3.鱈岬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 23:58 UTC 版)
「A - (移行部 - A')」の二部形式。第1曲「夜」に登場した旋律が再現されることで作品全体の構造的な結びつきが強められている。 区分練習番号SEA特記事項末尾の休止A 2回 伴奏のみで開始される。八分音符=85で始まるがすぐにテンポが落ちる。SEAモチーフ(ト-嬰ト-嬰ハ)が低音部、続いて内声部に登場する。 🄰 16分の3拍子(付点八分音符=63)のリズミカルな音楽となる。アルトフルートが「嬰ト-嬰ハ」の完全四度上行する動機をもつ旋律を奏でるが、この動機は直前のSEAモチーフの最後の2音に由来している。この部分の伴奏にはB♭m7の和音が他の和音と交互に使われている。 🄱 アルトフルートは低音域で半音の組み合わせを変化させる。ここでも伴奏にB♭m7の和音が使われている。 🄲 Piu mosso で付点八分音符=85~96にテンポが上がり、『海へII』では譜割りが16分の9拍子になる。アルトフルートが2連符でリディアン・スケールを上昇し、引き続き「夜」の練習番号🄷の旋律が拍子を変えて再現する。B♭m7の分散和音が静まり前半部が終わる。 2~3秒 移行 🄳 1回 八分音符=63にテンポが落ちる。アルトフルートが「ロ-ハ-ト-嬰ハ」の4音から成る旋律を奏で、伴奏がB♭m7の和音を添える。わずかな間を挟みアルトフルートがSEAモチーフ(ト-嬰ト-嬰ハ)を奏でて次のセクションに移る。 A' 🄴 練習番号🄰の旋律がB♭m7の分散和音を核とする5連符のオスティナートを伴って再現し、発展する。やがてアルトフルートの旋律は「嬰ヘ、嬰ト、嬰イ、嬰ハ、嬰ニ」の五音音階に基づくものに変化し、フレーズの頂点でSEAモチーフの反行型(ヘ-ホ-ロ)が現れる。 🄵 🄶 🄷 練習番号🄱の再現 🄸 練習番号🄲の再現(「夜」の練習番号🄷の変形した再現) 🄹 1回 八分音符=63~72のテンポで、B♭の分散和音に乗って「夜」の練習番号🄸の旋律(SEAモチーフを含む)が再現する。リタルダンドの後に短い休止(’)を挟み、結尾に移る。 🄺 2回 八分音符=40にテンポが落ち、終結まで遅くなり続ける。SEAモチーフ(ト-嬰ト-嬰ハ)が伴奏のベースライン、次いでアルトフルートに登場し、B♭m7の和音で静かに美しく曲を閉じる。なお、バート(2006)は、最後の和音の直前には嬰ハ長調(=変イ長調)の下属和音の変化和音があり、聴き手が変ロ短調ではなく変イ長調の主和音を期待することを示唆している。
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