Qスイッチの原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/17 10:16 UTC 版)
Qスイッチは減衰率を変動させられるある種の減衰器をレーザーの光共振器の内部に挿入することによって実現される。減衰器が稼働しているときには、レーザー媒質から放出される光は減衰器に吸収され帰ってくることはなく、レーザー発振が始まることはない。この光共振器に挿入された減衰要素は、光共振器の性能であるQ値と関連している。つまり、共振器内部の損失が小さいとQ値が高くなり、逆に、共振器内部の損失が大きいとQ値が低くなる。そのため、この用途に使われる減衰器の事は、光共振器のQ値を変化させるためのスイッチと言う意味合いで、Qスイッチと呼ばれる。 当初、レーザー媒質はQスイッチの減衰率が高い、光共振器のQ値が低く保たれている、共振器内部を光が往復しない状態で励起される。こうすることで、レーザー媒質が反転分布した状態を作ることが出来る。しかし、この状態では共振器内部を光が往復することはないためレーザー発振は起こらない。 誘導放出のレートはレーザー媒質に入射する光の量に比例するため、光が往復しない状態ではほとんど誘導放出が起こらずに、レーザー媒質の励起に使われたエネルギーは、そのままレーザー媒質に蓄積されることになる。自然放出やその他の過程によるロスが存在するため、一定時間経過後にレーザー媒質に蓄積されたエネルギーはある最大値に到達する。この状態のレーザー媒質のことを、飽和しているという。 理想的にはこの状態で、Qスイッチの減衰率を速やかに変化させる、すなわち、Q値を低い状態から高い状態に変化させて、共振器内部を光が往復出来るようにすると、直ちに、誘導放出による光増幅過程が開始する。レーザー媒質にすでに大量のエネルギーが蓄積されているため、光共振器の中の光強度は非常に急速に成長し、同時にレーザー媒質中のエネルギーは急速に消費され欠乏状態になる。その二つのプロセスが同時に急速に起こる結果として、ジャイアントパルスとして知られる、非常に高いピークパワーを持つ、短い幅のパルス光がレーザー装置から出力される。例えるなら、ダムに貯まった水を一気に放出するようなものである。
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