cDNAの合成法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/28 09:14 UTC 版)
cDNA の合成には、(1) 全RNA(リボソームRNA、mRNAを含む)、または (2) polyA-RNA(mRNA)を鋳型とする方法がある。 また、逆転写酵素の反応開始には、RNA上に反応の開始となるプライマーをアニールさせ、3'から5’方向にcDNAを合成する必要がある。プライマーには、 polyA構造を狙ったオリゴdTプライマーにより mRNA の 3'側から選択的に cDNA を作る。 既知の cDNA配列に特異的な遺伝子特異的なプライマーを用いる。 ランダムプライマー(通常、6塩基から8塩基程度の長さのものが使われる)を用いて、mRNA のすべての領域から cDNA合成を開始させる。 といった方法がある。 cDNAの合成に用いられる逆転写酵素の種類としては、AMV(トリmyeloblastosisウイルス)、あるいは MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)由来の酵素が用いられることが多い。従来は、AMV由来の酵素が熱安定性が高かったため、mRNA の高次構造の存在を回避する手段として用いられていたが、近年、MoMuLV由来酵素の改良が進み、熱安定性の高い変異型酵素が市販されるようになったので、多くの研究者によって利用されている。なお、ある種の熱耐性型 DNAポリメラーゼ(PCR に用いられる)には、RNA を鋳型としてDNAを合成する逆転写酵素活性を有するものがあり、それを利用する方法もある。 逆転写酵素反応は、mRNA が高次構造を取った場合に伸長しない。また、5'側から cDNA の相補鎖(mRNA と同じ方向をした DNA鎖)を作る際に、5'側にできるヘアピン構造を利用するため、本当の 5'末端が失われる。前者の解決法には、mRNA の熱変性や、上記に記載した高温度での逆転写反応が利用される。後者の解決法には、ピロリン酸ホスファターゼを利用した方法などがあり、理化学研究所の完全長cDNA塩基配列決定プロジェクトで利用されている cDNAライブラリーは、このような方法で作製されたものである。
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