M期からG1期への移行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/27 08:30 UTC 版)
「後期促進複合体」の記事における「M期からG1期への移行」の解説
有糸分裂の完了に際して細胞が(胚細胞を除いて)G1期として知られる成長期へ移行することは重要であり、この期間に細胞は成長して次の細胞周期に必要な因子を生産する。新たな有糸分裂の進行はCdkの活性を阻害することで防がれている。さまざまな過程がこの阻害を担っているが、重要なものの1つにCdh1によるAPC/Cの活性化がある。この継続的な活性化は、新たな有糸分裂の引き金となるサイクリンの蓄積を防ぎ、代わりに有糸分裂の終結を導く。 細胞周期の初期段階ではCdh1はM-Cdkによってリン酸化され、APC/Cへの結合が防がれている。その後、APC/CはCdc20に結合し、中期から後期への移行を導く。有糸分裂の終盤にM-Cdkが分解され始めると、Cdc20は解離し始めCdh1がAPC/Cに結合するようになり、M期からG1期への移行に際し活性化状態を維持する。Cdc20とCdh1の結合に関して特筆べき差異は、Cdc20のAPC/Cへの結合はM-CdkによるAPC/Cのリン酸化に依存するのに対し、Cdh1は依存しないという点である。M-Cdkの不活性化に伴うAPC/CCdc20の脱リン酸化によって、APC/CCdc20は中期の間に不活性状態となり、Cdh1がAPC/Cへ結合できるようになってCdc20から置き換わる。Cdc20はAPC/CCdh1の標的でもあり、 APC/CCdc20は確実に不活性化される。その後、APC/CCdh1はG1期に機能し続け、S期サイクリンとM期サイクリンに分解のタグをつける。しかし、G1/S期サイクリンはAPC/CCdh1の基質ではないため、この期間を通じて蓄積しCdh1をリン酸化する。G1期の末には十分量のG1/S期サイクリンが蓄積し、Cdh1をリン酸化してAPC/Cを次の中期まで不活性化する。 G1期では、APC/CCdh1がさまざまなタンパク質を分解し適切な細胞周期の進行を担う。ジェミニンはCdt1(英語版)に結合し、Cdt1が複製起点認識複合体(ORC)へ結合するを防ぐタンパク質である。APC/CCdh1はG1期を通じてジェミニンをユビキチン化の標的とし、そのレベルを低く維持する。これによって、Cdt1は複製開始前複合体(pre-RC)の組み立て時に自身の機能を果たすことができるようになる。G1/S期サイクリンによってCdh1がリン酸化されてAPC/CCdh1が不活性状態となると、ジェミニンの活性は再び上昇する。さらに、Dbf4(英語版)はCdc7(英語版)の活性を促進して複製起点の活性化を促進するが、APC/CCdh1はDbf4を分解標的としていると考えられている。このことは、Cdc7が新たな細胞周期の開始時にどのように活性化されるかについての答えとなるかもしれない。その活性はG1/S期サイクリンによるAPC/CCdh1の不活性化に応答しているようである。
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