スピントランジスタ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/05 18:49 UTC 版)
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スピントランジスタ (スピンFET)はトランジスタの一形式。
概要
スピントランジスタは強磁性体の電極の間にゲート電極があり、ゲート電圧を印加して磁気抵抗効果によって半導体2次元電子ガスのスピンの向きを制御する[1]。SFETではスピンと電子の軌道の相互作用によるスピンの回転制御、スピンの反転制御を利用する[1]。
構造
三つの電極を備える電界効果トランジスタと類似の構造だが、作動原理は異なり、ソースとドレイン電極が強磁性体で中央のゲート電極でスピンを制御する[2][3]。
磁性体電極からスピン偏極した電子を半導体二次元電子ガスへと注入してこのスピンの向きをスピン軌道相互作用による有効な磁界によって回転させる。スピン軌道相互作用の強さを制御するためにゲート電極の電界を制御すると注入したスピンの向きをドレイン電極のスピンの向きと平行にしたり,反平行にしたりすることによりドレイン電流 の大きさを変える。キャリアスピンが反転すると磁性体ドレイン電極には反転した電子スピンを受け入れる状態密度がないのでドレイン電流 は流れないが、ゲート電圧によってスピンの向きを360度回転させると磁性体ドレイン電極と同じ方向になってドレイン電極に電流は流れこむのでスピンの回転角度をゲート電極で制御する事によって電流のオン・オフを制御する[4]。
2014年9月には京都大学を中心とするグループによって室温での動作が確認され、実用化に向けて前進した[5]。
脚注
- ^ a b スピントランジスタ(スピンFET)
- ^ 新田淳作「電界効果スピントランジスタへ向けてのアプローチ」『応用物理』第70巻、2009年2月5日、 296-299頁、 doi:10.11470/oubutsu1932.70.296。
- ^ 「スピン流を用いた新機能デバイス 実現に向けた技術開発 (PDF) 」。
- ^ 新田淳作「半導体スピントロニクス (PDF) 」、NTT物性科学基礎研究所。
- ^ 「シリコンを用いたスピントランジスタの室温動作を世界に先駆けて実現 -半導体スピントロニクスにおける重要なマイルストーンを実現- (PDF) 」2014年9月4日。
参考文献
- 太田正純, et al. "CPP 構造スピントランジスタ素子の試作." 電子情報通信学会技術研究報告. MR, 磁気記録 102.500 (2002): 7-12.
- 菅原聡. "スピントランジスタ." 電子情報通信学会誌 88.7 (2005): 541-550.
- 玉井翔人, 渡辺重佳. "スピントランジスタを用いた積層型 NAND MRAM の設計法の検討 (メモリ技術)." 電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 109.2 (2009): 59-64.
- 菅原聡. "スピントランジスタによる新しいエレクトロニクスの展開." スピントランジスタによる新しいエレクトロニクスの展開 (2009).
- 仕幸英治. "強磁性体から有機分子へのスピン注入による有機スピントランジスタに関する研究." 科学研究費助成事業研究成果報告書 平成20年度 (2009), hdl:10119/8468
関連項目
外部リンク
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