Z-DNAの形成経路
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/10 07:53 UTC 版)
1979年のZ-DNAの発見と結晶化以降、科学者たちはB-DNAからZ-DNAが形成される経路と機構について頭を悩ませてきた。B-DNAからZ-DNA構造へ変換過程の原子レベルでのコンフォメーション変化は不明であったが、2010年にLeeらによる計算機シミュレーションによって、以前想定されていたような全領域が協奏的にZ-DNAへ変換される経路よりも、Z-DNA構造が2塩基ごとに段階的に伝播していく経路のほうがB型からZ型への転換のエネルギー障壁が低いことが明らかにされた。2018年、この転換経路は1分子FRET(英語版)(smFRET)解析によって実験的にも証明された。実験的検証では、B-DNAからZ-DNAの転換を誘導するため、Z-DNAに対して高い親和性で結合するヒトタンパク質ADAR1のZαドメイン(hZαADAR1)がさまざまな濃度で用いられた。smFRETアッセイでは、hZαADAR1の結合によってB*遷移状態と呼ばれる中間的状態がB-DNA構造上に蓄積し、安定化されることが明らかにされた。この段階を経ることでジャンクションの高エネルギー状態を避けることが可能となり、B-DNAは大きな破壊的なエネルギー変化なしにZ-DNA構造へとコンフォメーション変化を行えるようになっている。この結果は、Leeらの計算機による結果と一致しており、B-DNAからZ-DNAへの転換は段階的に進行する機構であることと、それによってコンフォメーション変化のエネルギー障壁が低くなることが実証された。以前考えられていたのとは異なり、結合タンパク質は実際にはZ-DNA構造が形成された後の安定化は行っておらず、B*型コンフォメーションからZ-DNAへの形成の促進を行っている。
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