科の特徴として、肉食性のため吻・鼻(吻鞘)・足の前端が発達していて顎板をもつ。歯舌は紐舌型[31]で中歯は中央が尖った梯形、側歯は中歯と似て広く鋸歯がある。縁歯は鈎針状に尖った2歯[32][17]。眼は触角のつけ根にある。腎臓は左右に一対あり、多数の襞が連なった葉状の腎組織をもつ。嗅検器は繊毛帯をもつ両櫛状[33]。鰓は外套腔とほぼ同じ長さで、鰓葉は単葉で尖らない。本科の特徴として外套腔の縁が厚くて広い。メスの輸卵管が閉じている点でオニノツノガイ上科よりも新しい構造をもつ一方で、オスの輸精管は閉じずに溝状であり、新腹足類よりは古い形態である[23]。
- 貝殻
貝殻外面に毛が生えた種が多い(たとえばカコボラ・シノマキ)。暖海性の種は螺肋と縦肋があってゴツゴツとした外観。外唇が肥厚して180º毎あるいは240º毎の周期的な縦張肋が出て、外唇の内面に襞や結節が形成される種が多い。冷水性の種では螺肋は明らかだが縦肋が弱い。水管溝が明瞭で、種によっては長く伸びる点はアッキガイ科Muricidaeやイトマキボラ科と似ている。殻口上部に排泄溝を持たない点でオキニシ科と区別できる。蓋は歪んだ楕円形で下端または側方に核がある[17]。
生態
肉食で、獲物に毒液を注入して麻痺させたのち、殻の中に吻を挿入して食べる。メスは小さくて丸い卵胞を岩礁上に産みつける。幼生は種によって1~3カ月の長期間浮遊生活するので、カコボラやシゲトウボラLinatella caudataのように太平洋と大西洋に分布する種もある[4][17]。
化石
最古の化石は海洋低酸素事変があった白亜紀アルビアンの英国のGault層に始まり、フランスコタンタン半島の始新世の地層からも多くの化石が見つかっている[2]。
脚注
出典
- ^ “Cymatiidae”. mindat.org. 2026年2月13日閲覧。
- ^ a b Craigら 2020.
- ^ “Cymatiidae”. World Register of Marine Species. 2026年2月13日閲覧。
- ^ a b Porter & Houser 1994.
- ^ 王海艶ら 2016.
- ^ 奥谷ら 2004, p. 112-115.
- ^ アボットら 1985.
- ^ “Cymatiidae”. Global Biodiversity Information Facility. 2026年2月13日閲覧。
- ^ 佐々木 2010, p. 79.
- ^ a b c アボットら 1985, p. 125.
- ^ 奥谷ら 2004, p. 113.
- ^ a b アボットら 1985, p. 126.
- ^ a b c 奥谷ら 2004, p. 114.
- ^ a b アボットら 1985, p. 127.
- ^ 石壽 & 雪斎 1843, p. 69.
- ^ a b 石壽 & 雪斎 1843, p. 20.
- ^ a b c d e f g 奥谷ら 2004, p. 112.
- ^ a b アボットら 1985, p. 128.
- ^ アボットら 1985, p. 130.
- ^ アボットら 1985, p. 129.
- ^ 奥谷ら 2004, p. 115.
- ^ a b c d Strongら 2019, p. 26.
- ^ a b Simone 2011.
- ^ Bommerer 2025.
- ^ Beu & Kay 1988.
- ^ アボットら 1985, p. 124.
- ^ “Cymatium”. World Register of Marine Species. 2026年2月12日閲覧。
- ^ アボットら 1985, p. 123.
- ^ 貝の疑問50 2023.
- ^ “Argobuccinum”. World Register of Marine Species. 2026年2月12日閲覧。
- ^ 佐々木 2010, pp. 216–217.
- ^ Beu & Kay 1988, p. 195.
- ^ 前田 1983, p. 266.
参考文献
- 武蔵石壽・服部雪斎『目八譜』 六巻、1843年。NDLJP:1287301/2。
- 前田豊秀「前鰓類の嗅検器の型と食性との関連について」『貝類学雑誌Venus』第41巻第4号、日本貝類学会、1983年、264-273頁。
- R.T.アボット、S.P.ダンス『世界海産貝類大図鑑』波部忠重、奥谷喬司 監修・訳、平凡社、1985年3月。ISBN 4582518117。 NCID BN00814197。NDLJP:12602136。
- A. G. Beu; E. Alison Kay (1988). “Taxonomy of gastropods of the families Ranellidae ( = Cymatiidae) and Bursidae. Part IV. The Cymatium pileare complex”. Journal of the Royal Society of New Zealand (Taylor & Francis) 18 (2): 185-223. doi:10.1080/03036758.1978.10429393.
- 奥谷喬司『世界文化生物大図鑑貝類』(改訂新版)世界文化社、2004年。 ISBN 9784418049042。全国書誌番号: 20617488。
- 佐々木猛智『貝類学』東京大学出版会、2010年。 ISBN 9784130601900。全国書誌番号: 21846371。
- Luiz Richard Simone (2011). “Phylogeny of the Caenogastropoda (Mollusca), Based on Comparative Morphology”. Arquivos de Zoologia (Museu de Zoologia da Universidade de São Paulo) 42 (4): 161-323.
- 王海艶、張涛、馬培振、蔡蕾、張振『中国北部湾潮間帯現生貝類図鑑』化学出版社、2016年。 ISBN 9787030485571。
- Brian Craig; Steve Tracey; Olivier Gain; Laurent Belliard; Jacques Le Renard (2020). Cymatiidae and Charoniidae (Gastropoda, Tonnoidea) from the Middle to Late Eocene of the Cotentin, NW France: a systematic revision. LRG-Éditions. pp. 1-94. ISBN 978-2-9538000-6-7
- 日本貝類学会、狩野泰則『貝の疑問50』成山堂書店、2023年。 ISBN 978-4-425-98421-3。 NCID BD01630575。全国書誌番号: 23860089。
- Michael Bommerer (2025). First Record of the Ranellid Gastropod Turritriton labiosus (Wood, 1828) (Gastropoda: Cymatiidae) from Tenerife, Canary Islands (NE Atlantic). bioRxiv. pp. 1-11. doi:10.1101/2025.07.08.663791.
外部リンク
- フジツガイ科のページへのリンク















