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デルタ IV ヘビー

(Delta IV Heavy から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 08:04 UTC 版)

デルタ IV ヘビー
ヴァンデンバーグ空軍基地からのデルタ IV ヘビーの打ち上げ
基本データ
運用国 アメリカ合衆国
開発者 ボーイング
運用機関 ユナイテッド・ローンチ・アライアンス
使用期間 2004年 - 2024年
射場

ケープカナベラルSLC-37B

ヴァンデンバーグ AFB SLC-6英語版
打ち上げ数 16回(成功15回)
打ち上げ費用 3億7500万ドル[1]
原型 デルタIV
公式ページ Delta IV
物理的特徴
段数 2段
ブースター 2基
総質量 733,000 kg
全長 72 m
直径 5 m
軌道投入能力
低軌道 28,790 kg
200 km × 28.7°
静止移行軌道 14,220 kg
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デルタ IV ヘビー (デルタ9250H) は、デルタ IVロケットシリーズの最大の構成である。2004年に初めて打ち上げられた[2]2018年ファルコンヘビーが打ち上げられるまでは、その打ち上げ能力は運用中の打上げシステムとしては世界最大であった[3]。最後の機体は2024年に打ち上げられた。

概要

デルタ IV ヘビーの構成は、デルタ IV のモジュラーシステムのメインロケットであるコモン・ブースター・コア (CBC) を、同一形式の1基をメインとして中央に据え、2基を液体ロケットブースターとしてその両脇に配したものとなっている。推進剤[4]は3基とも同量であるため[5]、離床時には3基全てのロケットを全力運転した後、44秒後からは中央のロケットの推力を55%まで下げ、ブースター分離後のために温存する。ブースターは打ち上げ後242秒後に燃焼終了し、続いて中央のロケットの推力を最大にした後、ブースターは分離される。中央のロケットはその86秒後に燃焼終了し、2段目以降を分離する。[6]

初打ち上げは2004年だが、これは試験用ペイロードを搭載したが、予定よりも低い軌道で分離され部分的失敗に終わった[7]。最初の実用ペイロードはDSP-23衛星で2007年に打ち上げに成功した。2013年までに5機の国家偵察局の画像と電子偵察衛星の打ち上げに使用された。[要出典]

2023年6月に最後の機体の製造が完了した。後継としてはULAヴァルカンで6本の個体ロケットブースター構成が予定された[8]。これは2024年4月9日(日本時間4月10日)に打ち上げられ、成功した[9]

諸元

デルタIVヘビーの打ち上げ能力:

デルタIVヘビー仕様の打ち上げ総重量はおよそ733,000 kg (1,616,000 lb) である。

打ち上げ実績

初打ち上げは2004年で、ボイラープレート英語版を積載して打ち上げられたが部分的に失敗した。液体酸素系のキャビテーションが原因で両方のブースターが予定よりも8秒早く停止し、コアエンジンは9秒早く停止した。この結果、速度が不足し第2段でも補いきれなかったため、ペイロードは予定よりも低い軌道で分離された[7]

2014年12月、デルタIVヘビーは無人のオリオン多目的宇宙船の試験打ち上げ (EFT-1) に使用された。当初の打ち上げ予定の12月4日から1日遅れて[13]、12月5日に打ち上げられ、成功した[14]

2018年8月12日には、太陽探査機パーカー・ソーラー・プローブの打ち上げに成功。太陽に肉薄する軌道に投入するために必要な多大なΔv[15]を実現するための抜擢であった。同機はその近日点が極端に太陽に近い軌道により、人類が作ったものの中で史上最も加速された物体(約200km毎秒に達する見込み)となる。

日付 ペイロード[16] 射場 結果[16]
2004年12月21日 DemoSat, Sparkie / 3CS-1 and Ralphie / 3CS-2 ケープカナベラルA 部分的失敗C
2007年11月11日 DSP-23 ケープカナベラルA 成功
2009年1月18日 Orion 6 / Mentor 4 (USA-202 / NROL-26) ケープカナベラルA 成功
2010年11月21日 Orion 7 / Mentor 5 (USA-223 / NROL-32) ケープカナベラルA 成功
2011年1月20日 KH-11 Kennen 15 (USA-224 / NROL-49) ヴァンデンバーグB 成功
2012年6月29日 Orion 8 / Mentor 6 (USA-237 / NROL-15) ケープカナベラルA 成功
2013年8月28日 KH-11 Kennen 16 (USA-245 / NROL-65) ヴァンデンバーグB 成功
2014年12月5日 オリオンカプセル EFT-1 ケープカナベラルA 成功
2016年6月11日 Orion 9 / Mentor 7 (USA-268 / NROL-37) ケープカナベラルA 成功
2018年8月12日 パーカー・ソーラー・プローブ ケープカナベラルA 成功
2019年1月19日 KH-11 17 (USA-290 / NROL-71) ヴァンデンバーグB 成功
2020年12月11日 Orion 10 (USA-311 / NROL-44) ケープカナベラルA 成功
2021年4月26日 KH-11 18 (USA-314 / NROL-82) ヴァンデンバーグB 成功
2022年9月24日 KH-11 Kennen 18 (NROL-91) ケープカナベラルA 成功
2023年6月22日 Orion 11 (NROL-68) ケープカナベラルA 成功
2024年4月9日 Orion 12 (NROL-70) ケープカナベラルA 成功

^Aケープカナベラル空軍基地 SLC-37Bから打ち上げ
^Bヴァンデンバーグ空軍基地 SLC-6から打ち上げ
^C CBCが予定より早く燃焼停止したため計画より低い軌道に投入

競合する打上げ機

出典

  1. ^ Solar Probe Plus, NASA’s ‘Mission to the Fires of Hell,’ Trading Atlas 5 for Bigger Launch Vehicle”. Space Now. 2014年7月26日閲覧。
  2. ^ "Boeing Delta IV Heavy Achieves Major Test Objectives in First Flight" Archived 2012年4月19日, at the Wayback Machine., Boeing, 2004, accessed March 22, 2012
  3. ^ Mission Status Center”. SpaceflightNow. 2014年7月閲覧。 “"ULA デルタ 4-ヘビーは現在、世界最大のロケットで私達の国の国家安全保障のペイロードを東と西海岸の両方から打ち上げる事を実現する。"”
  4. ^ ここでは酸化剤と被酸化剤(燃料)の総称
  5. ^ またクロスフィードのような機構は持たないため
  6. ^ Delta IV Payload Planner's Guide, June 2013”. United Launch Alliance. 2014年7月閲覧。
  7. ^ a b Delta 4-Heavy investigation identifies rocket's problem”. Spaceflight Now (2005年3月16日). 2014年7月閲覧。
  8. ^ ULA’s Delta rocket assembly line falls silent” (英語). Spaceflight Now (2023年6月20日). 2023年8月3日閲覧。
  9. ^ ULA、デルタIVヘビーの最終ミッションに成功! 米国家偵察局の衛星を打ち上げ”. sorae (2024年4月10日). 2024年4月13日閲覧。
  10. ^ a b c Delta IV Launch Services User's Guide”. ユナイテッド・ローンチ・アライアンス. pp. 2–10,5-3 (2013年6月). 2013年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月閲覧。
  11. ^ Delta IV Data Sheet”. Space Launch Report. 2014年7月閲覧。
  12. ^ Ray, Justin (2004年12月7日). “The Heavy: Triple-sized Delta 4 rocket to debut”. Spaceflight Now. 2004年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月13日閲覧。
  13. ^ Bergin, Chris (2012年1月18日). “EFT-1 set to receive Spring, 2014 launch date after contract negotiations”. NASASpaceFlight.com. 2012年7月21日閲覧。
  14. ^ Second Stage Ignites as First Stage Falls Away”. 2014年12月5日閲覧。
  15. ^ 地球軌道からの場合、太陽系脱出に必要なΔvより大きい。
  16. ^ a b Delta-4”. Gunter's Space Page. 2018年3月15日閲覧。

外部リンク




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