HII領域の起源と寿命
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 10:36 UTC 版)
「HII領域」の記事における「HII領域の起源と寿命」の解説
HII領域の前身は巨大分子雲である。巨大分子雲は主に水素分子からなる非常に低温(10-20K)で密度の高い雲である。巨大分子雲は長期間にわたって安定した状態で存在できるが、超新星の衝撃波や分子雲同士の衝突や磁場の相互作用が引き金となって分子雲の一部が収縮を始める。このような収縮が起こると、雲の衝突や分裂の過程で恒星が誕生する。 巨大分子雲の中で星々が生まれると、それらのうち最も質量が大きいものは周囲のガスを電離させるほど高温になる。このようなガスを電離する輻射場ができるとすぐに、エネルギーの高い光子が電離ガスの境界面を作り出す。この境界面は星を取り巻くガスを超音速で吹き払う。新たに電離されたガスによって電離領域の体積は膨張するが、星からの距離が遠くなるにつれて電離境界面の速度は次第に遅くなる。そしてついには電離面の速度は亜音速にまで遅くなり、星雲の膨張による衝撃波に追い越される。こうしてHII領域が誕生する。 HII領域の寿命は数百万年のオーダーである。高温の若い星からの輻射圧はやがてガスのほとんどを吹き払ってしまう。実際、HII領域の星形成過程は非常に効率が低く、星を形作るのに使われるガスはHII領域全体の10%以下であり、残りは星ができる前に吹き飛ばされてしまう。HII領域からガスが失われる要因としては、内部で生まれた大質量星の超新星爆発も寄与している。これらの重い星は生まれてから100~200万年後には爆発してしまう。
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